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首振りDollsのニューアルバム『ドラマティカ』を立体的に表現した“個展ライヴ”

OKMusic

2021年3月17日。首振りDollsは待望のフルアルバム『ドラマティカ』をリリースした。フルアルバムは、2019年5月22日にリリースした『アリス』から1年10カ月ぶりである。

配信中心の音楽の聴かれ方が主流となり、CDのフィジカルリリースに対してだんだん重きを置かれなくった昨今。今作『ドラマティカ』は、サウンド面はもちろんのこと、そんな時代に逆行するかの様にとことんこだわりを貫いた仕様で作られた作品だった。そのこだわりを魅せる為に彼らが試みたのは、“個展ライヴ”という空間だった。

来たる5月15日に花やしき内にある花劇場にて『ドラマティカ』を引っさげたツアーファイナルを行う彼ら。きっとそこには、今回彼らが行なった“個展ライヴ”という空間から貰った様々な感性や感情が吐き出されることになることだろう。“初のホールでの単独公演は、一体どんな景色が描かれることになるのだろう?”と、今から楽しみでならない。

コロナによって不条理な規制が引かれる中、エンターテインメントの現場は日々振り回されながらも、そこに関わるアーティストや、裏方で支える人間1人1人が、なんとかこの世界を守り抜くことを考え、最善の方法を見つけ出していこうと“届け方”を変化させてきている。首振りDollsもエンターテイナーとして、そんな危機に直面している。彼らが拠点とする、音楽を届ける場所であるライヴハウスも同じく危機に面しており、都内でもいくつかのハコが惜しまれながら閉店していっているというのが現状だ。

そんな中で、“さすが!”と感じたのは、2021年の3月。マキシマム ザ ホルモンが、最新作『ESSENTIALS』を、CDショップでの発売に先駆け、ホルモンファンが働く飲食店を中心とした『腹ペコえこひいき加盟店』で特別先行販売を実施する企画を企てたことである。ライヴハウスと同じく、現在コロナ禍で大きな打撃を受けている飲食店に対して、なんとか力になれないかと考えられた素晴らしい企画。偶然とはいえ、ファンの名称が“腹ペコ”であったことも、今回の企画発案に繋がったのだろう。が、しかし、この発想、改めて流石である。実にマキシマム ザ ホルモンらしい破天荒な発案だと感じた。

本来ならば、アルバムリリースをキッカケにツアーを組み、全国をまわる流れ。年に50本程のライヴを組み暴れまくってきたライヴバンドである首振りDollsも、これまでならば8カ所から10カ所の都市に車を走らせ、創り上げたばかりの楽曲を生で届けに行っていたことだろう。しかし、世界を蝕むコロナという目に見えぬ怪物の猛威に阻まれ、その計画は断念された。

普段から様々な個展に足を運び、前作『アリス』同様に『ドラマティカ』のジャケットを描いてくれた漫画家のカネコアツシ氏との出逢いのキッカケを作った、感性の塊でもあるベースのショーン・ホラーショーが内に秘めていた“ポップアップショップ的なバンドの魅せ方”という場と、今作『ドラマティカ』を一緒に創り上げてくれた、ジャケットイラストを手掛けた漫画家のカネコアツシ氏と、今作のイメージ写真を手掛けた写真家の寫眞館GELATINと、ジャケットのデザインを手掛けたcali≠gariのギタリストであり、グラフィックデザイナーとしての顔を持つ桜井青の“表現の展示”という空間創りへの構想が融合し、バンド史上初となる“個展ライヴ”なるものを実現させたのである。

その期間は、4月1日〜4日 東京・中野spaceQ(3日4日アコースティックライヴ開催)と4月15日〜18日 大阪・紅鶴(17日18日アコースティックライヴ開催)。

聞きなれないこの“個展ライヴ”というワードに、各所から“個展なの?”“ライヴなの?”“どういうものなの?”という声が上がった。それは、首振りDollsが創り上げた『ドラマティカ』というアルバムを、それぞれのクリエイターが表現してくれた作品を展示した空間を個展という場に集め、その空間の中で『ドラマティカ』をアコースティックライヴで届けるというものだった。

3月のマンスリーインタビューでは、前作『アリス』同様に『ドラマティカ』のジャケットを描いてくれた漫画家のカネコアツシ氏との対談をお届けしたのだが、彼らは今作を『ドラマティカ』と名付けた瞬間に、“カネコさんに自分達が表現した『ドラマティカ』を描いてもらいたい!”という想いが一気に膨れ上がったのだ。そして、その場で彼らは、『ドラマティカ』を写真で表現してほしい写真家と、『ドラマティカ』をデザインしてほしいと願うグラフィックデザイナーを探し始めた。彼らが強く心を惹かれ、自分達の創り上げた『ドラマティカ』を、それぞれの目線で表現してもらいたい、と渇望したのは、写真家の寫眞館GELATINと、『アリス』のデザインも手掛けたcali≠gariのギタリストであり、グラフィックデザイナーとしての顔を持つ桜井青だった。

