2月5日に発売された『週刊少年ジャンプ』10号(集英社)にて、とある連載作品が完結を迎えた。暗号バトルと世界平和をテーマとした異色の少年マンガ『暗号学園のいろは』だ。物語が大きな盛り上がりを見せる矢先の出来事だったため、ファンのあいだでは完結を惜しむ声が上がっている。

 同作は『化物語』などの〈物語〉シリーズ、『クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い』などの戯言シリーズでヒットを飛ばしてきた人気小説家・西尾維新が原作を手掛ける作品。『週刊少年ジャンプ』での連載としては、TVアニメ化もされた『めだかボックス』以来の新作ということで、多方面から注目が集まっていた。

  作品の舞台となっているのは、世界大戦に備えて少女たちが暗号解読の技法を叩き込まれる軍人学校「暗号学園」。主人公・いろは坂いろはの前に次から次へと困難が降りかかってくる……という学園ミステリーだ。

  スリルあふれるどんでん返しや西尾ならではの言葉遊び、作画を手掛ける岩崎優次の圧倒的な画力など、見どころを挙げればきりがないが、多くの読者を虜にしているのはやはりキャラクターの魅力だろう。

  それぞれに胸やけするほどに“濃い”設定が与えられており、強烈な口癖や衝撃のバックボーンが存在。いろはを含む1年A組のクラスメイトのほぼ全員にお気に入りのバウムクーヘン、「マイバウム」が設定されているという遊び心などでも楽しませてくれた。

  とりわけ中盤以降で人気が爆発したのが、夕方多夕と匿名希望という2人のキャラクターだ。一方の夕方多夕は人呼んで「心傷(トラウマ)製造機」。対戦した相手が次々と心をへし折られていく作中屈指の実力者で、クールかつスタイリッシュな言動も相まって“夢女子”界隈でも熱狂的な支持を集めることとなった。そして匿名希望は暗号バトルのルールにもマンガのお約束にも囚われない、まさしく「何でもあり」の型破りなキャラクターで、そこに上乗せされた“学園イチの美少女”という設定が言い知れない魅力を醸し出していた。

奇跡の復活を願うファンたちが多数

  夕方多夕はいかにも“西尾ワールド”全開のキャラクター造形で、意外な伏兵が実は最強だった……というパターンは〈物語〉シリーズや戯言シリーズ、『刀語』などで幾度も変奏されてきた。また匿名希望の立ち位置に関しては、『めだかボックス』の人気を決定づけたジョーカー的存在・球磨川禊を髣髴とさせるところがある。

  この2人が本格的に活躍し始めた『暗号学園のいろは』の中盤以降は、まさに西尾維新の真骨頂。“暗号”という一見とっつきにくい題材から始まった同作が、ようやく軌道に乗った形だった。SNS上でファンたちが大きな盛り上がりを見せたり、『週刊少年ジャンプ』誌上の掲載順が浮上したりしたのも、こうした時期のことだ。

  今でもSNSでは多数のファンアートが生み出されているのだが、そんな矢先に連載が完結を迎えたことで、やはりショックを受ける人は少なくない。『少年ジャンプ+』などで続編が掲載されることを望む声も多数上がっている。

  実際に同作のストーリーが、大いに“余白”を残したまま終了を迎えたことは否定できないだろう。ただ、その幕引きは実に美しいものではあった。

  同作の「暗号」はたんなる知恵比べの手段ではなく、戦争と不可分に存在するものであり、物語を通して「世界中の戦争を停める」という絵空事のように思えるテーマが掘り下げられてきた。最終章となった「暗号学園メタバース編」、そしてその後のエピローグでは、このテーマに対するどこまでも誠実な結末が用意されていたため、美しい終わり方だったと言うこともできるはずだ。

  なお同作の単行本6巻は3月、最終7巻は5月に発売される予定とのこと。まるで『めだかボックス』の「十巻以上続くコミックスは惰性」という名ゼリフを有言実行したような物語のボリュームだ。とはいえアレコレ理屈をこねたところで、実際には“惰性でもいいから続編が読みたい”というのが、ファンたちの正直な気持ちかもしれない…。