「仮面ライダー 昭和 vol.4 仮面ライダーX」(講談社編、2016年、講談社)

【でけぇ! やべぇ!】目が光ります こちらが立体化された「ライダー」シリーズ初の敵巨大ロボ「キングダーク」です

新機軸を盛り込んだ意欲作の『仮面ライダーX』

 本日2月16日は、1974年に『仮面ライダーX』が放送開始した日です。今年で50年の時が流れました。「仮面ライダー」シリーズ第3作であり、1作目は2年間、2作目『V3』は1年間の放送でしたが、本作は8か月間で終了となりました。なぜ1年間放送とならなかったのでしょうか、その理由について振り返ってみましょう。

 本作は企画段階において、それまでにない新しいタイプの「仮面ライダー」を模索していました。石ノ森(当時「石森」)章太郎先生の原案デザインには、「ライフルを持ったカミキリムシ型の仮面ライダー」というものもあったそうです。もしもこのデザインのまま進んでいれば、いわゆる「昭和ライダー」は素手で戦うというイメージにはならなかったかもしれません。

 このアイディアが二転三転し、「5号」となることからローマ数字の「V」をモチーフにしたデザインが取り入れられます。しかしVは前作『仮面ライダーV3』とかぶることから、Vをふたつにした「X」となりました。主題歌の「額に輝くVとV」はこれを意味します。

 こうして本作の主人公、「Xライダー」こと「仮面ライダーX」が誕生しました。そして手持ちの武器は銃ではなく、剣や棒となる多目的武器「ライドル」となります。このライドルがXライダーに個性を与えることになりました。

 Xライダーはそれまでの昆虫モチーフのライダーではなく、「カイゾーグ」と呼ばれる深海開発用改造人間、いわば「メカニックライダー」というべき存在です。ボディに自然を意味する「緑色」が使われていない初めての「仮面ライダー」でした。

 このほかにも、変身ポーズによる従来の「変身」から、「セタップ」(セットアップからの造語)と呼ばれる変身方法となります。この際に「レッドアイザー」と「パーフェクター」を装着するさまが描かれ、メカニカルなプロセスで変身していることをアピールしました。

 従来と変わったのは主人公だけではありません。敵である悪の組織もこれまでにないものとなりました。それが、対立する大国同士が水面下で手を握り、日本消滅をたくらむ秘密結社「GOD」です。今までの世界征服を目的とした組織とは一線を画する存在でした。

 このためからかスパイ的な要素が増え、上層部からの指令はテープレコーダーによって行われ、伝達が終わると消滅して証拠を消すというものになります。さらに、これまでの組織の実働部隊は「戦闘員」でしたが、GODでは「戦闘工作員」と呼ばれていました。

 作戦の中心になる怪人も、従来の動植物の能力を持ったタイプから、ギリシア神話に登場する怪物や英雄、神などの力を持った通称「神話怪人」となります。筆者と同世代である当時の子供たちの多くは、この神話怪人でギリシア神話に興味を持ったことでしょう。

 ちなみに初期の企画段階では、もうひとつのタイプの怪人も登場予定にありました。それには「発生地名によって形態能力を持つタイプ」とあり、予定には「アルプスキッド」「デスガンジス」「サタンドセーヌ」といった怪人の名前があります。あえて名付けるなら「地名怪人」といったところでしょうか。

 これらの怪人は、世界中から日本が狙われているという雰囲気を出すにはよかったのかもしれません。作品後半に出てくる悪人軍団も、こういったアイディアを経由して誕生したのでしょう。

 こうして新機軸をいくつか導入した本作ですが、思いもよらない苦難の道を歩むことになるのでした。



「Xライダー」と水中もイケる超高性能バイク「クルーザー」を立体化、BANDAI SPIRITS「S.H.Figuarts 仮面ライダーX&クルーザー セット」 (C)石森プロ・東映

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『Xライダー』を短命に終わらせた原因「腸捻転」とは?

 前述した設定のほかにも、主人公である「神敬介」の人間でなくなった悲しみ、恋人だった「水城涼子」の裏切り、その涼子と瓜ふたつの顔を持った「水城霧子」の謎といったドラマ部分で、本作の序盤は、それまでのシリーズよりも上の年齢層を意識した作りになっていました。

 しかしこれらの要素は、子供にはわかりづらいとのことから早々に切り上げられます。代わりに登場したのが、GOD秘密警察 第一室長「アポロガイスト」でした。このアポロガイストは、これまでのシリーズの敵幹部とは異なり、人間の姿から戦闘形態に変身する存在で、Xライダーのライバルとして人気を博します。

 子供たちの人気は低くはなかったのですが、シリーズとしては4年目です。一説には、子供は3年周期で入れ替わるといわれていますから、そういう点で番組は苦戦していました。視聴率も物語序盤をピークに、徐々に下がっていったそうです。

 これには、放送から1年を超えてますます子供たちの人気を集めたロボットアニメ『マジンガーZ』の存在が大きく影響していました。この2作品を看板としていた雑誌『テレビマガジン』での扱いを見れば、一目瞭然かもしれません。

 このころから、それまで盤石だった『仮面ライダー』を中心とする「変身ヒーローもの」は陰りを見せ始め、子供たちの興味は『マジンガーZ』以降の「ロボットアニメもの」へと移っていきました。

 実際、子供たちの人気のバロメーターともいえる「東映まんがまつり」では、この年の『五人ライダー対キングダーク』を最後に、「ライダー」の新作映画は一度ストップします。入れ替わりにメインとなったのが、「マジンガー」シリーズの劇場用新作でした。

 こういった事情と、本作が35話で終了したことから、「人気がなかった」というレッテル付けをする人がまれに見られます。しかし、そうではありません。本作が35話で終わったことには、別の大きな事情がありました。

 それが、いわゆる「腸捻転」と呼ばれた、TVの全国ネットであるTBS系列とNET(現在のテレビ朝日)系列の、大阪におけるねじれ現象です。当時、大阪のテレビ局は、TBS系列の朝日放送(ABC)、NET系列の毎日放送(MBS)という、現在とは逆の状態でした。そして本作を含む当時の「仮面ライダー」シリーズは、製作局は毎日放送であり、関東ではNETで放送されていました。

 このねじれを解消することとなり、1975年4月から「仮面ライダー」シリーズは、関東ではTBSで放送されることが決まります。ここで放送本数の問題が起きました。仮に『仮面ライダーX』を3月まで放送するとしたら59本になり、1年を超える本数となります。

 この延長を考慮して、さまざまなアイディアが出ましたが、延長は番組的には大きな労力となるため苦渋の決断を取ることとなりました。それが本作を9月に終了し、続く番組は3月までの半年で終了することです。

 こうして人気があったにも関わらず、本作は無念の終了となりました。そして続くシリーズ第4作『仮面ライダーアマゾン』は、生まれながらにして半年の短命で終わる宿命となります。しかも急な番組制作が影響したのか、放送が10月1週には間に合わず、さらに短命な全24話という「ライダーシリーズ」のTV作品でもっとも少ない話数となりました。

 もしも「仮面ライダー」シリーズが局をまたいで同じ番組を放送できれば、こんなことにはならなかったでしょう。そうであったなら歴史は大きく変わっていたかもしれません。そういう意味で本作は、TV局という大きなうねりに翻弄された作品といえるでしょう。