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建築家・隈研吾氏が明かす、世界に通用する「教育」の場づくりとは

パラサポWEB

コロナ禍はもちろんのこと、SDGs、D&I、ニューノーマル、オンライン革命など、今子どもたちを取り巻く環境は激動を余儀なくされている。そんな中、誰ひとり取り残されることなく、子どもたちが希望に満ちた未来へと羽ばたいていくために、教育はどうあるべきなのだろうか。

世界に名を馳せる建築家として、保育園や学校、図書館などの設計も多く手がける隈研吾氏に、カナダ在住のパラリンピアンであり、国際パラリンピック委員会・国際オリンピック委員会の教育委員会メンバーを務めるなど、現在もパラスポーツを通して教育活動を行っているマセソン美季氏がインタビュー。おふたりに未来の教育の場のあるべき姿について対談をしていただいた。

子どもたちの可能性を広げる「開かれた空間」

  隈氏が当時の同級生と共に、校舎建て替えの設計監修をした母校、栄光学園。高い天井、広々とした空間作りは、学校とは思えないほど!
写真:日暮雄一

世界中からの設計依頼が引きも切らない隈研吾氏だが、2017年、母校・栄光学園の創立70周年の校舎建て替えの際に、隈氏は当時の同級生と共にその設計監修にあたった。栄光学園で学ばなかったら、全然違う人生を歩んでいた、たとえ建築家になったとしても、今とはスタイルが異なっていただろうと語る隈氏だが、栄光学園の新校舎設計にはどんな思いで取り組んだのだろうか。

マセソン美季氏(以下、マセソン) 栄光学園は「みらいの学校」と名付けられ、三階建てだったのを二階建てにしたり、職員室の壁をなくしたりと、「体に気持ち良い建築」を軸に普通の学校ではあり得ないような画期的な工夫をされているとうかがいました。なぜそのような学校にしようと考えたのか、理由をお聞かせいただけますか?

隈研吾氏(以下、隈) 今の学校の校舎は、基本的にはコンクリートの閉じた箱の中に人間をいっぱい入れるという構造になっています。できるだけたくさん人を詰め込むために、縦横に机を整然と配置し、一方通行の教育をして成果をテストで確認するというやり方。つまり、子どもたちは非常に非人間的な空間の中に押し込められている状態だった、というのがまず理由のひとつですね。その結果、学校を卒業してからも、その閉じたコンクリートの中で身についた発想から一生逃れられないような人間が生まれているように感じていたんです。

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マセソン 今の話を伺って、息子たちが通うカナダの公立の学校の教室の様子を思い出しました。机のレイアウトも自由で、日本の教室とはだいぶ違うんです。日本の教育現場のような閉じた空間ですと、対話というのも生まれにくいと感じています。環境は重要ですよね。

隈研吾氏

 世界に目を移してみても、閉じた空間に人を閉じ込めるという発想は、だいぶ崩れてきています。本来通路であった廊下のスペースがどんどん拡大していって廊下と教室という箱の境界がなくなってきている。そして箱の中でも、机を並行に並べるというだけではなく、机や椅子の種類も同じではなく雑多な形のものが、リビングのようにバラバラに置かれるといった状態が、むしろ中心になりつつあるなと感じますね。

マセソン たしかに、カナダもそうです。日本社会の教育は、同じ形で正しく並んだタイルが美しいとする価値観を尊重している印象です。一方、カナダの教育は、質感や大きさ、形も色も違うタイルが集まってきた中で、それぞれの良さを引き出しながら全体として美しく仕上げるモザイクアートのようなものがいいとされているように感じています。ものの見方、考え方も日本とはだいぶ違いますし、評価の軸も多様です。日本の教育の良いところも残しつつ、海外に良いものがあるのならそれも取り入れることによって、よりよい教育の場を作り出せるんじゃないかと思っています。

 まず、日本の教育施設、空間に対する考え方は非常に遅れているという意識を日本人は持っていないんですよ。みんな学校はこういうものだと思い込んでいる。その結果、学校は非常に不健康な状態に陥っていると思うので、マセソンさんのような方にどんどん発信していただけるとありがたいです(笑)。

多様性を受け入れる教育が、社会を閉塞感から救う

マセソン美季氏

マセソン 私は、違いには価値がある、人と違うことは悪いことでも恥ずかしいことでもないということをカナダの教育で教えてもらったような気がしています。多様性に価値を見いだし、インクルージョンを進める環境で過ごしていると、それまでの「当たり前」の枠が外れて、岩のように四角いゴツゴツとしたものの角が取れて丸くなり、同時に柔軟性や弾力も身について、弾み出すボールになったような感覚がしました。多様性が尊重される環境に慣れていくと、何か問題にぶち当たったときに解決のバリエーションも増えていくし、どんな環境・状況にもしなやかに対応できるようになるんじゃないかと思います。日本の教育でも、子どもたちがそのような力を身につけられるようにしてほしいですね。

 そもそも、日本の学校のように全員が同じ椅子に座らなければいけないというのは不自然ですよね。どのような椅子を選び、それをどういう向きに置くかも各自が自由に決められるところから、多様性を大事にするという姿勢がスタートすると思っているので、空間の影響力は非常に大きいと思っています。学校でも自由な空間というものを用意してあげると、子どもたちには自動的に、誰もが均一じゃなくてもいいんだ、規格にはまらなくてもいいんだという思いが生まれてくるんですよ。

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