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ツングースカ以上の隕石爆発で滅んだ3600年前のヨルダンの古代都市。ソドムとゴモラのモデルだった可能性

カラパイア

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Photo by:public domain/wikimedia

 かつて「ソドムとゴモラ」という隣り合った町が存在した。二つの町は大いに栄えていたが、いつしか堕落し、悪徳に染まってしまう。これに神は怒り、ついには硫黄と火の雨を降らせて町を消し去った。

 これは旧約聖書の『創世記』に記されている伝説だ。本当なのかどうかはわからない。だがそのモデルになった町はあったのかもしれない。

 それはヨルダンにある「テル・エル・ハマム遺跡」だ。今から3600年前、この町の上空で隕石が爆発し、建物も人々も一瞬にしてこの世から消えた。以降600年間、この地域に人が住み着くことはなかった。

 『Scientific Reports』(21年9月20日付)では、最新の調査によって当時の人たちを襲った悲劇を明らかにしている。

町を瞬時に焼き払った隕石爆発をシミュレーション

運命のその日、テル・エル・ハマムに向かって、氷でおおわれた隕石が時速6万1000キロで飛来した。隕石は大気圏を突き抜けると、地上から4キロの高さで爆発。

このときの爆発は広島に落とされた原爆の1000倍もの威力で、気温は一瞬で2000度以上にまで上昇。木々や衣服が燃え上がり、金属や陶器も溶け、町全体が炎に包まれた。

数秒後、時速1200キロの強烈な衝撃波が町を襲い、建物はすべて破壊された。4階建ての宮殿の上部12メートルが吹き飛ばされ、その瓦礫が谷へ散乱。8000人いた住人や動物たちもまた、体を引き裂かれ、骨を砕かれた。

さらに1分後、そこから22キロ西へ離れた旧約聖書に登場する「エリコ」の町にも爆風は到達する。衝撃によって城壁は崩れ落ち、町は火に飲み込まれた
 これは、アメリカ・トリニティ・サウスウェスト大学やアリゾナ大学など、21名の各分野の研究者でなるグループが想定する当時の状況だ。

 史上最大級の隕石爆発と言われている、ツングースカ大爆発をはるかにしのぐレベルだ。
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広島原爆の1000倍の威力を持つ隕石爆発に見舞われたテル・エル・ハマムの町 / image credit:Allen West and Jennifer Rice , CC BY-ND

何もかもが溶けだす高温の爪痕

 数年前、テル・エル・ハマム遺跡では、木炭・灰・溶けた泥レンガや陶器といったものがまざった1.5メートルほどの層が発見された。

 過去にこの町がひどい火災に見舞われたことは明らかで、現在この層は「破壊層」と呼ばれている。

 しかし、これまで町で具体的に何が起きたのかはわかっていなかった。火山や地震、あるいは戦争といったものでは、金属や泥レンガまでが溶けたりはしない。

 そこで研究グループは、宇宙の衝突現象を解析するツールを利用して、遺跡に残されている痕跡に一致するシナリオの推測を試みた。
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死海の北東約11.5km、現在のヨルダンに位置するテル・エル・ハマム / image credit:NASA , CC BY-ND

隕石爆発と考えられる証拠

 そして浮かび上がってきた犯人が、1908年の「ツングースカ大爆発」を引き起こしたともいわれている隕石爆発だ。それを裏付ける証拠もたくさんある。

 たとえば、遺跡では「衝撃石英」という細かい砂粒が見つかっている。これは1平方インチあたりで5ギガパスカルもの圧力をくわえなければ形成されない代物だ。その圧力は、親指の上に68トン級の戦車を6台重ねたにも匹敵する。
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多数の小さな亀裂が入った衝撃石英粒子の電子顕微鏡画像 / image credit:Allen West , CC BY-ND

 破壊層には微細な「ダイヤモノイド」も含まれている。その1粒1粒は、インフルエンザ・ウイルスよりも小さいが、その名が示す通り、ダイヤモンドに匹敵するほど硬い。

 これはおそらく隕石の圧力と高温によって、周辺の木々や植物が一瞬にして変化したものだと考えられている。
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火の玉が木や植物に高温と圧力をかけることによって形成される火口内のダイアモノイド(中央) / image credit:Malcolm LeCompte , CC BY-ND

 「スフェルール」も見つかっている。これは1590度以上の高温によって蒸発した鉄や砂が空中で固まることでできる、塵よりも小さな粒子だ。

 さらに遺跡の陶器やガラスの表面には、溶けた金属粒子が付着していた。たとえばイリジウム、プラチナ、ケイ酸ジルコニウムといったものだが、それぞれの融点は2466度、1768度、1540度である。

 くわえて炉を使った実験では、テル・エル・ハマムにある陶器や泥レンガは、1500度以上あれば溶けて液化することが確認されている。車なら数分で溶けてしまうほどの高温だ。

 こうした証拠は、通常の火災、戦争、火山といったものではありえない高温が町を飲み込んだことを示している。

 また、ツングースカ大爆発が起きた現場や、恐竜絶滅の引き金となった隕石が残したとされる「チクシュルブ・クレーター」などでは、テル・エル・ハマム遺跡と同じような痕跡が見つかっている。
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テル・エル・ハマム遺跡の古代の壁の近くに立つ研究者たち。露出した各壁のほぼ中間に破壊層がある / image credit: Phil Silvia、CC BY-ND

数世紀にわたり遺跡一帯が放棄されていた謎

 奇妙なのは、この遺跡一帯が、その後数世紀にわたって放棄されていたことだ。

 研究グループはその原因について、死海の塩分を含んだ水が蒸発し、周囲を塩で汚染したからではないかと考えている。

 塩害によって農作物が育たなくなってしまったので、砂漠とさして変わらない雨が600年かけて塩を洗い流してくれるまで、誰も住むことができなかったのだ。

「ソドムとゴモラ」のモデルとなっていた可能性

 このときの悲劇は、遠く離れた地域から目撃されていた可能性がある。

 彼らは何世代にもわたり、その恐ろしさを語り伝え、それがやがてソドムの伝説として旧約聖書に記されるにいたったのかもしれない。

 仮にこれが本当なのだとすれば、旧約聖書の記述は、1万2800年前に起きたテル・アブ・フレイラ遺跡(シリア)での災厄に次ぎ、人類の2番目に古い隕石による大災害の記憶となり、文書として残されたものとしては最古の記録ということになる。

太古から届けられた警鐘か?

 なお、こうした大災害は、過去のものではない。現在、知られているだけでも2万6000個の地球近傍小惑星が存在し、21年8月時点で2203個が「潜在的に危険な小惑星」に分類されている。

 神の怒りに触れて滅ぼされたソドムの伝説は、すぐそばに危険があることを忘れがちな現代人に対する、時代を超えて届けられた警鐘なのかもしれない。

References:A giant space rock demolished an ancient Middle Eastern city and everyone in it – possibly inspiring the Biblical story of Sodom / written by konohazuku / edited by parumo

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