当時のスクウェアから発売された、スーパーファミコン用ソフト『ロマンシング サ・ガ3』(マグミクス編集部撮影)

【画像】え、びっくりした! これがスーファミで「歌」が流れて驚いたタイトル画面です(4枚)

初期と後期で何倍も差があったスーファミのカセット容量

 2024年11月で生誕34周年を迎える家庭用ゲーム機「スーパーファミコン」(以下、SFC)。そのROMカセットは規格化されたデザインということもあり、ラベル部分以外はほぼ同じものに見えます。しかしふたを開けてみると、同じSFC用ソフトのROMカセットでも、「容量」はそれぞれかなり違っていました。

 SFCの発売と同時に流通し始めた一般的なROMカセットは、4Mbit(メガビット)から8Mbitほどの容量を有していました。同ハードのローンチタイトルだった『スーパーマリオワールド』や『F-ZERO』のROM容量も4Mbitで、これを現在ゲームデータのダウンロード時などに目にする機会が多いGB(ギガバイト)単位へ換算すると、わずか0.0005GB程度になります。

 Nintendo Switch向けに展開しているゲーム作品でも、平均して5GBから10GB。『ファイナルファンタジーXVI』(ダウンロード版)などの大作RPGであれば、容量は約91GBにも上ります。現行のゲーム作品と比べると、SFC作品のサイズ感が何となく見えてくるのではないでしょうか。

 ところが1990年代の半ばに差し掛かると、当時では異様とも取れる大容量ROMカセットが市場に現れ始めました。例えば1995年11月11日にスクウェア(現:スクウェア・エニックス)が送り出した『ロマンシング サ・ガ3』(以下、ロマサガ3)は、32Mbitのデータ容量を誇るRPG作品で、ほかにも『スーパードンキーコング』や『聖剣伝説3』など、さまざまなジャンルでそれなりのデータ容量を持つSFCソフトが市場に出回りました。

 そうした状況下において、1995年から1996年にかけて「SFC最大級」のデータ容量を有するRPG作品が開発されます。『テイルズ オブ ファンタジア』(以下、テイルズ)と『スターオーシャン』はその代表例ともいえる2作です。

 ナムコ(現:バンダイナムコエンターテインメント)から1995年12月15日に登場した『テイルズ』では、プレイヤーは主人公の剣士「クレス・アルベイン」を操り、世界に災いをもたらす魔王「ダオス」を倒すべく、過去と未来のふたつの時間軸で奔走することになります。RPGでありながらも、サイドビュー形式で繰り広げられるアクション要素の強い戦闘システム「リニアモーションバトル」が特徴的な一作です。

 一方の『スターオーシャン』は、1996年7月19日にエニックス(現:スクウェア・エニックス)より発売されました。物語の舞台となるのは西暦2432年の未開惑星ローク。満ち足りながらも刺激に乏しい毎日に退屈していた青年「ラティクス・ファーレンス」は、原因不明の石化病が故郷にまん延したことで状況が一変。宇宙をまたにかけた旅へ出発することになり、運命の歯車が動き出します。

 両作品とも容量は「48Mbit」と、SFCの後期に登場した作品群を上回る大作となっています。その理由として考えられるのが、演出面で多用される大量のグラフィック素材やサウンドデータの数々でした。

『テイルズ』と『スターオーシャン』に限った話ではないものの、ストーリーの描写に重きを置くRPGでは、イベントシーンも数多く挿入されます。やや端的な話になりますが、グラフィックを描き込めば描き込むほど、格納時のデータ容量も増えていく計算です。特に上記2作品は声優陣によるキャラクターボイスも収録されており、戦闘中のアクションに合わせて各キャラが発声する仕様になっていました。

 また、『テイルズ』はオープニングシーンで主題歌「夢は終わらない~こぼれ落ちる時の雫~」(歌:吉田由香里)が流れるなど、演出にとにかく力を入れていることが販促CMなどでも語られていました。



Nintendo Switch用ソフト『STAR OCEAN -First Departure R-』(スクウェア・エニックス) (C)1998, 2023 SQUARE ENIX Original version developed by tri-Ace Inc.

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「大容量カセット」の価格はやはり高かったのか?

 ハドソン(当時)が1995年12月22日に生み出したRPG作品『天外魔境ZERO』もまた、ROMカセットの容量面では少し小さいものの、「圧縮」という点で際立った特徴を備えています。

 和の世界観を持つ架空の国「ジパング」を舞台とした「天外魔境」シリーズ唯一のSFC向けタイトルとなった同作品には、ゲームデータを圧縮するための特殊チップが搭載されていました。このチップの働きにより、40Mbit相当のROMカセットのなかへ72Mbitものゲームデータを格納することができたのです。単純な数値で比べると、『テイルズ』や『スターオーシャン』よりもデータ容量は大きいことがうかがえます。

『天外魔境ZERO』は豊富に盛り込まれた演出面にくわえ、「パーソナルライブゲームシステム」と呼ばれる独自要素を押し出していました。これは「ROMカセットに内蔵された時計とカレンダーにより、ゲーム内のさまざまなイベントと現実の時間軸がリンクする」というシステムです。特定の曜日にのみ開かれるショップをはじめ、ゲーム内の神社で開催されるお祭り、プレイヤーの誕生日を祝う機能など、従来のシリーズ作品では見られなかった画期的な試みだったといえるでしょう。

 ところで、SFCのROMカセットは、全体的には価格が高めに設定されていました。現在のNintendo Swichの新作ソフトがおおよそ4000円から7000円程度の価格帯で発売されているのに対して、SFCのカセットの多くは8000円から9000円程度のものが多く、なかには1万円を超えるものも少なくありませんでした。

 では、前述の「大容量カセット」は価格も高い傾向だったのかというと、一概にそうとはいえません。32Mbitの『ロマサガ3』は1万1400円と高価ですが、48Mbitの『テイルズ』は8800円、同じ48Mbitの『スターオーシャン』は8500円、72Mbit相当のバケモノカセットである『天外魔境ZERO』は9980円で発売されており、24Mbitの『ファイナルファンタジーVI』(1万1400円)、24Mbitの『かまいたちの夜』(1万800円)などと比べても、飛び抜けて高額というわけではありません。(価格はいずれも税抜き)

 大きなデータ容量の割に価格は抑えられていますが、ハードの限界を超えた演出やゲームシステムに挑んだ開発者の努力、そして創意工夫が生み出した価値はふんだんに詰め込まれていたといえるでしょう。