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「この子のために」が我が子を蝕む。痛いほど突き刺さる「中学受験のリアル」

BOOKウォッチ

翼の翼(光文社)<amazonで購入>

 「入試問題頻出作家」と呼ばれる朝比奈あすかさん。教室で渦巻く悪意と希望の物語を描いた『君たちは今が世界(すべて)』は、2020年に多数の難関中学の入試で出題され話題に。

 このたび、朝比奈さんの書下ろし作『翼の翼』(光文社)が刊行された。本書は、親の気持ちに寄り添い、過熱する親の心情を余すところなく描いた「凄絶な家族小説」。

 4年にわたり、ある家族を密着取材したドキュメンタリーを思わせる作品だ。進学塾のクラス分け、学校の序列、ママ友同士のマウンティング、家族の修羅場……。とにかくリアリティが半端ではない。

 自身も中学受験の経験者という朝比奈さんが2人のお子さんの中学受験に伴走した経験から、本書は生まれたそうだ。

 「中学受験は親子の挑戦 なぜ我が子のことになると、こんなにも苦しいの?」

「この子のために」という愛情

 本書は「第一章 八歳」「第二章 十歳」「第三章 十二歳」の構成。

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 専業主婦の円佳の息子・翼は小学2年生。興味本位で進学塾の「全国一斉実力テスト」を受けたのをきっかけに、中学受験に挑戦することになる。最大手の進学塾に通い、「男子四天王」と呼ばれる難関校を目指す。

 進学塾にも中学受験にも縁がなかった円佳は、塾、ライバル、保護者、夫、義父母に振り回され、世間の噂、家族、そして自身のプライドに絡めとられていく――。

 円佳には「この子はできる」という自信があった。実際、翼は何の対策もせずに受けたテストでそこそこ良い成績をとり、塾の校舎長から「極めて地頭の良い子」と言われた。

 海外赴任中の夫・真治は、中高一貫校の受験経験者である。それでも「まだ小二だろう」と反対したが、水泳を頑張ること、学校を休まないことを条件に、翼の入塾を許可した。

 「降りられないバスに乗るような、取り返しのつかないことをしてしまうような」。円佳はそんな心細さを感じつつ……。

 「今はただ、翼の未来への選択肢を増やしてあげたいだけなのだ。(中略)『この子のために』というまっさらな愛情には正しさしか見つからず、円佳の頬には笑みが満ちる」

はっきり言って、苦行

 翼は小学3年生以来、最上位のクラスに所属していた。しかし、4年生で大幅にクラス落ちしてしまう。

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