人類は「宇宙の果て」までの96%が見えたという。最後には何が待つのか?
人類は「宇宙の果て」までの96%が見えたという。最後には何が待つのか?
『宇宙の「果て」になにがあるのか 最新天文学が描く、時間と空間の終わり』(著:戸谷 友則)

Mitakaというソフトウェアがあります。著者もかつて所属した国立天文台が開発したソフトです。同ソフトがダウンロードできるHP(http://4d2u.nao.ac.jp/html/program/mitaka/)にこうあります。

「Mitaka(ミタカ)は、太陽系・恒星・銀河データを基にした「4次元デジタル宇宙ビューワー」です。地球から宇宙の大規模構造までを自由に移動して、天文学の様々な観測データや理論的モデルを見ることができます」
(※講談社ブルーバックス『4次元デジタル宇宙紀行Mitaka DVD-ROM付』にはMitakaの詳細な解説と名場面のスクリプト付きDVD-ROMが収録されています)

このソフトでは1000万kmから100億光年(138億光年まで表示されます)までの17段階のスケールで宇宙の姿を見る(知る)ことができます。

138億年前のビッグバンとインフレーション理論

この138億年という数字はビッグバン理論によって宇宙が誕生してから今までの時間を表しています。

宇宙は138億年前に始まり、宇宙には光より早く伝わるものは存在しない。したがって、我々が原理的に観測できる領域の大きさには限りがある。それは現在、我々を中心として約464億光年の半球を持つ球ということになる。この464億光年という限界距離を「宇宙の果て」と言うことが多い。

なぜ464億光年になるかというと「光が昔に通過した領域はその後の宇宙の膨張により引き伸ばされている」からだそうです。

ではその先はないのでしょうか? 無……ではありません。464億光年というのは地球に光が届く範囲ということでしかないのですから。

空間方向に広がる宇宙の果てについてまず言える一つの回答は、「半径464億光年の宇宙の地平線よりはるかに大きな領域まで、一様かつ等方で、ゆがみのない平坦な宇宙空間が広がっている」ということである。

この宇宙論の背景にあるのがインフレーション理論です。これは宇宙の初期に急激な膨張(指数関数的膨張)があったという説でビッグバン理論を支え、また宇宙の一様かつ等方な膨張を理論づけています。

ところで138億年前に宇宙は出現しましたが、それ以後現在までの宇宙の歴史年表が載っています。

「宇宙の進化史」と「星と銀河の物語」の章では宇宙史をこの表にそって解説しています。インフレーションを引き起こした「ポテンシャルエネルギーが相転移によって高温・高密度の物質と光に転化し」宇宙の歴史の幕が上げられました。物質(粒子)と反物質(反粒子)のぶつかりあいを経て宇宙が歩み始めました。

けれどここにもまだ大きな解けない謎が存在します。なぜ粒子と反粒子の数が同数でなかったのかという問いです。もし同数であれば「対消滅」を起こして粒子は消えてしまいます。それがごくわずかな対称性の破れによって原子が生き残りました。

粒子と反粒子がそれぞれ約100億個あったとして、粒子が反粒子よりわずかに1個だけ多いというレベルのものだ。100億個の粒子が次々と反粒子にぶつかって消滅していく中、わずかに一つだけ生き残ったのが我々の体を形作る原子となったのである。

宇宙論で解明を待っている2つの「暗黒」

ほんのわずかな差が物質、生命を生み出しました。それがなぜ起きたのか……今も研究され続けている、遠い過去、宇宙の誕生での解けない謎です。そしてそれと対極とでもいえる遠い未来の宇宙の姿もまた追究され続けています。

現代の宇宙論における最大の未解決問題はなんと言っても「暗黒物質」と「暗黒エネルギー」であろう。研究者がこれらについて講演する際、スライドにダースベイダーの絵を入れるのはもはや世界的に使い古されており、ベタすぎてはばかられるほどである。

