ちなみに、同じ凉面でもレストランでも味わえるのが鸡丝凉面(ジースーリャンミェン|鶏絲涼麺)。細切りの鶏肉が入っており、近年は麺をくるりと巻き付けた現代的な盛り付けもよく見られる。

凉面も鸡丝凉面も、四川式冷やし中華というよりは、つまんで楽しむ夏の味。分け合って食べるのも楽しみのうちだ。
伊勢うどん級の極太麺!コシとコクの甜水面(ティェンシュイミェン|甜水麺)
もうひとつ、‟熱くない麺”として親しまれているのが甜水面(ティェンシュイミェン|甜水麺)だ。
こちらはほっそりとした凉面とは対照的。伊勢うどん級の極太麺に、麻(しびれ)、辣(辛み)、甜(甘み)、鮮(うまみ)、香(香り)を湛えたたれがガツンと絡み、パンチのある味が楽しめる。


中国の麺は全般的にコシがない印象があるが、甜水面は別格。讃岐うどんをさらに強くしたようなコシがあり、たれにはスパイスや砂糖を加えて煮た複製醤油、芝麻醤(練りごま)、すり下ろしにんにく、辣油がたっぷりかかる。
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啜れる麺ではない。箸で手繰りながら、モギュモギュと噛み締めて食べる快感がここにある。
ところてん風魔性のおやつ、凉粉(リャンフェン|涼粉)
凉面や甜水面は小麦粉の麺をベースにしているが、豆の粉をベースにしたおやつもある。凉粉(リャンフェン|涼粉)だ。

ところてんのような口当たりのよさから、カロリーゼロのような気分になるが、原料は緑豆やエンドウ豆などのでんぷん質。それらの粉に水を加えて加熱し、糊状になったものを冷やし固め、条切りにしたり、専用の道具で細切りにしてタレをかけたものがこれだ。
口にするとぷるんと弾力があり、ややもっちり。辣油、豆豉、黒酢、醤油、にんにくなどを混ぜたたれと、香菜、ねぎ、砕いたピーナッツなどの薬味を和えて口に運んでいるうちに、気づけば一皿、溶けるようになくなってしまう。

味付け、色、太さは、地域、店、原料によって異なるが、四川省の無形文化遺産ともなっているのが川北凉粉(チュワンベイリャンフェン)。四川省の北部、すなわち‟川北”の南充市発祥と言われ、芝麻醤を使う中国西部の凉粉と異なり、辣油と豆豉をガツンと効かせているのがクセになる。
凉面よりもさっぱりとしていて、ちまちまつまみ続けるのには持ってこい。おやつはもちろん、レストランの前菜として人気があるのもうなずける。
麻辣の後の癒し系。もっちり&まったり風味の凉糕(リャンガオ|涼糕)
続いては甘いおやつもいってみよう。凉糕(リャンガオ|涼糕)は不思議な食べものだ。乳白色で丸く冷たく、ゼリーのようでもあるが、コーンスターチを練ったようなもっちり感があり、まったりと甘い。

日本にはあまりない味と食感なのに、食べるとどこか懐かしいのは、米から作られているからかもしれない。うるち米の粉を水で溶き、熱を加えながら練ったものを型に入れ、しっかり冷やせば凉糕のできあがり。これに黒蜜をたっぷりかけて、甘々にして食べる。はっきりいって、キレがない甘味だ。
しかし辛いものを食べた後、この凉糕が本領を発揮する。例えば、酸辣粉(スァンラーフェン|激辛で酸っぱいスープに入った太春雨)を食べた後に凉糕を食べると、舌の上をやさしくキレイにリセットしてくれるのだ。

辛さと甘さはお互いを引き立て合う。成都の火鍋店では、餅を揚げて黒蜜をかけた炸糍粑(ザーツーバー)など甘いものを必ず用意しているし、料理店では、辛い味の合間に、あんこ、もち米、豚肉を重ねて蒸した甘い料理・甜焼白(ティェンシャオバイ)を注文することができる。凉糕もまた、酸辣粉や凉面とセットで食べると最強。一緒に売られているのも理に適っているのだ。
最後に、これぞ夏の風物詩! 時代とともにアップデートし続ける冰粉(ビンフェン)をご紹介しよう。
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