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中川大志&石井杏奈主演 若者たちの姿をパワフルに描いた青春映画「砕け散るところを見せてあげる」

キネマ旬報WEB

中川大志&石井杏奈主演 若者たちの姿をパワフルに描いた青春映画「砕け散るところを見せてあげる」

竹宮ゆゆこの同名小説を中川大志&石井杏奈の主演、SABU監督のメガホンで実写映画化した衝撃の愛の物語「砕け散るところを見せてあげる」のBluray&DVDが11月10日にリリースされる(デジタルは配信中)。

タイトルのインパクトに引かれて、なにが砕け散る様を見せてくれるのだろうか? と観始めたのだが、普遍的な青春映画の煌めきに魅せられてしまった。

何者かになろうとする健気な姿を、中川大志がチャーミングに体現

まずは中川大志扮する、主人公の濱田清澄に。高校3年生の清澄はある朝、高校1年生の蔵本玻璃(石井杏奈)がいじめに遭う現場を目撃し、なんとか彼女を助けたいと考え始めた。少しずつ玻璃との心の距離を縮めていった清澄はやがて、彼女の深刻な秘密を知ることになる。無力な少年が、何者か(清澄の場合はヒーロー)になろうとする、健気な姿を、中川がチャーミングに体現する。終盤、警察官から、玻璃との関係性を尋ねられて、簡潔に答えた清澄の顔つきが恰好良い。彼は、正真正銘のヒーローになっていたのだ!
 

そんな清澄の出現で、玻璃も変化する。父親(堤真一)から、自分は無力な存在だと思い込まされ、不遇も淡々と受け容れてきた彼女は、自分の人生を、自分で選んでもいいのだと気づく。ひとりぼっちで、全身に針を立てるようにして、周囲を警戒しながら、生きてきた玻璃が、清澄の手を自分の頰に押しあてて、真実を告げたときの、柔らかな表情は、ハードなシチュエーションにそぐわぬ、母性愛に満ちていた。それは、助けられていたはずの清澄を、玻璃が助ける、もうひとりのヒーロー誕生の瞬間でもあった。

大人になったいまこそ、味わい直したい青春ストーリー

互いに助け合い、強くなっていく二人を取り巻く、高校生たちの姿もみずみずしく、美しい。かつて清澄を、孤独の淵から軽々と救ったクラスメイトの田丸を、井之脇海が好演。いつも飄々とした田丸が、清澄に「俺がいる方を選べよ。おまえがいねえと、俺、つまんねえよ」と真剣に訴えたときの、たしかな友情に、グッときた。

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清澄と玻璃の出会いから始まった、スクールカースト上位に君臨する尾崎姉妹(松井愛莉、清原果耶)との交流も、微笑ましく描かれる。仲良くなったはずの玻璃から、再び拒絶されたときの、尾崎・妹の慟哭も印象的だ。完璧そうに見える彼女もまた、清澄や玻璃と同じく、心に悲しみや怒り、孤独を抱えて、もがいていたのだと、胸が熱くなった。誰もが未熟な人間であり、そして誰もがヒーローになれる、無限の可能性を持っている。躓き、葛藤しながらも、懸命に前へと進もうとする、若者たちのピュアな姿に、己の心に染みついた、ダサい言い訳を打ち砕かれたような気がした。大人になったいまこそ、味わい直したい、青春のシーンが鏤められている。

竹宮ゆゆこの原作小説でも驚かされた、UFOにまつわる大胆な仕掛けや、堤真一の恐るべき怪演、夜の商店街のシーンをはじめ、SABU監督ならではの長回しのダイナミズムなど、映像的な面白さも詰まっている。観返すたびに、いろいろな愉しさを見せてくれる、パワフルな作品だ。

文=石村加奈/制作=キネマ旬報社

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