この2つの「暗黒」のうち「暗黒物質(ダークマター)」はブラックホールもその候補の1つに挙げられているそうですが、ニュートラリーノを観測、検証できれば「暗黒物質」の研究は大きく進展すると考えられています。ですが「現時点では理論上の存在でしかない」のがニュートラリーノなのです。

「暗黒エネルギー」についてはこの本の最後にこう記されています。

紛れもなく、暗黒エネルギーは宇宙が人類に突きつけた最大の難問である。今後しばらくは、これを解明するために世界の天文学の総力を挙げた挑戦が続く。その先に一体どのような果てが待っているのか、楽しみに待つことにしたい。

この本の魅力、おもしろさのほんの一部を紹介してみました。「宇宙の果て」という未知の世界へどのように人間(科学者)が歩んできたか……彼らはどのように考えてきたのか、試行錯誤を含めたその歩みの根底にあるのはなんでしょうか。この本でアインシュタインの言葉が紹介されています。相対性理論で物理の世界を大きく変え、また「宇宙定数」という謎を残した彼はこう言っているそうです。

「想像力は知識より大切である。知識には限界がある。想像は、世界を包み込む」(アインシュタイン)

これまでの自然科学の知識に基づいて、それなりに根拠のある形で宇宙の果てについて想像することはできる。想像であるがゆえに、それが正しいと現時点で断定することは不可能だが、それが真実の世界を包み込んでいることを期待しつつ、可能なかぎり「宇宙の果て」について思いを巡らせてみたい。

著者の言葉どおりのとても優れた入門書・啓蒙書です。作者のユーモアも含めてそれにふさわしい夢を詰め込んだ本だと思います。夜空の星が見えにくい人はMitakaを友として宇宙へ思いをいたしてほしいと思います。ところで暗い夜空の色は宇宙の色ではないそうです。宇宙の本当の色は……これもこの本に書かれています。探してみましょう。

レビュワー

野中幸宏

編集者とデザイナーによる書籍レビュー・ユニット。日々喫茶店で珈琲啜りながら、読んだ本の話をしています。政治経済・社会科学から芸能・サブカルチャー、そして勿論小説・マンガまで『何でも見てやろう』(小田実)ならぬ「何でも読んでやろう」の2人です。

note⇒https://note.mu/nonakayukihiro

本の紹介

宇宙の「果て」になにがあるのか 最新天文学が描く、時間と空間の終わり
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784065124994

●宇宙は有限なのか? 無限に続くのか?
●宇宙の外側にはなにがあるのか?
●宇宙が始まる前はどうなっていたのか?

ここ数十年で急速に発展した天文観測技術は、太古の昔から人類が追い求めてきたこの問いに対して、一定の答えを与えられるようになった。
「相対論」と「量子論」を基にした現代宇宙論は、宇宙の果てにどこまで迫れるのか?
最新の観測から見えてきた我々の住む宇宙の姿と、残された大きな謎を最先端の研究者が解説!

【宇宙観を覆す新常識】
・「ビッグバン」「インフレーション」の証拠はここまで揃った!
・人類は宇宙の「果て」までの96パーセントを見ることができている
・スペースシャトルの中はじつは無重力ではない!?
・銀河と銀河の間の空間には1000万度を超える高温のガスがある!
・宇宙は暗いけれど黒くはない? →本当の宇宙の「色」を本書のカバーで確認しよう!

【本書の目次】
第1章 宇宙の果てとはなにか
第2章 時空の物理学――相対性理論
第3章 宇宙はどのように始まったのか――ビッグバン宇宙論の誕生
第4章 宇宙はどうしてビッグバンで始まったのか?――時空の果てに迫る
第5章 宇宙の進化史――最初の星の誕生まで
第6章 星と銀河の物語
第7章 観測で広がる宇宙の果て
第8章 最遠方天体で迫る宇宙の果て
第9章 宇宙の将来、宇宙論の将来

(更新日:2018年8月13日)

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