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逃れられない寄生虫ホラー『マンホール』は、実は読み応えのある社会派漫画!

ホンシェルジュ

丁寧に描き込まれたグロテスクでショッキングな描写によって、読者はホラーの醍醐味である恐怖をじっくりと味わえます。ホラー好きにはたまらないでしょう。

マンホール 新装版 上 (ヤングジャンプコミックス)
著者筒井 哲也 出版日2015-04-17

漫画『マンホール』の魅力2:バイオホラーのじわじわくる恐怖

『マンホール』新装版 下巻

「戦慄のバイオホラー」と謳われる『マンホール』の恐怖は大きく分けて2種類あります。ストレートな恐怖と読み進めるうちにじわじわと迫ってくる恐怖です。冒頭に登場する「全裸の男」はまさにストレートな怖さといえます。

その男は真冬だというのに何も身につけず、朦朧とした様子で、手足や喉許・胸許には血糊が。異形な存在が日常の風景に割って入る違和感や、何をしでかのすか分からない恐ろしさが伝わってきます。

その原因は細長い身体をくねらせて移動する寄生虫でした。虫、特に足のない虫に嫌悪感を覚える人は少なくないでしょう。寄生虫は人に寄生すると脳に達し、人の欲望や思考能力を奪ってしまいます。

何も望まなくなり、何も考えられなくなったとき、人は1人の人間として生きていくことができるのでしょうか。人が自分の意志を失い、人ではない存在になっていく怖ろしさがあります。これが2種類目のじわじわ迫ってくる恐怖です。

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病の原因である寄生虫のことや、感染者の血液によって伝染すること、蚊を媒介して病が拡散されることなどが徐々に判明。迫りくる怖ろしさは増していきます。「現実の世界にも同じことが起きてしまったら」、と想像させてしまうリアルさが恐怖を煽ります。

物語の舞台は真冬。そのため「蚊による爆発的な伝染はない」と思われました。しかし意外な原因によってパンデミックの危険が生じます。その可能性を目前にしても一般人にはなす術もありません。

こうして寄生虫による恐怖がじわりじわりと迫ってくるのですが、実は本当の怖ろしさはそれだけではありません。その全てを企んでいた人間にあったのです。

漫画『マンホール』の魅力3:マンホールに潜む謎

『マンホール』の物語のキーは、もちろんマンホールに秘められています。冒頭に出てくる全裸の男は、マンホールから這い出て姿を現しました。ではなぜ、男はマンホールの中にいたのでしょうか。ここからはネタバレを含みますので未読の方はご注意ください。

男は「ある者」にマンホールの中へと連れてこられたのです。この「ある者」が、寄生虫とマンホールを使って男をまともに口もきけないような状態にしていました。そして彼と同じような犠牲者を多く出し、ついには無差別に寄生虫を蔓延させようと企んでいます。

そのためには犠牲者の意識を一時的に奪い、一定期間幽閉しておくための設備が必要でした。日本のいたるところにあり、広い範囲でつながっていて、一定期間、人目につかない場所……。

それがマンホールのなかでした。マンホールは「ある者」にとって、使い捨ての隠れ家として最適だったのです。

誰しも日常でマンホールを見かけることがあるでしょう。マンホールの蓋には地域ごとの意匠もあり、見て楽しいものも増えてきました。しかし、その蓋の下で何者かが息をひそめていたらと想像するとぞっとします。

普段あまり意識することがないところの「見えない怖ろしさ」を、本作はうまく物語に組み込んでいるのです。

漫画『マンホール』の魅力4:構成の妙・二段構えホラー

『マンホール』は寄生虫によるバイオホラーであると同時に、常軌を逸した人間によるサイコホラーでもある二段構えのホラーと言えます。

『マンホール』には「ロボトミー手術」に言及するシーンがあります。ロボトミー手術とはかつて実際に行われていた、大脳の一部を切り取る手術です。精神疾患の治療法のひとつとされていましたが、人権を損ない医学倫理に背くこととして、現在は行われていません。

先の項で述べた「ある者」は、この手術を「必要なこと」だと言います。ロボトミー手術のような物理的なアプローチは必要である、と。しかしそれは精神疾患を持つ人々に対してではなく、社会に対して。

1人では死にきれないからと無関係の人を巻き込む。小学生にも満たない子供に淫らな行いをする。堀川義人のように、ギャンブルにのめり込んで親に暴力を振るう。そういう行いをする者を「ある者」は「クズ」と呼び、社会に蔓延る「クズ」を浄化することを目指しました。

浄化のために「ある者」は寄生虫とマンホールを使い、クズもクズでない人々も危険に陥れていきます。そしてそれは社会にとって有益なこと、正義であると確信しています。

感染者を治療して一度はパンデミックを防いだとしても、自らの正義を疑わない「ある者」は何度でも繰り返すでしょう。そのような者が存在することは、伝染病よりもさらに怖ろしいことです。

バイオホラーに隠された、狂人の恐ろしさを描くサイコホラー。この二段構えのホラー構造が『マンホール』の魅力といえるでしょう。

『マンホール』を含むスプラッター作品を紹介した<グロくてエグい最強のスプラッタホラー漫画おすすめ5選!>の記事もおすすめです。

マンホール 新装版 下 (ヤングジャンプコミックス)
著者筒井 哲也 出版日

足許から忍び寄る恐怖をひしひしと感じることができるホラーの秀作『マンホール』。未読の方はすぐにでもご一読を。「ちゃんと怖い」ホラーです。

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2021年11月23日

提供元:ホンシェルジュ

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