
■「サブスク」の定義とは?
はじめに、サブスクの定義とレンタルやリースとの違いを教えてもらった。
「レンタルは『一時的にモノを借りること』、リースは『一定期間において定額の金銭を支払い、モノを借りること』です。どちらも最終的に返却することが基本です。サブスクリプションは『定額の金銭を支払い、定期的にサービスの提供を受けること』と定義されています。昨今は幅広いジャンルで普及が進んでいます」(吉澤さん)
サブスクの場合、返却の必要がないことが一般的だ。普及が進んでいる理由についてもうかがった。
「『フリーミアム(Freemium)』といわれる形態が台頭したことが大きな理由でしょう。『基本的な商品やサービスは無料、さらに高度な機能を求めるなら課金をする』という仕組みのことです。それにより“お試し”が一般化し、利用のハードルが下がりました。さらに若年層が『モノ消費』だけでなく、体験などの消費を意味する『コト消費』を求める傾向になってきたことも理由のひとつです」(吉澤さん)
サブスクはサービスを提供する側にとってもメリットがあるそう。
「定額サービスの提供で、継続的に収益が入る『ストック型ビジネス』が実行できるようになりました。これにより経営が安定し、投資を受けやすくなるというメリットもあります」(吉澤さん)
消費者とサービス提供者の双方にメリットがあることが、普及を後押ししたといえるのだ。
■サブスクの普及状況
すでに一般化したものに加え、目新しいサブスクを紹介してくれた。
「『Apple Music』などの音楽配信、『Amazonプライム』、『Netflix』などの映像配信、『日本経済新聞』、『楽天マガジン』などの新聞や雑誌(デジタル)の配信は、多くの人々の生活に浸透していますね」(吉澤さん)
ほかにも幅広いジャンルでサービスが普及しているとか。
「車のサブスク『KINTO』や、食事の作り置きサービス『シェアダイン』、キリンビールの月額制ビール『ホームタップ』、子供用おもちゃのサービス『トイサブ!』、家具や家電のサービス『subsclife』など、ジャンルは多岐にわたります」(吉澤さん)
地域限定のサービスも魅力的だ。
「小田急線のターミナル駅を中心とした地域で使用できる『EMotパスポート』は、対象店舗における飲食のサブスクが利用できます。月額500円の『LUCUAフードパスポート』は、『ルクア大阪』にてドリンクなどが無料になるお得な特典を毎日1回利用できるパスポートです。『ハイウェイコーヒーパス』は、NEXCO西日本グループが運営するサービスエリアやパーキングエリアにて、毎日1本から2本のドリンクを無料で飲むことができます」(吉澤さん)
自分の生活圏内で展開されるサービスなら、積極的に利用したくなる。
■私たちの暮らしはどう変わる?
サブスクの普及で、暮らしにはどのような変化が見られるのだろうか。
「どうしても所有したい『モノ』のみ購入する暮らしに変容するでしょう。それにより衣食住の『住』による制限が軽減されます。一部の人はすでに『固定の住居を契約しない』など、アグレッシブな生活様式に変化してきています。『食』についてもサブスク化が進んでいます。鉄道会社や大手デベロッパー企業の参画により、地域が一体となったサービスが増える傾向にあります」(吉澤さん)
利用価値の高さがうかがえるサブスクだが、吉澤さんはデメリットについても補足してくれた。
「利用ニーズがないときも課金が発生する、割高感がある、サービスを受けるメーカーが限定されるなど、サブスクにもデメリットがない訳ではありません。本当にそのサービスをサブスクで受けるべきか見極めてから、利用しましょう」(吉澤さん)
さまざまなライフスタイルにフィットするサービスが展開されているサブスク。上手に活用することで、本当に必要なモノだけを所有する“ミニマムな暮らし”を手に入れられそうだ。身近なところからお試し利用してみるのもよいのでは。
●専門家プロフィール:吉澤 哉(日本サブスクリプションビジネス振興会)
一般社団法人日本サブスクリプションビジネス振興会 執行役。リピーターによる定期的な取引により売り上げが安定するサブスクリプションビジネスの振興を目的とし、2018年本振興会を設立。日本のマーケットに浸透させるべく、サブスクビジネスの成功に必要な情報を提供する。
画像提供:ピクスタ
教えて!goo スタッフ(Oshiete Staff)