©芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会

※本稿は『呪術廻戦』最新話までの内容を含みます。ネタバレにご注意ください。

    さまざまなマンガやアニメの表現を積極的にオマージュする作風で知られている『呪術廻戦』。2月5日発売の『週刊少年ジャンプ』10号に掲載された第249話「人外魔境新宿決戦(21)」では、TYPE-MOONによる名作ビジュアルノベル『Fate/stay night』を髣髴とさせるような描写が飛び出したことが話題を呼んでいた。

(参考:【画像】大迫力のフィギュアを様々な角度から

  同エピソードでは、乙骨憂太が自身の領域展開「真贋相愛」(しんがんそうあい)を初めて発動。見開きページで描写されたその領域には、まるで廃墟のような殺風景な場所が広がっており、何百本という数の日本刀が所狭しと突き刺さっていた。

  なお領域には必中術式が付与されているほか、乙骨の能力である「術式模倣(コピー)」が無制限に発動するという効果もあり、きわめて強力なものだと思われる。だがSNS上をより騒がせたのはそうした性能の話ではなく、『Fate』シリーズでお馴染みとなっている「無限の剣製」(アンリミテッドブレイドワークス)との類似性だった。

 『Fate』シリーズには、世界を自分の心象風景に書き換える固有結界という魔術が存在しており、そのうちの1つが「無限の剣製」だった。たとえば『Fate/stay night』ではサーヴァントのアーチャーが「無限の剣製」を展開する場面があり、「I am the bone of my sword.(──体は剣で出来ている)」から始まる詠唱でもよく知られている。

 「無限の剣製」が発動された際には、殺伐とした荒野に大量の剣が突き刺さっている光景が広がる。そして固有結界の性能として、発動者が一度目にしたことがある武具を“複製”できるという設定となっているのだが、いずれも今回『呪術廻戦』で登場した「真贋相愛」にかなり近い。

  さらにいえば「真贋」というネーミングからして、オリジナルと偽物(贋作)という対立概念が大きなテーマとなっている『Fate/stay night』の物語を強く意識したもののようにも思われる。

  ちなみに数話前の『呪術廻戦』では、両面宿儺が「ついてこれるか」というセリフを放つ場面があったが、これはおそらく『Fate/stay night』のアーチャーによる名ゼリフ「ついて来れるか」をオマージュしたものだろう。というのも宿儺とアーチャーは、どちらもアニメ版で声優・諏訪部順一が演じているキャラクターだからだ。「無限の剣製」のオマージュへとつながる布石として、遊び心で“声優ネタ”を忍ばせていたのではないだろうか。

  実際に『呪術廻戦』作者の芥見下々は、公式ファンブックのQ&Aにて、“設定の作り方”という面で『Fate』シリーズの生みの親・奈須きのこに影響を受けたことを語っていた。またキャラクターとしてはギルガメッシュが一番気に入っているらしく、アニメ『Fate/Zero』にも影響を受けたという。

影響を与えたのは『呪術廻戦』だけではなく……

  思えば『呪術廻戦』には、『Fate』シリーズを思わせるような設定がいくつか登場していた。たとえば他者を「凡夫」と呼んで見下す“呪いの王”宿儺は、他の英霊を「雑種」として歯牙にもかけない人類最古の英雄王・ギルガメッシュに近いところがあると言えるだろう。

  また両作にはいずれも「御三家」の設定があり、激しいエリート主義と男尊女卑を特徴とする名門家系という意味で、『呪術廻戦』の禪院家と『Fate』シリーズの間桐家には近しいものを感じざるを得ない。

  こうしてまとめると、ますます芥見が“奈須きのこフォロワー”の1人であることを実感できるのではないだろうか。しかし実は現在の『週刊少年ジャンプ』連載作品には、他にも『Fate』シリーズの影響を感じさせる作品がある。2023年5月から連載が始まった川江康太の『鵺の陰陽師』だ。

  同作は平凡な高校生・夜島学郎が、学園に住み着く幻妖・鵺と出会ったことから始まる学園伝奇ファンタジー。夜島は『Fate/stay night』の衛宮士郎と同じく、強い自己犠牲の精神をもつ少年で、鵺と出会うシーンは衛宮とセイバーの邂逅に近い構図で描かれていた。『Fate』シリーズに頻出する通称“運命構図”となっていたのだ。

  ほかにもヒロインの1人、藤乃代葉をめぐる設定が間桐桜を思わせる部分があるなど、『Fate』シリーズのファンの心に深く“刺さる”作品となっている。

 『Fate』シリーズは約20年前から今に至るまで、さまざまな媒体でメガヒットを記録しているコンテンツ。『週刊少年ジャンプ』にその影響力が流れ込んでいたとしても、決しておかしくはないだろう。『呪術廻戦』に『鵺の陰陽師』、少年マンガ界隈に吹き荒れる現代伝奇ブームの勢いはまだまだ止まりそうにない。

(文=キットゥン希美)