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あなたを「生贄」にしようとする人から、どう逃れる?

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生贄探し(講談社)<amazonで購入>

 「あの人だけいい思いをするなんて許せない!」「幸せそうな人を見ると、モヤッとする!」「相手が得をすると損した気持ちになる!」……。こうした思考の傾向は、そもそも脳の特徴なのだという。

 脳科学者・中野信子さんと、漫画家で随筆家のヤマザキマリさんの共著『生贄探し――暴走する脳』(講談社+α新書)は、負の感情から自由になりたい人に読んでほしい「息苦しさへの処方箋」のような1冊。

 はじめに「多様性」と出てくる。

 「よく耳にするキラーフレーズ」でありながら、「これの何がそんなに大事なのか、多くの人には実感がないのでは」と中野さんは見ている。そうでなければ、異なる内面や異質な外見を持つ者を、執拗に排除しようと叩き続けることなどしないはずだと。

 「実に不思議です。個体ひとりひとりの考え方を聞けば、さほど良識がないとも思えないのに、集団になるとそれだけで凶暴になる。(中略)問答無用で異物を排除しようと、いつも生贄を探している」

「せめて次世代には、教訓を」

 「自粛警察」「コロナ差別」など、コロナ禍で他人を叩きたがる人が増えたと聞く。中野さんによると、この「異物を排除しようとする現象」は、どうも社会不安が高まるときに強くなるもののようだ。

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 パンデミックや自然災害が起こると必ず、移民、特別な仕事に従事する人、一般的ではない振る舞いをする人が、この現象の犠牲になってきたという。「21世紀になった今もなお、ヒトの本質は変わることはないのだと、ぞっとするような思いがします」。

 後世、このパンデミックが仮に「2020年のパンデミック」と呼ばれるとしたら、「せめて次世代には、教訓を残さなければ」と中野さん。

 「危機的な状況が起これば、少しでもはみ出した者から、生贄に捧げられてしまうのだよと。ヒトは放っておけばそういうことをしてしまう生き物なのだと。だからこそ、知性でそれを押しとどめる必要があるのだということを」

出過ぎた杭は打たれない

 本書のキャッチーなタイトルから、とっつきやすい印象を受けた。ただ、実際読んでみての印象は多少異なるかもしれない。脳科学、歴史、宗教などを絡めつつ、時代も国も横断的に書かれている。ややむずかしく感じるところもあったが、とにかくお2人の知識量に驚く。

■目次
 第1章 なぜ人は他人の目が怖いのか 中野信子
 第2章 対談 「あなたのため」という正義~皇帝ネロとその毒親
 第3章 対談 日本人の生贄探し~どんな人が標的になるのか
 第4章 対談 生の美意識の力~正義中毒から離れて自由になる
 第5章 想像してみてほしい ヤマザキマリ

 第1章では、興味深い脳の特徴が紹介されている。

 たとえば、自身を正義と信じているとき、どこまでも残虐になれてしまう。集団にとって都合の悪い個体を見つけ出し、排除する仕組みが備わっている。他人の不幸に、思わず喜びの感情が湧き上がってしまうなど。

 さらに、日本人は他国よりも顕著に「スパイト行動」(自分が損してでも他人をおとしめたいという嫌がらせ行動)をしてしまうという実験結果があるのだとか。日本人の親切さ、礼儀正しさ、真面目さ、協調性という性質は、「スパイト行動で自分が怖い目に遭わないための同調圧力に起因するものだとしたら」……。

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