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長谷川唯が語った「もっと理論的に」の真意。東京五輪8強敗退、なでしこジャパンの中心として抱く未来への覚悟【インタビュー】

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長谷川唯が語った「もっと理論的に」の真意。東京五輪8強敗退、なでしこジャパンの中心として抱く未来への覚悟【インタビュー】

「チームによってですが、2019年のワールドカップの1年前か2年前くらいからですね。スペインは自分がアンダー世代の時から対戦していた監督がそのままA代表の監督になっていて、他国よりも少し早くポジショニングを大事にするサッカーをやっていた印象です。イングランドの選手たちがいいポジショニングを取っているなというのは、ワールドカップの1年前くらいから感じていました。

海外の選手がポジショニングを大事にするサッカーをしていない時は、守備だと複数人で奪うタイミングがあって、攻撃では技術で上回って1人かわして数的優位を作れる場面があったんです。ところが最近は特に自分たちが守備をするシーンで、ボールにしっかり当たりにいくタイミングもないくらい『間』に立たれていることが多くなりました」

――各ポジションの役割をしっかりと規定して、11人のチームとしての構造を作っていく戦術は男子サッカーで主流になってきました。欧米ではその流れが女子にもきています。日本の女子サッカーが世界の潮流に乗り遅れてしまった理由はなんだと考えますか?

「今までは技術的に日本が上回っていて、海外のチームがフィジカルやスピードを生かしてくるサッカーだけをやっていました。それが技術面を突き詰めれば自分たちは上にいけるだろうと考える流れになった要因だと思います。

私も含め、周りに海外の男子サッカーを見る選手は多かったですが、あくまで参考資料みたいな形が多いと思います。海外の女子サッカーを見るかと言われたら、視聴環境もあまり整っておらず、なかなか見る機会がないのが現状です。それでも海外挑戦の意思がある若い選手は、昔より多いと感じています。

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なでしこリーガーには大学に通っている選手や、日中に仕事をしている選手も多く、時間などに余裕がない状態でサッカーをしていたのもあって、これまでは海外移籍が将来の選択肢に入らなかった選手がほとんどなのではないかと思います」

「最終的に欧州移籍を決めた理由」とは

――女子サッカー界の変化を体感する中で、今年1月にミラン移籍を決断しました。長谷川選手自身の中に「何かを変えなければいけない」という思いがあっての海外挑戦だったのではないでしょうか。

「日テレ・東京ヴェルディベレーザのポジショニングを大事にしながらも自由にやる部分が混ざったサッカーの中で、ドリブルで簡単に置き去りにできるようなシーンが増えてきた実感がありました。個人で取り組んでいたフィジカルトレーニングの成果も出てきて、ずっと同じ環境にいてはいけないと思ったのが最終的に欧州移籍を決めた理由です。昔から海外に行きたくて、欧州のサッカーも進歩してきていて、自分の感覚がちょうど合ったタイミングでもありました」

――実際にイタリアへ渡ってプレーしてみて、思い描いていた欧州のサッカーを体感できましたか?

「日本とは全く違うサッカーをやっている環境で、自分がするべきプレーも全く違うな、というのはすごく感じました。もちろんイタリアリーグが日本のリーグより明らかにレベルが高いかと言われたら、そうではないかもしれないですけど、やっぱり日本人相手とは全く違うサッカーでしたね。

ただ、イタリアの女子サッカーはまだそこまでポジションを大事にしているわけではなく、ミランも全員でスペースを共有する意識を持ったチームではありませんでした。むしろボールに強く寄せにいくことで、自分のスペースを空けてしまう選手も多かったです。

守備では運動量が本当に多くて、『全部いけ!』と要求されたので、慣れるのは難しかったです。それでもいいところが見えている選手はたくさんいますし、自分がいいポジションを取っていたら、いいパスが入ってくることもあったので、今までやってきたことは無駄ではないんだとも感じました。

球際の強さだったり、ボールに対する執念だったりに対応することを毎日の練習や試合で経験していたのは、世界の相手と戦うにあたって大事な日常でした。東京五輪前にイタリアのサッカーを経験できたのは、すごくよかったと思っています」

