■ヤンマガが原稿料を提示

 講談社が発行する青年漫画雑誌「週刊ヤングマガジン」が新連載・初掲載された場合の原稿料や連載に関する流れなどを同誌に掲載したことが話題となった。原稿料はモノクロ1ページあたりで1万4300円以上、カラーページでは1ページあたり2万8800円以上(いずれも税込)という。

(参考:漫画家・大塚志郎さんによる『漫画のアシスタントで常に不足している人材の話』を読む

  また、Webコミック配信サイト「ヤンマガWeb」や「月刊ヤングマガジン」、「コミックDAYS」などの原稿料も公開。モノクロ1ページあたりで1万3200円以上、カラーページでは1ページあたり2万6400円以上(いずれも税込)という。また、ヤングマガジン編集部は新連載の実績を主張している。2022年には60作品以上の連載が始まったとのことで、即戦力であればすぐに連載を開始できる旨を強調している。

  原稿料を提示する流れが出版界で起こっている。2023年11月1日、集英社が「週刊少年ジャンプ」の原稿料を公開した。連載もしくは読切掲載の場合、モノクロであればページ単価1万8700円以上、カラーなら2万8050円以上となるという。これは「週刊少年ジャンプ」で読切掲載もしくは連載を希望する“他誌連載経験がある作家”に向けた説明・相談会に向けたもので、話題を集めた。

■漫画家はどう見ているのか

 これまで不透明だった原稿料が相次いで提示されている現状について、現役の漫画家はどう見ているのか。中堅出版社で漫画を描いている漫画家は、このように話す。

 「原稿料を見て衝撃を受けました。大手はさすが高いなと。私の場合、1ページ8000円程度ですからね。でも、ヤンマガやジャンプは高いように思えるけれど、それでは足りないんじゃないかな。漫画家は原稿料以外にもアシスタント代がかかります。あまり知られていないと思いますが、アシスタント代は原稿料の中から漫画家が負担するんですよ。特にヤンマガは作画密度の高い作品が多く、この原稿料でも足りない漫画家が多いのでは」

  漫画家は立場によって収入の差が極端の大きい。そのため、この漫画家は「あくまでも自分の例であり、他の漫画家さんに一様に当てはまるわけではない」と念を置きつつ、こうも続ける。

 「アシスタント代や光熱費などを払うと、原稿料だけでは赤字かトントンになってしまうのが連載作家。それを単行本の印税で補填するのが、従来のスタイルです。正直、私としては原稿料よりも単行本の印刷部数の方が大事です。電子書籍だと売れた分しか入りませんが、紙なら印刷された分が入るので、新人や中堅にはその方がありがたい。でも、最近では大手でも初版部数が抑えられていると聞きます。原稿料を上げるよりも単行本の販売を強化し、部数を上げてくれた方が私は嬉しいのですが……」

■出版社の思惑も様々

 漫画家の思いは様々だが、出版社が今までになかった動きを見せるのは、原稿料を開示することで、幅広く漫画家を募ろうという狙いがあるのだろう。また、優秀な漫画家の獲得競争が激化している点も背景にあると思われる。近年の縦読み漫画の普及で、出版社以外の業界も漫画制作に参入してきている。

 ある出版社の編集者は「即戦力となる画力を持つ漫画家は今すぐにでも欲しい」と発言していたが、メディアミックスの競争も激化しており、ヒットを出せる人材の奪い合いが水面下で起こっていると思われる。また、先の漫画家は、「ネットなど様々な手段で作品を発表する場が増えており、出版社が焦りを感じているのではないか」と分析する。

 「自分の周りでも、敢えて商業誌で発表しない漫画家が増えています。これも原稿料をわざわざ提示する大きな理由では。ネットで発信したり同人誌を制作する方が、遥かに利益が得られると考える漫画家は少なくありませんし、『編集者と厳しいやり取りをする商業誌には行くメリットがない。自分のペースで描く方がいい』と考える漫画家もいます」

 いずれにせよ、具体的な原稿料の提示は、商業誌での連載を目指す新人にとっては魅力的であることは間違いないだろう。出版業界あるあるだが、原稿料を事前に示さずに後から一方的に振り込むパターンが未だに多いため、あらかじめ金額を示された方が精神的な負担も軽減されるし、創作に集中しやすくなるのは言うまでもないからだ。

 漫画家の労働環境のほか、出版社との間の契約が騒動となるなど、様々な議論が巻き起こっている漫画界。原稿料公開の流れも、一種の働き方改革の一環といえるかもしれない。他の出版社にも波及するか、注目が集まっている。

(文=元城健)