その想いこそが発端だった。バンド史上初。彼らは新たな可能性を掴む為に、自身初の試みでもあった“個展ライヴ”なるものを企てたのである。

寫眞館GELATINに連絡を入れたのは2020年の9月。彼らはこの打ち合わせの為に初めて寫眞館GELATINと対面した。そこで実際に見せてもらった作品がまとめられたブックを見て、彼らは完全に寫眞館GELATINの世界に魅了され、言葉を失っていた。

GELATIN自身からプレゼントされた図録を大切に胸に抱きしめていたナオ。“お願いします!”と改めての一言をGELATINに向けたジョニー、その作品の中にあったマリア像が映し出されていた1枚の写真からインスパイアされ、その先に控えていた先行配信シングル「SMILE」のジャケットのイメージを一気に膨らませたショーン。

“凄凄切切”をテーマに、非常に悲しげで、物寂しいさまが写し出されたブックに収められていた寫眞館GELATINの世界は圧巻だった。彼らは、2020年の11月3日から11月18日まで『Galley Niepce』で行われていた寫眞館GELATINの個展『凄凄切切』にメンバー全員で訪れたと言う。

そして11月。最初に行われたのは寫眞館GELATINとのセッションだった。セッションの場として選ばれたのは浅草花やしき。寫眞館GELATINがテーマとしている“凄凄切切”と、寫眞館GELATINがイメージする『ドラマティカ』という言葉の印象と、首振りDollsが生み出した『ドラマティカ』のイメージを擦り合わせていったところでロケ地として選ばれた場所だった。寫眞館GELATINは最初に“ドラマティカ”という言葉を聞いて“昔、賑わっていた場所だけど、今は寂れている場所”をイメージすると言った。その言葉は、まさに彼らが生み出したアルバム『ドラマティカ』に通ずる景色の一部だと感じた。
 
“いなたさ”が胸を掻き毟る破天荒なロックンロールを放つ首振りDollsが贈る、最高にドラマティックな最新作を初めて聴いたとき、メンバー全員の異色な個性が吐き出された、孤独と哀愁と深層心理との境界線だと感じた。

2020年、“コロナ禍”で奪われた日常の当たり前は、私たちの心から豊かさや優しさを奪った。そんな中で生み出された『ドラマティカ』は、聴いてくれる人達それぞれの人生というドラマに寄り添ってくれるに違いない。そう感じたのだ。

アルバムにも収録されている12月に先行配信シングルとしてリリースされた「散り散り」はドラムボーカルのナオの創った曲。首振りDollsの軸であるいなたさで孤独と寂しさが宿る“傷心ロック”は、まさしく首振りDollsというバンドを担う軸となる楽曲。先行配信シングル第一弾として生み出された、『ドラマティカ』のリード曲ともなったギターのジョニー・ダイアモンドが生み出した「サボテン」は、彼の人間性が溢れ出た幼気な切なさが落とし込まれた楽曲となり、才気煥発なベースのショーン・ホラーショーが生み出した12月先行配信シングルを締めくくった「SMILE」は、人間という生き物の中に潜む猟奇的心理がトリッキーな低音マジックで料理された首振りDollsの新たな可能性を秘めた最新作となった。アルバム『ドラマティカ』の背骨となっていった3作に共通していたのは“孤独”。3人が同じテーマで書こうと打ち合わせしたという訳でははい。楽曲の雰囲気も、歌詞の内容も全く違う3曲であるのに、“孤独”というところが共通していたという不思議。

私自身、GELATINとの話の中で、幼い頃から“一人じゃないけど一人”という感覚を持ち合わせていたという共通点があり、それについて深い話をしたこともあった。誰もが心の隅で感じているであろう孤独。笑いの溢れた場所や、光の当たる場所。哀しみで溢れた場所や、光の当たらない場所。表裏一体。そこにこそドラマはあるのかもしれない。コロナで光を失った場所にもドラマはあった。そんなことを全て繋げて考えていくと、『ドラマティカ』は“今、生まれるべくして生まれた”心のうねりなのかもしれないと感じさせられる。激しいだけじゃないロックが『ドラマティカ』にはある。言葉を選ばずに言うのなら、正直、“今どき”の流行りに乗ったテンポ感が収められた作品ではない。しかし、だからこそ“今、聴いてほしいロック”なのだ。

