top_line

【 最新ニュースをアプリでサクサク読むなら! 】

農業に従事したい人にも! 大人のための学習図鑑で農業の最前線に触れてみよう

ダ・ヴィンチNEWS

『最新 日本の農業図鑑』(八木宏典:監修/ナツメ社)

 新型コロナウイルスによる緊急事態宣言などの影響で、延期に延期を重ねていた『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』が、3月にようやく公開された。初日のチケットは取れなかったものの、ネットでネタバレを目にする前に早めにと鑑賞してみたら、劇中で避難民が農作業をしている様子が出てきて、懐かしく思った。というのも、私が通っていた中学校の修学旅行が農家に寝泊まりをする農業体験で、田植えをしたときの、足が泥に沈み指の間を通り抜ける感触が蘇ったからだ。

「アルツハイマー病」治療薬の開発史に見る、創薬への挑戦

 あれから30有余年、農業に触れる機会は無く関心も薄れていたところへ思わぬ形で思い出し、『最新 日本の農業図鑑』(八木宏典:監修/ナツメ社)を手にしてみた。本書は図鑑を名乗るだけあってカラー写真が豊富なうえ、日本における農業の歴史から畜産業を含めた最新の情報までも網羅しており、学ぶ愉しさに溢れている内容の濃い一冊だ。

日本の食料事情を学ぶ

 よく「日本の食料自給率の低下」が問題になるが、食料自給率も大きく分けると「品目別自給率」と「総合食料自給率」があり、さらに後者は熱量で換算する「カロリーベース」と金額で換算する「生産額ベース」とに分かれる。カロリーベースでは2019年度が38%だから確かに低いと感じるものの、生産額ベースだと2019年度は66%となるので、どちらを語るかによって印象はガラリと変わる。

 もっとも、カロリーベースの場合、主食となる米は98%を達成しているのに対して、畜産物が15%とかなり厳しいのは確かだ。とはいえ畜産物を増やすには、飼料となるトウモロコシなどを増やさなければならず、国内の農地面積で実現するのは困難を極める。食料自給率を上げるというのは、人間の食べる作物を増やすだけでは駄目なわけで、本書では輸入が滞るような不測の事態に備えた「食料安全保障」を考え、「諸外国との良好な関係を維持」していく必要性を指摘している。

農業の始め方を学ぶ

広告の後にも続きます

 米や野菜などをつくる耕地(農地)面積は年々減り続けており、1961年をピークに2019年には約28%も減少している。それはなにも土地開発ばかりが原因ではなく、生産者の高齢化や労働力不足などによる「耕作放棄」が増えていることも関係し、作物の栽培が不可能な「荒廃農地」は拡大の一途だそうだ。

 しかし、新規に農業を始める個人や法人は微増しているらしく、本書には具体的な就農への道のりも載っている。それこそ技術を習得する専門学校のことや、営農計画の立て方、資金の借り入れに関するアドバイスなど、就職情報誌なみである。「就農地選び」のページでは、「場所を決めてから栽培作物を決めるか、栽培作物を決めてから場所を決めるか」と、地方ごとの土地に合った作物の例が一覧で出てきて感心させられた。

農業の最前線を学ぶ

 さてその農業だが、携帯電話がスマホになり、テレビの視聴からネットで動画を観たり自身が配信したり、といったように急速に時代が移り変わっていくのと同様、ロボットやAIなど最先端の技術を活用する「スマート農法」の実証実験が行なわれている。GPSを搭載した自動走行トラクターや、薬剤散布と育成診断を同時に行なう農業用ドローンの活躍や、気象データと農地データに市場データなど複数の情報を連携させて計画的な生産を実現するべく、企業が手を取り合って開発する様子は、子供の頃に読んだ未来の想像図の描かれた絵本を読んだときのようなワクワク感を抱かせてくれる。

 しかも農作物の流通はかつて「卸売市場法」によって地方自治体が独占していたが、2020年に施行された改正法により民間事業者の参入が可能になったという。漠然と日本の農業政策は遅れていると思っていたのは、単に自分が知らなかっただけのことらしい。

農薬の知識を学ぶ

 知らなかったことと言えば、特に驚いたのが農薬についてだ。農薬を使う目的は、虫に作物を食べられないようにするためと思い込んでいたが、虫が菌やウイルスなどを媒介して起こる被害を防ぐためでもあるとのこと。人間に直接感染はしなくても、作物を枯らしてしまうのだという。その農薬はといえば安全性検査を経た物だけが登録されており、これまでも3年ごとに再登録が必要だったうえ、2021年度からは最新の科学的知見に基づいた「再評価制度」も導入される。

 また、すでに安全性が明らかな物は「特定農薬」に指定されており、その中には重曹が含まれていた。重曹なんて日本薬局方に胃薬として収載されているし、料理にも用いられる物である。そして、それぞれの土地に生息している「天敵の昆虫」も同様に指定されているのだから、「農薬」という言葉ですべてを危険ととらえるのは、カビの生えた考え方なのかもしれないと反省させられた。さらに次世代の農薬として、生物由来の「生物農薬」の開発も進んでいるのだとか。

  • 1
  • 2

TOPICS

ランキング(読書)

ジャンル