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怪物音響オクタゴンはアイドルシーンに何をもたらしたのか <ギュウ農フェス>が教えてくれたこと|「偶像音楽 斯斯然然」第70回

Pop'n'Roll

新木場USEN STUDIO COASTで、これまで数々の伝説的なステージを展開し、アイドルの可能性の大きさを証明してきた<ギュウ農フェス>。11月14日に開催された<ギュウ農フェス秋のSP2021-さらば怪物音響オクタゴン->は、2022年1月を以って閉館となるSTUDIO COASTで行なわれる最後の<ギュウ農フェス>となった。今回は、STUDIO COASTを象徴するオクタゴンスピーカーを論考の主軸に、冬将軍が<ギュウ農フェス秋のSP2021-さらば怪物音響オクタゴン->で印象的だったグループ、そして<ギュウ農フェス>について綴る。

『偶像音楽 斯斯然然』
これはロックバンドの制作&マネジメントを長年経験してきた人間が、ロック視点でアイドルの音楽を好き勝手に語る、ロック好きによるロック好きのためのアイドル深読みコラム連載である(隔週土曜日更新)。

11月14日、新木場USEN STUDIO COASTにて行なわれた<ギュウ農フェス秋のSP2021-さらば怪物音響オクタゴン->。とちぎ未来大使である、電撃ネットワークのギュウゾウが栃木県を盛り上げるとともに、栃木県内でアイドルフェスを開催することを目標としてスタートし、多くのアイドルとファンに愛されてきた同フェスも、2022年1月を以って閉館となるSTUDIO COASTで開催されるのは今回で最後となった。ゆえになんとも感慨深い気持ちにもなったが、なんだが懐かしい光景に目を奪われ胸が熱くなった。

それは、かつて当たり前だったフェスの光景が広がっていたことだった。

メインステージのほかに野外ステージ、テントステージ、外のブースには窯を持ち込んだ本格的なピザを筆頭に選りすぐりの栃木フードが並び、そこを行き交う多くのアイドルファンとビラを配るアイドルたち——。もちろん来場者のマスク着用、発声禁止などまだまだ制約も多く、油断を許さない状況も続いているわけだが、少しずつあの頃の日常に戻りつつある、そんなことを思った。

そして、何より目玉はもちろん、ギュウ農フェスでは恒例となったオクタゴンスピーカーの使用である。2018年の同フェスにおいて初めて使用されたオクタゴンは、アイドルシーン、音楽シーンに衝撃をもたらした。私自身もこの怪物音響に魅せられた人間で、オクタゴン使用のギュウ農フェスには毎回足を運んでおり、当コラムでも過去に2回ほど触れている。今回、初めてオクタゴンを使用するグループも多くいて、どんなステージを見せてくれるのか楽しみだった。

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怪物音響“オクタゴン”

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この日はオクタゴンを存分に堪能するために1日中メインステージを観ていたが、それを振り返る前に改めてオクタゴンについて触れておきたい。アイドルファンも、ロックファンも、COASTに行ったことがある者なら誰しも必ず目にしている、天井から吊るされた真っ赤なゴツくてすごいヤツ。34機の4ウェイフルレンジアンプ付きスピーカー、通称“Octagon(オクタゴン)”。かつて、“クラブシーンの幕開け”と言われ、1989年から1995まで芝浦にあったディスコ“GOLD”の音響システムを設計したJim Toth氏が手がけたものだ。日本最大級のクラブイベント<ageHa>で使用される音響システムであるため、ロックやポップスのライブで使用されることはない。それをアイドルイベントで使用したのだから、前代未聞の試みであると同時に、いかにアイドルシーンにおける音楽ジャンルが多岐に渡っているかという証明でもあった。

そもそもオクタゴンはクラブミュージック専用の音響システムであり、エレクトロサウンドと超重低音のベース&キックはけたたましく迫力のある爆音を轟かせるが、エレキベースや生ドラムとは相性が悪く、低音の締まりがなくなってぼんやりとしてしまう。エレキギターやシンバルの中高音は暴発して耳が痛いだけのサウンドになりがちだ。要はバンドサウンドには向いていないのである。かといって、エレクトロなダンスミュージックであればOKかといえば、そう簡単なことではない。技術面から見ればハイパワー&大音量であるために通常のPAとは勝手が違うし、そもそもトラック自体の音作りも大きく影響する。そして、演者がこの爆音環境でモニターしながらどうパフォーマンスをするかが大きな肝にもなる。過去のギュウ農フェスにおいても、オクタゴン用にダンスチューン多めのセトリを組んだり、それ用にトラックを直して臨んだグループがいた反面で、この扱いが難しい音響システムに苦戦していたグループがいたことも事実である。

オクタゴンなしでも圧巻だったヤナミューとネオジャポ

聴き手の三半規管を狂わせるほどの轟音響を誇るヤなことそっとミュートは以前の出演時、オクタゴンのウーハーだけを使用したが今回は使用しなかった。つい先日新宿BLAZEで行なわれた主催ライブは轟音響ではなかったので、その路線はもうやめたのかと思っていたが、そんなわけはなかった。ヤナミューにオクタゴンは必要なかったのである。オクタゴンなしでもあり得ないほどに轟音だった。オクタゴン対応に調整された、通常より体感1.3倍くらいの音圧を感じる特別仕様のCOAST音響を余すことなくフル活用し、オクタゴンに負けず劣らず、極上の轟音を響かせていた。

この日はやらなかったが、現在のヤナミューを表していると感じる「遮塔の東」YSM FIVE @代官山UNIT

いきなり「カナデルハ」からの「Lily」という気合い十分の攻勢。ヤナミューは2020年3月、みなが待ち望んだメジャーデビューであったが、ちょうどコロナ禍となり予定していたツアーが全公演中止。昨年は思うような活動ができていなかったのが正直なところだ。しかしながら、今年5月に彩華が加入してからのヤナミューはそうした期間を取り戻していくように、精力的なステージを見せてくれている。

そして、今回がギュウ農フェス初出演となったNEO JAPONISM。ポストハードコアな音楽性と野太いバンドサウンドを考えれば、オクタゴンは使用しないだろうとは思いつつも、「Call my name」「Signal」といったエレクトロチューンでのオクタゴン使用を観てみたかったのも本音である。しかし、ここの音響はCY8ERやDevil ANTHEM.といったオクタゴンを知り尽くしたグループのPAエンジニア、たがわうたや氏が担当しているため、氏の経験もあって無理な使用を避けたのかもしれない。ライブ自体は相変わらずの強さを魅せつけ、COASTの大きいステージと、いつもより3割増しの音圧を活かした、どデカいスケールを描くライブを展開していた。

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