ナオは撮影前にGELATINに自身が感じる“ドラマティカ”のイメージを伝えた。

「私がドラマティカという言葉からイメージするのは、モノクロな世界が深い色に色付いていくような、甘美な世界観です。色着いたのに、色が深くてほぼ黒みたいな。イメージとしては赤ではなくボルドー、青ではなくネイビーと言ったような、ベルベットが似合う様な感じです。アルバムイメージ的には明るい曲もあってごった煮感が強いのですが、自分が書いた曲とのリンクを考えると惚れた腫れたの苦痛が伴う恋愛の曲が多いかなと思います。太陽の光が伴うとしても朝日ではなく夕景が浮かぶ感じです」

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そして11月。寫眞館GELATINとのセッションは行われた。セッションの場として選ばれたのは浅草花やしき。コロナで人けの少なかった花やしきは、どこか少し寂しげだった。偶然にも、撮影した日は、最初に立ち上がった頃は植物園だったと言う花やしきの植物達の面倒を中心となって見てきたという担当者が辞めてしまうのだという最後の日でもあった。園内を案内してくれた広報担当者が、初めて会う私にそんな話をしてくれたのも、必然だった気がしてならない。それもドラマ。出逢いがあれば、必ず別れがある。無理に抗うことはしたくない。きっとそれも必然だから。こうして原稿を書いている今、改めてそんな当たり前のことを感じている。

当日、寫眞館GELATINと3人は、カメラ越しにとても自然に向き合った。とても自然体だった。作り込まれた撮影ではなく、本当に共に過ごした時間を瞬間が流れの中で切り取られた感覚だった。途中、時折GELATINが彼らに見せていたカメラの画面を覗き込んでいた3人は、撮られるごとに寫眞館GELATINが描き出す“ドラマティカ”の世界に入り込んでいったのが分かった。それは、写し出された寂しげな写真とは裏腹に、とても和やかな空気の中での素敵なセッションだった。そこも本当にドラマ。個展の中でも体温を感じた寫眞館GELATINの写真は、そこで生まれたドラマを感じさせるものだった。

撮影をひとしきり終えたGELATINとメンバーは、GELATINに1曲ずつ曲を生み出していった流れとイメージを伝えていった。GELATINはその一語一句を受け取り、その後、被写体から3人を除き、GELATINがその言葉を感じる風景を撮影してくれたのである。個展にはそんな風景だけの写真も並んだ。彼ら3人を被写体とする写真と、彼らの言葉を受けてGELATINが撮った風景が敷き詰められた個展会場は、『ドラマティカ』という世界を立体的に感じさせる空間に、来場してくれたお客様を誘えていたように感じた。寂しいけど、ずっとそこに身を置いていたくなる様な、吸い込まれる感覚。そんな心地良さが漂う場所だった。

そこから不思議はさらに繋がっていった。寫眞館GELATINの撮影と並行してジャケットを描いてくれていたカネコアツシ。撮影を行った報告をしたとき、カネコはすでにジャケットのイラスト制作に着手しており、花やしきでの撮影という話を聞き、自身がパリに住んでいたとき、パリの街並みで見かけていたカルーセルを描いていたこともあり、撮影場所として遊園地を選んでいた偶然の一致に驚きを感じたと語っていた。しかし、このとき、カネコにはメインとなるカットをメリーゴーランドで撮ったとは告げていなかったのだ。

数日後、カネコから送られてきたカルーセルのイラストを受け取り、メンバーはその共通した感性に驚き、自分たちの想像以上だったカネコが描き上げた『ドラマティカ』の表現に感銘を受けていたのだが、カネコも後日その更なる偶然を知り、東京個展の現場に足を運んでくれた際に、その偶然を言葉にし、改めて感動していた。

そして、それを桜井青が、彼のイメージする『ドラマティカ』としてデザインしたのだ。桜井が選んだ写真の1番目立つデザインの中にメリーゴーランドの写真があった。その偶然にも驚きを隠せなかったのは、言うまでもない。アーティストでもある桜井のこだわりで選ばれた配置と色彩は、流石、桜井ならではの感性を感じさせる斬新な切り口だった。やはり、ギタリストであり、自らも楽曲を手がける表現者であることから、その独特な表現は他にない大胆さと繊細さを兼ね備えた才能を感じさせる。単なるデザインには宿らない作り手の想いも、そこにはハッキリと感じ取れたのが、とても印象的だった。

新しいアルバムのレコーディングが終わり、そこに向けて撮影される写真が撮影され、そこからデザインが行われる。アルバムが完成していく過程では至って普通の工程だ。しかし、自分達と向き合ってくれるクリエイターといつも以上に向き合い、“一緒に作品作りをした”という想いが強かった今作故に、彼らは、そこから打ち合わせの中で持ち上がった“個展ライヴ”という初の試みに挑むことにしたのだ。
 
