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年齢を重ねてこそ、素敵なふたり。戸田奈津子さん×村瀬実恵子さんの対談集に、豊かな人生のヒントが詰まっている

ダ・ヴィンチNEWS

『枯れてこそ美しく』(戸田奈津子、村瀬実恵子/集英社)

 片や、40年以上にわたって字幕翻訳家として活躍を続け、映画ファンにすっかりおなじみの戸田奈津子さん。片や、元コロンビア大学の名誉教授にして、海外における日本美術史研究のパイオニアとして知られる村瀬実恵子さん――本書『枯れてこそ美しく』(集英社)は、そんなふたりが、お互いの仕事観・人生観を自由気ままなZoomトークで忖度なしに語り合った、対談スタイルの本である。

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 ふたりの初めての出会いは、実は意外と最近。共通の友人の食事会で改めて自己紹介することになったふたりは、あっという間に意気投合。「こんな素敵な方と、もっともっと深い話をしたい!」という戸田さんの熱意は、出版社の編集者の心をも動かし、かくして、今回の企画が実現したのだとか。

 本書の楽しさのポイントは、まず、対談の内容が実に多岐にわたっていること。テーマは章ごとにざっくりと分けられ、「おしゃれについて(第1章)」、「仕事の意味について(第4章)」、「美について(第5章)」、「終活について(第8章)」――などなど、全部で8章から成る構成。戦時中だった子ども時代のたくましいエピソードから、「元祖キャリアウーマン」としての苦労話まで、ふたりのこれまでの足跡も簡潔にまとめられているので、特に前半部分は、まるで2冊の「伝記本」を1冊の中で同時に楽しんでいるような読み応えだ。

 戸田さんよりも一回り年上の村瀬さんは、1924年生まれだから、現在97歳。でも、少女時代のエピソードを振り返る記憶力はとても鮮明で、みずみずしい情景描写がポンポン飛び出すのがすごい。たとえば、小学校の運動会――大の運動嫌いだった村瀬さんは、徒競走で走っている最中に「なんてバカらしいことしているんだろう。来年は医者から病気の証明書をもらわなくっちゃ」と考えているうちに立ち止まってしまい、保護者席から「おい、そこのノッポ、走れ!」と怒鳴られたそうで、この微笑ましいエピソードには戸田さんも思わず大笑い。知的なトークの一方で、「お茶目なユーモア」が随所に散りばめられているのも、この対談本の魅力のひとつだろう。

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 片や、ステイホーム期間中にオペラやミュージカルをテレビ鑑賞することで充実した時間を過ごした戸田さん。片や、趣味は月に一度のブッククラブに参加し、日本の古典文学を読むことだという村瀬さん――「知ること」や「学ぶこと」で美意識や感性を磨き続けているおふたりの毎日は、コロナ禍の混乱の中にあっても、しっかり地に足が付いていて、読んでいるこちらも「見習わなきゃ!」という気になってくる。その他にも、豊かな暮らしを過ごすためのヒントがまだまだいっぱい詰まっている本書。ページをめくるたびに思わずメモを取りたくなる、素敵な「人生の手引書」的な対談集だ。

文=内瀬戸久司

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