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インフルエンサーは子どもたち?英国のパラリンピックムーブメントとは

パラサポWEB

パラリンピック史上最も成功したと言われている、2012年のロンドン大会。用意されたチケットは完売し、満席となった競技場はどこも選手を応援する声援と熱気に包まれた。そんなパラリンピックムーブメントの一端を担ったのが、大会の何年も前から実施されていたという教育だった。世界が注目した、オリンピックとパラリンピックの価値をベースにした独自の教育プログラム「GET SET(ゲットセット)」とは、どのようなものなのだろうか。

東京2020パラリンピックで日本人はレガシーを残せるのか?

ロンドン2012パラリンピックで熱狂する人々 (写真は、Olympics & Paralympics Team GB – London 2012 Victory Parade )©︎Getty Images Sports

ロンドン2012パラリンピックは、チケットが完売するなど開催期間中の盛り上がりもさることながら、閉会後もイギリス社会にD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)が浸透し続けていることから、世界中から注目を集めている。こうしたレガシーを東京大会でも残すことが出来るかを考えるべく、4週にわたり、「THE INNOVATION 2012 LONDON >>> 2021 TOKYO」(主催:公益財団法人日本財団パラリンピックサポートセンター)というオンラインカンファレンスが開催された。
「教育」をテーマにした第4週目の参加者は、ロンドンオリンピック・パラリンピック組織委員会の教育プログラム「GET SET」の開発責任者Nick Fuller氏と、日本版「GET SET」とも言える『I’mPOSSIBLE(アイムポッシブル)』日本版の開発責任者であり1998年の長野パラリンピックの金メダリストでもあるマセソン美季氏。さらにこれらのプログラムを実際に使っている現場の代表として、イギリスのハウズ小学校の副校長Rebecca Bollands氏と、千葉市教育センター指導主事の松村順氏。そして2児の父であるお笑い芸人、トータルテンボスの大村朋宏氏。国境を越えて、今こそ子どもに受けさせたい教育について語り合った。

イギリス全土を巻き込んだ教材「GET SET」とは?

「GET SET」の開発責任者Nick Fuller氏

まずイギリスで使用された教育プログラム「GET SET」だが、その名前の由来が興味深い。かけっこなどのスタート時に日本で言う「よーい、どん」のことをイギリスでは「Get set(よーい)、Go(どん)」と言うそうだ。つまり「GET SET」は何かに向けて準備するという意味。Fuller氏たちは「子どもたちに、パラリンピックを通じて得られるかけがえのない経験に対する心構えをしてほしい」という強い思いを込めて、この名前をつけた。こうして誕生したオリンピック・パラリンピックを題材にした教育プログラム「GET SET」は、主にそのパラリンピックに関する箇所について、3つの主要な段階で構成されている。

1.パラリンピックムーブメントの歴史、スポーツとアスリートを題材にし、パラリンピックの価値を伝える教材
2.パラリンピックの歴史、価値、アスリートなどパラリンピックのエッセンスをフルに活用した教育キャンペーン
3.スポンサーを巻き込んだ教育機会やリソースの構築

中でもこのプログラムの中心となるのは、1のパラリンピックの価値を伝える教材を使った教育で、これはデジタル化され、イギリス全土の教員が必要なときにすぐにダウンロードして使うことができた。大会開催5年前の2007年から準備が始まり、2や3のキャンペーンなどを並行して行い、2008年から教育現場での活用がスタート。結果として大会開催の2012年にはイギリスの85%の学校がこのプログラムを利用。2008年から2012年の間に延べ50万人の子どもたちがこのプログラムに参加するなど、大きな成功を収めた。

子どもが親へ伝える逆転の発想「リバースエデュケーション」

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ロンドン大会ではこのように成功したわけだが、そもそもなぜ子どもを対象にした教育を行おうと思ったのだろうか。そこには「Reverse Education(リバースエデュケーション)」という考え方があった。

Reverse Education
逆向きの教育。通常の教育は教師や親から子どもに教えるが、逆に子どもが学校などで習ったことを親や周囲の大人に伝え、それらが広く浸透していくこと。

Fuller氏は「共生社会の重要なメッセージを、子どもたちから地元のコミュニティに発信して欲しかった」と当時の思いを語る。

これを聞いた大村氏は「共生社会を実現したい、障がい者について考えたいとなったら、大人をターゲットにしそうですが、子どもたちに教えようというのが凄いですね。そこにさらにスポーツという身近なものを絡めたから浸透したんですかね」と、子どもたちをターゲットにした着眼点に感心していた。

アンケートによると、「GET SET」を利用した生徒の83%が「障がい者についてより前向きに感じるようになった」と回答。さらに教員の回答を見ると「生徒のやる気が高まった」(91%)、「生徒の学習への関与が向上した」(79%)と、ポジティブな変化が見られた。そして「GET SET」は時代にあわせてその都度刷新され、ロンドン大会から9年たった現在でも教育現場で活用されているという。

パラリンピック教育プログラム『I’mPOSSIBLE』日本版

『I’mPOSSIBLE』日本版の開発責任者であるマセソン美季氏

一方、東京2020パラリンピックの開催をきっかけのひとつとして開発された教育プログラム『I’mPOSSIBLE』日本版(以下『I’mPOSSIBLE』)は、国際版の教材を元にローカライズされた教材だ。その名前の由来に開発者たちの思いが込められている。

「不可能という意味の英語impossibleにアポストロフィーをつけるだけで『私はできる』という意味になる。つまり、不可能だと思えたことも、考え方を変えたり、少し工夫したりすればできるようになる。簡単に諦めずにどうしたらできるようになるか、そんなふうに考える癖をつけてほしいというメッセージを込めました」(マセソン氏)

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