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母親が「人間」でいられる国。日本と何が違うのか?

BOOKウォッチ

ヘルシンキ 生活の練習(筑摩書房)<amazonで購入>

 本書『ヘルシンキ 生活の練習』(筑摩書房)は、コロナ禍に2人の子どもと海を渡った社会学者・朴沙羅(ぱく さら)さんによる現地レポート。

 「フィンランドは何だかとても素晴らしいところのように思われている気がする。幸福度世界一、教育世界一、みんなが幸せでヒュッゲな感じ、みたいな」……。ただ、朴さん自身は「北欧推し」というわけではない。

 2020年2月、朴さんは6歳と2歳の子どもとヘルシンキ生活をはじめた。地域の支援員、同僚、救急隊員、保育園の先生……と、さまざまな出会いを通してフィンランドの教育や社会について考えた。

 本書は、そこで生活する1人の母親として、研究者として、奮闘した1年半の記録を綴ったもの。

■担当編集者より

 著者の朴さんは、これまで日本社会で生きてきて、息苦しさをずっと感じてきました。フィンランドに移住することで、北欧社会との比較のなかから、うっすらとその息苦しさの正体のようなものが見えてきます。(中略)これまでの北欧は神話めいて語られることが多かったですが、この本は、現地の人にその実情を冷静に見聞きしたものになっています。お子さんを育ててらっしゃる方、北欧に興味のある方、はたまた日本社会を他国との比較から考えてみたい方にもおすすめの一冊です。

日本でも韓国でもない

 朴さんは日本で生まれ、日本国籍をもつ在日コリアン。父が韓国人、母が日本人なので、正確には「ハーフ在日」と言うそうだ。

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 名前が「韓国風」の朴さんは、日本で日常的に暮らしていて、法律が関与しないかぎり、日本人としては扱われない。中学生のころから、日本でも韓国でもない「外国」に住もうと思うようになったという。

 2018年夏に初めてフィンランドを訪れ、キラキラした太陽の光と湖と森が気に入った。ヘルシンキのとある職場が新人を募集していたので、だめもとで書類を送ったら面接に招かれ、採用通知が来た……という経緯で、ヘルシンキへ引っ越すことになった。

 「私は、フィンランドでごくわずかな時間しか過ごしていないが、さまざまな違いの多くを面白いと感じる(ときどき『なんでやねん!』と感じる)。だから、他の人にもその面白さ(と『なんでやねん』)を紹介して、面白がってもらいたい」
■目次

はじめに
1 未知の旅へ ヘルシンキ到着
2 VIP待遇 非常事態宣言下の生活と保育園
コラム1 ヘルシンキ市の公共交通機関と子ども車両
3 畑の真ん中 保育園での教育・その1
4 技術の問題 保育園での教育・その2
5 母親をする 子育て支援と母性
コラム2 社会とクラブと習い事
6 「いい学校」 小学校の入学手続き
7 チャイコフスキーと博物館 日本とフィンランドの戦争認識
コラム3 マイナンバーと国家への信頼
8 ロシア人 移民・移住とフィンランド
コラム4 小学校入学
おわりに

フィンランドは理想郷か

 すぐカッとなる(特に生理前)、抑圧的、言葉遣いは乱暴……。そんな自分を「いい母親だと思ったことがない」という朴さん。

 夫がいて、いざとなれば実家を頼れる環境では、模範から程遠いもののなんとか子どもたちを育ててきた。しかし、ヘルシンキに実家はなく、夫もほぼいない。

 このままではまずいと思い、地域のネウボラ(妊娠期から就学前の子育て世帯を対象とする支援制度)に「私が子どもに怒りすぎる」ことを相談した。

 すると、支援員は「母親は人間でいられるし、人間であるべきです」と言った。「怒るのはOK」「虐待的な言葉や行動に結びつかなければいい。感情それ自体はいいも悪いもない、ただあるのだから」と。

 「誰かにずっと助けてもらわなければ、私は――もしかしたら、少なからぬ人々が――あっという間に毒親になってしまう。子どもと、その子どもを主に育てる人の他に、どれだけ多くの人が関われるかによって、きっと子育ての内容は変わる」


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