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夏物語【山中志歩】

ホンシェルジュ

登場人物の中に、自身もAIDで生まれてきて、本当の父親が分からず、育ての父親に虐待されてきた善百合子というキャラクターが登場します。善百合子は、「反出生主義」なんですね。「反出生主義」というのは、簡単に言えば「子どもを持つことに対して否定的な意見を持つ哲学的立場」です。「私は生まれてこないほうがよかった」や「苦しみのあるこの世界に子どもを産まないほうがいい」という思想です。さまざまな理由から子どもを持たない人生を志向する「チャイルドフリー」という考え方も反出生主義の一つだといわれています。私もそこまで勉強したわけではないので、ウィキペディアやネットの情報を書かせていただきました。

私は善百合子というキャラクターにものすごく惹かれました。

善百合子の言葉を引用すると、“親はみんなおなじことを言うの。赤ちゃんは可愛いから。育ててみたかったから。女としての体を使いきりたかったから。好きな相手の遺伝子を残したかったから。あとは、淋しいからだとか、老後をみてほしいからとかなんていうのもあるね。ぜんぶ根っこはおなじだもの。ねえ、子どもを生む人はさ、みんなほんとに自分のことしか考えないの。生まれてくる子どものことを考えないの。子どものことを考えて、子どもを生んだ親なんて、この世界にひとりもいないんだよ。ねえ、すごいことだと思わない?それで、たいていの親は、自分の子どもにだけは苦しい思いをさせないように、どんな不幸からも逃れられるように願うわけでしょう。でも、自分の子どもがぜったいに苦しまずにすむ唯一の方法っていうのは、その子を存在させないことなんじゃないの。生まれないでいさせてあげることなんじゃないの。”“その生まれてみなければわからないっていう賭けは、いったい誰のための賭けなの?”

この言葉が正しい正しくないっていうのは置いておいて、私は至極真っ当な意見だなと感じたんです。なるほどな、と。勿論、お子さんがいて幸せな家庭もあります。だけど、この言葉も一理あると思いました。善百合子の考え方を強要するわけではないです。しかし、一つの出来事を色んな方向から見るってことは大事だと思っていて、「子どもを生む」ということに対して、こういう考え方もあると知ってもらえたら嬉しいです。「夏物語」は人生におけるさまざまな選択肢の集合体のような作品です。夏子が、色んな意見を受け入れる人物だから、一つの物事に対して、読み手も立ち止まって考えさせられます。

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更新日:2021年4月30日

提供元:ホンシェルジュ

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