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ドラフト候補スラッガー、横浜・万波中正が万人から愛される理由

週刊ベースボールONLINE

つらい過去も明るく振り返る



横浜の四番・万波は苦境を乗り越え、甲子園の舞台に戻ってきた。1回戦突破を果たし、最後の夏はまだまだ続く

 ある意味で、高校球児を超越している。万波中正は何とも、応援したくなるキャラクターだ。1年夏から3年連続での甲子園。「大阪ライフ」における、最大のリラックス法はサウナだという。

「水風呂と交互に入るんです。6~7分を5セット。ほぼ毎日、通っています」

 最後の夏を前に、大きな挫折を味わっている。名門・横浜に入学以来、1年春の県大会から持ち前の打力で、出場機会に恵まれてきた。だが、2年秋以降の打撃不振により今年2月、メンバークラスが生活する学校内にある合宿所を出て、東京都内からの自宅通いに変わった。屈辱以外の何物でもなかったはずだ。

 サウナの話は続く。

「寮の近くにはなくて……。自宅近くの温泉、すごく良いですよ!! ぜひ、おすすめしたいです!!」

 甲子園初戦を控えた室内練習場での試合前取材で、取り囲む報道陣を勧誘してしまう“余裕”である。

 つらい過去でも、明るく振り返ることができるのは、相当のメンタルの持ち主だ。「お母さんのゴハンもおいしいですし、自分のベッドで寝られるのが良い」と、すべて前向きにとらえた。

 ふつうの精神状態ならば、へこんでもおかしくないが、万波は腐ることはなかった。もともと練習量はチームでもトップクラスだが、退寮して以降はより、前向きに取り組んで、不振脱出への糸口を探し求めた。そして、チームのために率先して動いた。

 当初、南神奈川大会の登録メンバー20人からも外れていたが、6月の練習試合(対松商学園)で2打席連続本塁打。あるスカウトは「1本目は左中間へライナーで一直線。140メートルは飛んでいたはず。あれだけの飛距離、投げては140キロ中盤。ものすごいポテンシャル」と驚愕した。この2発が一つの決め手となり、滑り込みで背番号「13」が与えられた。

 この特大弾できっかけをつかんだ万波は、南神奈川大会では四番として打率.542、2本塁打、12打点で甲子園出場に貢献している。

 覚醒した理由は「ボール球を振らなくなった。軸が安定し、ボールを強くたたける」と分析する。背番号は「13」から本来の「9」に戻ったが「意識はしていないです。ただ、責任感は増している」と、口元を引き締めた。

初戦は無安打も今後に期待


 真価が問われた愛産大三河との1回戦では4打数無安打。自身は結果を残すことができなかったが、試合後は「チームメートがやってくれて、勝てたことがうれしい」と初戦突破(7対0)をまず喜んだ。

「緊張してしまって、思うようにプレーできなかった」と苦笑い。これまでも不調でも、チームプレーに撤してきた背景があるだけに、2回戦以降に巻き返すチャンスは十分ある。

 横浜は20年前、松坂大輔(現中日)を擁した1998年夏(第80回記念大会)の甲子園を制し、史上5校目の春夏連覇を遂げている。10年前の第90回記念大会も4強進出と“節目”に強さを発揮する。

「記念大会では、諸先輩方が良い成績を残してきた。僕たちも良い流れに乗っていけたら。何かしらの意味があると思うので、あの代のように優勝できたらいい。松坂さんですか? 雲の上の存在です」

 体のサイズからも、ポテンシャルの高さを感じる。190センチ87キロで靴は30センチ。シューズを手に入れるのに苦労するかと思えば「結構、ギリギリであるんですよ。困っていないです」と報道陣を笑わせた。決して、リップサービスではなく、自然と出てくる言葉。それが、万波が万人から愛される理由である。

文=岡本朋祐 写真=田中慎一郎

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