「五条悟」「夏油傑」のフィギュア ©芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会

※本稿は『呪術廻戦』最新話までの内容を含みます。ネタバレにご注意ください。

■五条悟復活!?

(参考:【写真】「五条悟」「夏油傑」あのシーンをモチーフに立体化

 “史上最強の術師”との決戦が始まって以来、次々と衝撃的な展開が描かれている『呪術廻戦』。5月27日発売の『週刊少年ジャンプ』26号(集英社)に掲載された第261話「人外魔境新宿決戦(33)」では、五条悟が思いもよらない形で戦場に舞い戻ることになり、読者たちを驚愕させている。

  これまでの展開を振り返ると、まず五条は両面宿儺との死闘の果てに「世界を断つ斬撃」を浴び、致命傷を負わされていた。その肉体は憂憂の術式によって戦場から運び出されていたが、虎杖悠仁&東堂葵が宿儺と戦っている最中、突如“亡霊”として帰還。その正体は、五条の肉体を受け継いだ乙骨憂太だった。

  乙骨は羂索を取り込むことで「肉体を渡る術式」をコピーしていたらしく、羂索が夏油傑の肉体を乗っ取ったように、五条の死体に自身の意識を移したようだ。今回描かれた回想シーンによると、乙骨は決戦が始まる前から、この作戦を実行することを決めていたという。そこでほかのキャラクターたちは、死者の肉体を乗っ取るという案を“人間性に欠ける”として反対していたが、乙骨はむしろ人間性を捨てて怪物になるべきだという決断を示していた。

  その一方で今回のエピソードでは、もう1人重要な決断を示したキャラクターがいた。ほかでもない五条その人だ。

  五条が獄門疆から解放されてから宿儺と戦うまでにおよそ1カ月の猶予が存在したが、そのあいだに呪術界のトップである「呪術総監部」が全滅していることが描かれていた。その犯人はこれまで暗示的に示されるのみだったが、今回で五条の犯行だったことが確定した。

  五条は学生時代の出来事から、自分が夏油に「置いていかれた」という感覚を抱いていたようだ。その意識が胸の奥にくすぶっていたからこそ、あらためて強い決意のもとで呪術総監部を抹殺し、“怪物”になったことが描かれている。その姿は、自身の大義を貫くために両親までをも手にかけた夏油とも重なるところがあるだろう。

  なお呪術総監部の抹殺を行う際の五条は、今後は呪術高専京都校の学長・楽巌寺嘉伸がトップに立ち、「渋谷事変」後のような混乱がなくなるという展望を語っていた。その行動はある意味人間性を捨てるものだったが、あくまで自分の教え子たちが救われてほしいという祈りに突き動かされたものだったように見える。

  かつての五条は、呪術界の「上の連中」を力ずくで一掃するのではなく、教育によって「強く聡い仲間」を育てるという方針で未来のことを考えていた。今回の行動は、明らかにその方針と食い違っている。

  しかし実際には、むしろ仲間たちが十分に育っているからこそ、五条は呪術界のリセットを決断できたのかもしれない。すなわち五条の目的意識は一貫して変わっておらず、最期まで“教師として”生き抜いた……という風に考えられるのではないだろうか。

五条悟が“教師としての顔”を捨てた理由は?

  五条といえば、宿儺に致命傷を負わされた際、走馬灯のような空港シーンにおいて、不可解な姿を見せていたことが印象深い。あの世行きがすでに決まっている口ぶりで、夏油を始めとする死者たちと言葉を交わしたのだが、自身の死後に残された教え子たちのことをほとんど考えていなかったのだ。

  この時の五条は宿儺という絶対的な強者との戦いにほぼ満足し、「悔いのない死」を受け入れていた。しかも七海建人によって、最初から何かを守るためではなく、あくまで自分を満足させるために呪術を使ってきたことを看破されている。これまで作中で描かれてきた“教師としての五条悟”とは、あまりにもかけ離れた姿だと言えるだろう。そのため当時読者のあいだでは、激しい議論が巻き起こることになった。

  だが、最新話である第261話で明かされた描写を見ると、五条の最期に矛盾は存在しなかったようにも思えてくる。教え子たちが未来の呪術界で生きやすくなるよう、呪術総監部を抹殺した“空白の1カ月”の時点で、すでに教師としての役割をほぼ終えていた……という風に考えられるからだ。

  はっきりとは描かれていないものの、1カ月のあいだには呪術界のリセットだけでなく、憂憂の術式を使った修行に協力して教え子を鍛える時間があったとも想像できる。なにより、乙骨が五条の肉体を受け継ぐというプランが存在することは、1つの大きな安心材料だったはず。もし自分が宿儺に倒されたとしても、強く聡い仲間たちが世界を救ってくれると信じていたからこそ、五条は満足げに空港から旅立ったのではないだろうか。

  そんな五条の信頼を背負いつつ、新たな“怪物”へと変貌を遂げた乙骨。人間性を捨てた術師たちが集結する場となりつつある新宿だが、この戦いはどのような結末へと向かうのだろうか。今後の展開にも注目していきたい。

 

©芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会

(文=キットゥン希美)