個展という魅せ方で自分の作品を魅せる術を持っているGELATINに設営の総監修を依頼し、彼らはプレオープンが行われた初日、朝8時から会場入りして設営を行った。GELATINに指示を受けながらも、自分達に委ねられた構成で1枚1枚写真を敷き詰めていったナオとショーン。カネコアツシの描いたカルーセルを、原画のままの色合いで忠実にシルクスクリーンで印刷された布をパネルとして作成してしていったジョニー。最終的に、そこに彼らは【自らが想う“ドラマティカ”】をキャンバスに描いて納めた絵を置いたのだ。クリエイターと共に創り上げた、アルバム『ドラマティカ』の立体的な空間がそこに生まれた。

シンプルな長方形空間である東京のspaceQでの『ドラマティカ』は、一歩足を踏み入れた瞬間に、壁一面に貼り巡らされた写真達の世界に呑み込まれる様な錯覚に陥るほど圧巻の空間だった。ここには多くの首振りDollsファンはもちろん、カネコアツシや、カネコのファン、寫眞館GELATINの写真のファン達も多く集まり、『ドラマティカ』の楽曲が流れる中で、改めてそれをキッカケにクリエイターから吐き出された感性を楽しんでいた。

一方、昔、キャバレーであったという大阪の紅鶴は、シンプルな空間から一変し、場末感が首振りDollsというバンドに似合う極上の空間だ。しかし、箱自体が素晴らしい世界観を持っていることから、個性が強く、『ドラマティカ』の世界観がそこに負けてしまうのではないか、という懸念もあった。が、しかし、東京での個展を経験していた彼らは、寫眞館GELATINの感覚を即座に理解する能力が養われたのもあり、その独特な空間を、見事に『ドラマティカ』に染め替えたのだった。

13日の夜中に東京を出発して向かった大阪は、出発の数時間前に現地から“予告もなく、急遽休業要請が出て店を開けられなくなる可能性がある”という連絡が入る中、感染対策をいつも以上に強化する為の準備を機材車に詰め込み、強行突破で大阪へと車を走らせたのだ。大阪に首振りDollsが降り立つのは約1年ぶりとなるのだろうか。九州出身のバンドであるのに、大阪のバンドだと勘違いされる程、結成当初から大阪でよくライヴをしていたという彼ら故、彼らを待ちわびてくれているファン達が、個展会場のみだけでなく、アルバムのインストアイベントや大阪西心斎橋にあるライヴハウスBigtwin Diner SHOVELで行われた単独公演にも足を運んでくれていたのだった。久しぶりの遠征ライヴで感じ取ったオーディエンスの熱量と、久しぶりに会う大阪の仲間達との再会と景色は、彼らにとって、この先の首振りDollsが進むべき道の答えを映し出してくれた時間となったに違いない。

大阪での個展を全て終えた3人は、今までに感じたことのない手応えを感じたと語った。個展会場に足を運んで下さったお客様に、本人達が直接お声掛けし、撮影意図や撮影秘話などを話す機会を持てたことや、アルバム『ドラマティカ』の楽曲の歌詞に深く触れた質問を投げて下さったお客様とは、普段直接お話しすることなど皆無である歌詞の書き方などの話や、本人達も驚くほど深読みして聴いてくれていることを気付かされる貴重な意見にも触れることが出来たのだと言う。

展示した写真達を撤去した元の場所が、とても寂しく、空虚に感じたことにも一つのドラマを感じた今回。煌びやかな印象を放ちながらも、どこか退廃的でノスタルジックな空気感をも漂わせる『ドラマティカ』という造語から広がったことで生み出された世界と、様々な出逢いが、この先の首振りDollsをどのように変化させて行くことになるのだろう?

ファイナルが行われる5月15日。花やしき・花劇場での単独公演で広がる景色と彼らがそこで放つ熱量に期待したい。

オフィシャル写真撮影:寫眞館GELATIN
取材・文:武市尚子
個展会場写真撮影:DOLL RECORDS Co., Ltd.


アルバム『ドラマティカ』

2021年3月17日(水)発売

DOLLS-1/¥3,000(税込)
<収録曲>
1.Welcome to Strange Night 
2.散り散り 
3.バケネコ
4.サボテン
5.SMILE
6.ガタ
7.ミルキーウェイ
8.期待しないで
9.DISCOVERY
10.レッドドラゴン
11.誰そ彼

<クレジット>
ジャケット/漫画家・カネコアツシ
写真/写真家・寫眞館GELATIN
ブックレットデザイン/桜井青(cali≠gari)

■配信リンク
https://lnk.to/kubifuri_dramatica


【ライブ情報】

5月15日(土) 浅草花やしき花劇場(単独公演)

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