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時空のトンネル「ワームホール」は、従来の想定より安定しているかもしれない

カラパイア


 従来の理論によれば、時空の近道と期待される「ワームホール」は、とても不安定ですぐに崩壊してしまうとされていた。

 ところが最新の論文よれば、少なくともそうした想定よりは安定している可能性があるようだ。

 ワームホールを記述するには「一般相対性理論」が用いられるが、その基準がわずかに変わるだけで、全体像ががらりと変わってしまうのだそうだ。

一般相対性理論の座標は自由度が高い

 アインシュタインが導き出した、時間・空間に関する「一般相対性理論」は、自動的な計算機のようなものだ。

 粒子の質量やら配列やらを入力してやれば、重力の下である座標から別の座標へとどう移動するのか、勝手に弾き出してくれる。

 この計算機の計算ルールは決まっている。ところが、座標に関してはかなり自由度が高く、数学的に色々な記述をすることができる。これを「計量(メトリック)」という。

 たとえば、あなたはどこかの目的地を目指しているとしよう。そこへの道順を表す方法は1つではない。

 通りの名前や交差点の数を利用してもいいだろう。緯度と経度で記すことだってできるし、何か目印になるような建物だって便利だ。

 最終的に目指す目的地にたどり着くなら何でもいい。

 それと同じように、物理学では同じ状況を記すために、さまざまな計量を使うことができる。その時々に応じて、便利なものを使い分ければいい。

photo by iStock

ワームホールにもいくつかの計量が考えられる

 ブラックホールやワームホールを記述するにも、いくつか計量が考えられる。

 もっとも一般的なのは、「シュワルツシルト計量」だ。最初にブラックホールが発見されたときも、これが利用された。

 だが、シュワルツシルト計量には少々厄介な点がある。光がブラックホールから脱出できなくなる距離(事象の地平面)で誤動作を起こすのだ。

 計量が完全に壊れてしまい、時空における異なる地点を区別できなくなってしまう。

 だが「エディントン・フィンケルシュタイン座標」を使用すれば、事象の地平面に到達した粒子の振る舞いを記述できる。それによれば、粒子はそのまま通過してブラックホールに落ち、二度と現れない。

photo by Pixabay

ワームホールを作る一番シンプルな方法

 ところで、時空のトンネルであるワームホールを作る一番シンプルな方法は、ブラックホールを利用することだ。

 ブラックホールは、一度入ればどんなものでも絶対に外に出られない。その一方、この宇宙には、どんなものでも絶対に中に入れない「ホワイトホール」が存在する可能性がある。

 この両極端な天体の「特異点」(密度が無限になる点)をつなぐ。すると、ブラックホールとホワイトホールの間に時空のトンネルが形成されると考えられるのだ。

 このアイデアは、アルベルト・アインシュタインとネイサン・ローゼンが最初に提唱した。ゆえにワームホールは、「アインシュタイン・ローゼン橋」とも呼ばれる。

photo by Pixabay

新たな計量によると、ワームホールの通過は可能

 今のところワームホールは理論上の存在だが、もし本当にあったら、その中はどうなっているのだろうか?

 一般相対性理論によるならば、強力すぎる重力によって、ワームホールは輪ゴムのように引き伸ばされ、千切れてしまう。そもそもホワイトホール自体が非常に不安定で、存在しない可能性すらある。

 だから、そこを通ろうものなら、ただでは済まない。だが、この分析はシュワルツシルト計量による計算結果だ。

 そこでフランス、リヨン高等師範学校のパスカル・コイラン氏は、エディントン・フィンケルシュタイン計量でワームホールの分析を試み、その結果を『International Journal of Modern Physics D』(21年10月22日付)で発表した。

 それによると、こちらの計量では誤動作などなく、粒子の動きを楽に把握できるという。

 粒子は事象の地平面を通過し、ワームホールに進入すると、そのまま反対側から脱出する。すべて有限の時間内に起きることだ。

photo by Pixabay

ただし安定はしていない

 だからと言って、我々人間がワームホールの中を通過できるということではない。

 一般相対性理論が扱うのは、重力の振る舞いで、自然界にあるほかの力は対象外だ。熱やエネルギーを扱う熱力学によるなら、ワームホールは依然として不安定ということになる。

 また現実にブラックホールとホワイトホールを結べたとしても、そのエネルギー密度のために、何もかもバラバラになってしまう。

 宇宙のトンネルを通って、遠くの銀河までひとっ飛び。ロマンのある夢だが、そう簡単には叶わないようだ。

References:Infall time in the Eddington–Finkelstein metric, with application to Einstein–Rosen bridges | International Journal of Modern Physics D / Wormholes may be stable after all, new theory suggests | Live Science / written by hiroching / edited by parumo

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