top_line

【 最新ニュースをアプリでサクサク読むなら! 】

【凛九 伝統工芸を継ぐ女性たち】その四《有松・鳴海絞》大須賀彩さん 「伝統的な技法に現代的な感覚を取り入れて発展させていきたい」

OVO

 東海地方で活動する女性伝統工芸家9人のグループ「凛九」のメンバーを紹介する連載インタビュー。第4回は、日本に伝わる染色技法の一つ「有松・鳴海絞」のくくり職人、大須賀彩さん。「縫う」「くくる」「挟む」の3つの動作を使い、糸で布地を強く巻き圧力を与え、染料が入らないようにして柄を出していく絞り染め。400年の歴史を持ち100種類以上もの技法がある「有松・鳴海絞」に現代的な感覚をプラスしていく大須賀さんに、独創性へのこだわりや、3歳になったばかりの娘さんの子育てをしながらの職人生活などを聞いた。

とことん学ぶために大学院まで

――高校卒業後短大へ、その後大学に編入されたのですね。

大須賀 デザインの勉強ができる高校に通っていました。短大では服飾や調理を中心に学んでいましたが、そのころから染色に興味を持っていました。染色についてもっと学びたいと思い、名古屋学芸大学メディア造形学部に編入しました。そして先生に導かれる形で大学院まで進み、大学に4年間勤務しながら、学会で絞りの論文発表をし、受賞する経験もいただきました。

――大学在学中から、100年以上続く有松絞の「suzusan(スズサン)」4代目村瀬さんに8年間弟子入りし、くくりも染色もできる職人になられました。

大須賀 当時、スズサンが海外からインターンシップの学生を積極的に受け入れていて、「ラオス人とドイツ人の学生が来るから来週から来る?」と言っていただいて。言葉の壁もありましたが、絞り染めを習得したいという目指す方向が一緒だったので、切磋琢磨(せっさたくま)することができました。スズサンにいさせていただいた8年間、半年から1年ぐらいの期間で入れ代わり立ち代わり、海外の方がいらして、交流することができました。日本の技術はやはりすばらしいなと感じ、日本にいられる自分はもっともっと技術を積極的に学びたいと感じました。

――とことん突き詰めていく性格は幼少期から?

大須賀 1つのことに集中する子だったようです。よく母が言っていたのですが、アリを追いかけるのが好きで、ずーっと何時間も見ているような子だったそうです。興味を持った対象がその後どうなるか、ずっと見るのが好きな子だったようです。2歳の頃から遠視のため分厚い眼鏡を掛けて、色を塗る訓練をしていたことも、色彩に関心を持つきっかけになったかもしれません。ビーズをノリでくっつけていろいろな形を作ったり、折り紙に切り目を入れて七夕飾りのような飾りを作ったり。こう切ったらどんな形になるんだろうと考えながら遊ぶのが好きでした。

――染色とは関わりのあるご家庭ではなかったのですか?

大須賀 父は漁師、母は保育士です。1つの仕事をずっと続ける両親を見ながら育ちました。母は、私のやりたいことをいつも応援してくれました。父は、私が職人の道を目指し始めた頃は、「女の子は短大で学ぶので十分ではないか」という感じでした。でも、漁師という仕事も見て学ぶ世界。私が学び続けたいという思いを持って進む中で、いつも陰で応援してくれているようです。父は言葉には出さないのですが、母からそんな様子をよく聞きます。

伝統を守りつつ現代的な感覚で広げていく

――絞り染めの魅力は?

広告の後にも続きます

大須賀 絞り染めは縫う・挟む・くくるという3つの動作でできており、「知多木綿」「三河木綿」「伊勢木綿」と木綿の産地に囲まれている有松にとって大変身近なものでした。有松で生まれた難しい技法がたくさんあり職人の熟年された技、そしてどのように絞っていくかによって柄が変化していきます。有松・鳴海絞の技法は100種類以上あるといわれてきましたが、時代と共にその技法も減ってきているのが現状です。そんな中、自分なりにもっとこうしたらこういう柄ができるんじゃないかと新しい発想を取り入れ模索しています。

 有松・鳴海絞には、基本的に「1人1技法」という背景があります。若手で70歳、半人前で80歳、90歳で一流職人と言われている中、30代の私は1つの技法に限定せずにさまざまな技法に取り組み技術を向上させていきたいと思っています。

――専門とされているのはどのような技法ですか?

大須賀 私が一番得意としているのは「手筋絞り」です。弟子入り時代、一番手掛けさせていただいた技法なのですが、初めに取ったひだを最後まで何メートルもつなげていく潔さや大胆な表現が、自分に一番合っていると感じています。

 他にも「板締め絞り」の種類にある「雪花絞り」を使い、1つの柄に多くても3色くらいまでしか入れられなかったところを4色5色と多色使いし、染料と染料の重なりをそのままデザインしています。柄の見え方は正に万華鏡のようです。

 有松に400年続いている畳み方や絞り方との中で、染料の調合や染色時の温度、使う加工法などを変え、オリジナルのデザインに取り組んでいます。布を締める力が弱いと染料が入り込んで柄が揺らぐことを「泣く」と表現するのですが、これまでタブーとされていたことをそのまま「かっこいい!」と思えるような、今までなかった表現ができるチャンスだと思っています。これからも残すべきものを残し、時代に合わせた新しい形、自分にしかできない表現を提案していきたいと思っています。素材があって技法があって、何をどう組み合わせるか。元々は調理やファッションを学んできた私にとって同じことだと感じています。

念願のアトリエ「彩AyaIrodori 」オープンから1年

――ご自宅兼アトリエを昨年8月にオープンされました。

大須賀 有松は、2016年に旧東海道沿いの町並みが国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されています。空き家もとても多いのですが、手放す方が少なくて、土地を購入するまでも2年ぐらいかけて交渉し、購入できたのが3年半前でした。オープンまでの間、妊娠・出産もあり、コロナ下でいろいろな資材がなかなか届かないなどの問題も発生しましたが、ようやくオープンして1年が経ちました。

――アトリエで毎日染色体験のワークショップを開催されているそうですね。

  • 1
  • 2

TOPICS

ランキング(エンタメ)

ジャンル