とはいえ難解な記述ではなく、「聖書とは何か」を出発点に、素朴な疑問に答えてくれる構成で、無理なく読み進めることができるでしょう。
著者池澤 夏樹 出版日
芥川賞作家の池澤夏樹と、聖書学者で池澤の従兄弟でもある秋吉輝雄の対談集。2009年に刊行されました。池澤は、ギリシャやフランスに長く住み、キリスト教文化を見つめてきた人物。一方の秋吉は、聖書の翻訳や編纂に関わり続けてきた、旧約聖書とヘブライ語研究の第一人者です。
キリスト教を肌で感じた2人の対談で、一般の人にもわかりやすいように解説してくれています。ユダヤ人の特異な歴史や、イスラエルが抱える複雑な問題なども理解できるでしょう。
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また聖書の意外な文学性も興味深いところ。膨大な歴史を積み上げてきた、すべての源泉ともいわれる聖書を知ることで、普段とはまた違ったものの見方ができるかもしれません。
2000年の歴史と格闘したおすすめキリスト教本『イエスという男』
キリストの言行録である「福音書」は、2000年という歴史のなかでさまざまな粉飾や改ざんが加えられ、少しずつ内容が変化していきました。どこで誰が、どういう理由で改ざんしたのかを知るには、相当な労力が必要です。
本書の作者は、文献や資料を徹底的に分析し、多くの人の手によって書き加えられた教えや言説をひとつずつ剥がしていくことで、イエスをあぶり出していきます。
著者田川 建三 出版日
新約聖書の学者で著述家でもある田川建三の作品。書き上げるまでに8年の歳月をかけた力作で、2004年に刊行されました。
田川は、説教壇で「神はいない」と述べて、国際基督教大学から造反教官として追放された経験があります。本書でも、「イエスはキリスト教の先駆者ではない」「イエスは逆説的反逆者」と述べていますが、その背景には、広く深い歴史があることがわかるでしょう。
イエスをひとりの人間として描き、キリスト教を身近に感じられる作品です。
英語を学ぶためにキリスト教を知ろう『キリスト教文化の常識』
日本人が真の国際人となるには、英語が話せるだけでなく、キリスト教の「文化」を理解する必要があります。
たとえばことわざやジョーク、挨拶、新聞の見出し、映画で頻繁に使われる表現など、実は欧米人の日常には、キリスト教の要素が数多く溶け込んでいるのです。
著者石黒 マリーローズ 出版日
2004年に刊行された、石黒マリーローズの作品。石黒はレバノンで生まれ、聖ヨセフ大学、パリ・カトリック大学で学んでいます。1972年に来日し、日本の文化や価値観もよく知る人物です。
宗教や他文化に対して、良くも悪くも鈍感な日本人に対し、英語を理解するためにキリスト教を知る必要があると説いてくれています。具体的な実例を挙げながら解説してくれているので、イメージを膨らませながら読むことができるでしょう。
実は日本人の生活のなかにもキリスト教の要素が潜んでいることもわかり、目からウロコ。英語学習者に必須の一冊です。
聖書の読み方を提示してくれるおすすめ本『どう読むか、聖書』
「聖書は一点の曇りもない正典ではなく、多数の人の手によって作られたものだ」という視点から、聖書の新しい読み方を教えてくれる作品。
キリスト教の信仰者には盲目からの脱却を、そして非信仰者には疑いからの脱却を助けてくれます。
著者青野 太潮 出版日
1994年に刊行された、神学博士である青野太潮の作品。青野は新約聖書を研究する学術団体の会長を長年務め、『パウロ書簡』の翻訳者としても知られています。
たとえばキリスト教でよく用いられる「悔い改めよ」という言葉。これは「反省せよ」という意味ではないんだそう。すでに無条件に赦されていて、そのような世界で生きているからこそ自然と悔い改めるようになるんだとか。このように具体的な例を挙げながら、解説は続きます。
科学が発展した現代で「祈る」のは、ともすれば矛盾している行為かもしれません。それでも人は、祈らずにはいられない時があります。これまで伝えられてきた聖書の内容を再検討しながら、人間の心と科学、信仰と科学の整合性を考えさせてくれる一冊です。
圧倒的読みやすさ!初心者におすすめのキリスト教の基礎を学べる本『旧約聖書を知っていますか』
エッセイの形式で、旧約聖書に関する知識と考察の成果を綴った作品。
旧約聖書と新訳聖書の違いがわからない超初心者でも大丈夫。基礎の基礎を噛み砕いて教えてくれます。
著者阿刀田 高 出版日
ミステリーやショートショートの名手として知られる阿刀田高の作品。1991年に刊行されました。本書のほかにギリシア神話、新約聖書、コーランなどのシリーズがあり、いずれもロングセラーになっています。
勉強したいと思っても、どこから手をつければいいかもわからない旧約聖書。本書では、英雄アブラハムの事蹟から学ぶのがよいとして、第1歩目を提示してくれています。
ユーモアのある文章で、読みやすさは抜群。難しいイメージのある聖書のハードルを下げてくれるでしょう。特に複雑になるレビ記や申命記以降も面白く読めるよう、工夫されています。作者自身がノンクリスチャンなので、非信仰者でもわかりやすい解説が魅力です。