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ロンドンパラリンピックを成功に導いた至高のメディア戦略とは

パラサポWEB

用意された280万枚のチケットが完売し、人々を熱狂の渦に巻き込んだ2012年のロンドンパラリンピック。その成功の理由のひとつがイギリスのテレビ局Channel 4が作ったCM動画「Meet The Superhumans」にあると言われている。ロンドン市民だけでなく、世界中の人々の固定観念を覆した革新的なCMとはどんなもので、なぜ成功したのか? その秘密に迫るため、CM制作に携わった関係者らが出席して行われたオンラインカンファレンスの内容をご紹介しよう。

ロンドン大会の奇跡を東京大会でも起こすことができるのか?

ロンドン大会のパレードでパラアスリートに熱狂的な声援を送る人ⓒGetty Images Sport

残念ながらこれまで、パラリンピックはオリンピックほど注目されてこなかった。しかしその常識を覆しチケットが完売、さらに大会後には「奇跡」と言われる多くのレガシーを残したことから、史上最も成功したと言われているロンドンパラリンピック。その奇跡を今回の東京大会でも起こすことができるのかを追究すべく、4週に渡り、「THE INNOVATION 2012 LONDON >>> 2021 TOKYO」(公益財団法人日本財団パラリンピックサポートセンター主催)というオンラインカンファレンスが開催された。

「メディア」をテーマにした第3週目では、「Meet The Superhumans」を制作したイギリスの国営放送「Channel 4」の元最高マーケティング責任者(CMO)Dan Brooke氏が独占インタビューに答えた。さらにCMにも出演した5人制サッカー(ブラインドサッカー)の当時のイギリス代表Dave Clarke氏、今回の東京2020パラリンピックに水泳日本代表として出場する鈴木孝幸選手、数多くのパラスポーツイベントに参加しているお笑いコンビ南海キャンディーズの山里亮太氏を交えて、熱いトークが交わされた。

パラリンピックはトップクラスのスポーツであるという視点

イギリスの国営放送「Channel 4」の最高マーケティング責任者(CMO)Dan Brooke氏

Channel 4が制作した「Meet The Superhumans」という90秒のCM動画では、各競技の選手たちがパラリンピックを目指し練習に励む姿や大会などに挑むスタイリッシュな映像が次々と映し出される。しかし、その間に突如として差し挟まれる戦地で爆風に飛ばされる人、母親のお腹の中にいる胎児、大きな交通事故などの映像。これらは、パラアスリートたちの受障の経緯を象徴している。さらに事故などで手足が失われた体などがそのまま映し出される。それまで暗黙のうちにタブーとされてきた「障がい」を隠すことなく映し出したCMは、公開直後からネット上などでポジティブな反響を呼び世界中に拡散された。こうした動画を作った理由を企画制作に携わったChannel 4のDan Brooke氏は次のように説明する。

「以前からみんなパラリンピックの存在は知っていましたが、パラアスリートのことはあまり知りませんでした。どちらかと言うとチャリティイベントへ行った感覚があって同情的に受け止めていたんです。我々はこれを全く違う形で捉えることができるのではないかと考えました。小難しいことは抜きにして、パラリンピックはトップクラスのスポーツであること、今まで皆さんが考えていたようなものとは、まるで違うということを示すのが我々の任務だと考えたんです」

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つまり、それまでの「障がいがあるのにすごいね」という同情的な視点ではなく、シンプルにパラアスリートたちの個性や魅力、競技の凄さに焦点を当て国民の理解を深めようという発想から「Meet The Superhumans」は誕生したのだ。

街中に設置された「THANKS FOR THE WARM-UP」の看板

さらにオリンピックが終わりパラリンピックが始まるまでの2週間の間に、Channel 4は「THANKS FOR THE WARM-UP(ウォームアップしてくれてありがとう)」というフレーズが書かれたポスターや広告看板をイギリス全土に展開した。「warm-up」とは通常は本番前の準備運動という意味で使う。これはオリンピックをパラリンピックのための準備運動だと言うのに等しい。

「イギリス人は自分たちにユーモアがあってちょっぴり皮肉っぽいことを誇りに思っています。ですから看板を見てみんなニヤリとして、何か面白そうなことがありそうだと思ったんです」

未だかつてないこのキャンペーンは人々の期待を膨らませ、いざパラリンピックが始まってみるとチケットは完売、パラリンピックを中継したChannel 4の視聴率も創業35年以来、最高の数字を記録した。ちなみに、「Meet The Superhumans」は、世界最高峰の広告の祭典「カンヌライオンズ2013」でグランプリを受賞した。

つくり物ではなくリアルだからこそ人々は共感する

「Meet The Superhumans」に登場する事故車と車いすの男性

この過激とも取れるCM動画の制作にあたり、Brooke氏たちは腰を据えて徹底的に話し合いをしたそうだ。広告なのでドラマチックに見せる必要はあるが、パラアスリートたちがトップクラスのアスリートであることと同時に、そうなれたのは、彼らが人一倍努力したからであることを理解してもらえるように「つくり物」ではなく「リアル」を見せることを心がけたのだ。

「爆撃や車の衝突シーンは、こうした形で障がいを負った人たちがいることを示したかったのですが、大会組織委員会や社内から、やりすぎだという声もあがりました。確かにこうした映像を不快に感じる人もいるかもしれませんが、これはフィクションではなく真実なんです。その真実を人々に知ってもらえれば全ての人々が住みやすい、よりよい世界がやってくるはずだと思ったんです」

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