ウェストハム移籍。イングランド挑戦へ

――以前、内田篤人さんや酒井高徳選手による「日本と海外のサッカーは別の競技」という発言が話題になりました。それを身をもって体感したわけですね。

「日本人の方がスピードは遅いですけど、組織で賢く守ったり、粘り強く抜かれない守備をする選手が多かったりします。でも、それに慣れていると、海外の選手は懐に飛び込んでくるので、簡単にボールを奪われてしまう。そういった違いは、イタリアに行ってすごく実感しました」

――日本と欧州との違いといえば、もう1つあります。それはピッチ状態です。普段から整ったピッチでプレーしていた日本人選手は、欧州のぬかるんでいて柔らかいピッチに慣れるまで相当苦労するという話を聞いたことがあります。長谷川選手はイタリアのプレー環境にうまく適応できましたか?

「私はイタリアでもアディダスの『コパ センス』を履いていたんですけど、滑ることはほとんどなかったですね。もちろんぬかるんでいたり、雨で荒れていたりするグラウンドもありましたけど、そんな状態でも滑らずプレーできて、スタッドの高さも自分にとってはベストでした。もちろん状況によっては取り替え式スタッドのスパイクを履くこともあります。でも、自分は基本的に固定式スタッドのスパイクを履きたくて、イタリアのグラウンドでも固定式でしっかりプレーできていました。革の履き心地もすごくいいので、お気に入りです」

――ミランでの半年間を経て、ウェストハムへの移籍が決まりました。イタリアとイングランドでは、サッカーの特徴が変わってくると思います。昨季アストン・ヴィラでプレーしていた岩渕真奈選手もイングランドの女子サッカーへの適応にかなり苦しんでいた様子でした。

「私もブチさん(岩渕)の試合を見ていたので、難しさはよくわかりました。いい位置に立っていてもパスが来なかったり、ボールが自分の頭上を越えていったり。ウェストハムでも同じような場面があると思いますけど、その中で自分がボールを持った時に何ができるかを意識していきたいです。

日本ではボールを受ける前の準備段階でいいポジションを取っていたらしっかりパスが来て、自分の優位な体勢でボールを握れたんですけど、海外に行ったら、サッカー観の違いもあって、苦しい状況でボールを受けることだったり、難しいシーンも多いと思います。それでも自分のところでボールを失わないことや、難しい体勢からでも自分からチャンスメイクすることを目標に、得意ではない部分をもっと上げて、新しい武器にしていければと思っています」

なでしこジャパンでのこれから

――東京五輪での経験と悔しさをイングランドに持っていき、なでしこジャパンや日本の女子サッカー界にどんなものを持ち帰ってきたいですか?

「もちろん個人のクオリティを高めてきて、なでしこジャパンに招集された時に力強さを見せるのと同時に、理論的にサッカーをすることも大事だと思うので、それを特に下の世代の選手たちに見せていきたいです。

日本の若い世代には身体能力の高い選手が増えてきています。フィジカル面に武器がある選手たちに、『なでしこジャパンに来たら頭を使わないと難しい』と思われるようなチーム作りは絶対にしなければいけないと思っています。日本代表に来て、自分のスピードを活かせて『あ、できるな』という印象より、『あ、マズいな』という印象を与えられるくらい、個人としても、チームとしての戦術や考え方の面でも、自分がいい影響を与えられたらと思っています」

――長谷川選手たちの世代が、これからの日本女子サッカー界を引っ張っていくことになると思います。その自覚はありますか?

「もちろん、これからは私たちの世代が日本の女子サッカー界を引っ張っていかなければいけないという自覚はあります。けど、自分としてはなでしこジャパンに初めて招集された時から『若いから…』というのはあまり気にしていませんでした。当時から自分が中心でやっていくという思いも、チームを引っ張っていきたいという気持ちもあったので、いい意味でなでしこジャパンに入った頃と変わらない志でやっていきたいと思っています」

(取材・文:舩木渉)

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