青山吉能さん演じる後藤ひとりが描かれた『ぼっち・ざ・ろっく! 1』DVD(アニプレックス)

【画像】えっ、代役だったの? これが「違和感なさすぎ」と注目された声優交代キャラです(5枚)

これが「無加工」だって信じられる?

 声優の仕事は、アニメのキャラクターなどに命を宿すこと……だけではありません。ときには巨人の咆哮や電子音のような悲鳴、モンスターの鳴き声など、人間の声とは思えない音を発することで、アニメファンたちを騒然とさせてきました。今回は、加工・代役なしで「意外な演技」を披露した声優たちを振り返ります。

『進撃の巨人』梶裕貴さんが実演した「エレン巨人」の咆哮

『進撃の巨人』の主人公であるエレン・イェーガーは、巨人に変身する際に特徴的な咆哮をあげることでおなじみです。実はあの咆哮は、エレン役の声優である梶裕貴さんの声帯から発された「肉声」だけで成り立っていました。声色も迫力も、到底人間のものとは思えない印象なので、視聴者のなかには「加工」した声だと思っていた人も多いのではないでしょうか。

 実際に2023年7月に開催された台湾のアニメイベント「2023漫画博覧会」で、梶さんによる巨人の咆哮が実演されたところ、ネット上では「(エレンが変身した)巨人って音声加工じゃないの!?」「えっ、無加工だったの?」と驚愕する声が相次ぎました。

 そんな驚きの発声技術を誇る梶さんですが、その遺伝子は2022年に誕生した第一子にも脈々と受け継がれているようです。『進撃の巨人』には物語に「継承」という要素があることから、2023年11月に放送されたアニメ『進撃の巨人』最終回にて、梶さんの子供の声が採用されました。赤ちゃんの声は梶さんが音声データとして収録したもので、作中に登場した赤ちゃんが泣いているシーンに使われています。

 ちなみに収録は1歳の誕生日となる2023年11月よりも以前に行われているため、0歳で声優デビューしたことに。父親は梶さん、母親は人気声優の竹達彩奈さんということもあり、そのサラブレッドぶりを発揮した形といえそうです。

実は生声だった『ぼっち・ざ・ろっく!』後藤ひとりの「電子音」

『ぼっち・ざ・ろっく!』の主人公である後藤ひとりは、対人コミュニケーションを何よりも苦手とする個性的なキャラクター性で愛されています。その魅力が爆発する瞬間といえば、さまざまな場面で飛び出すユニークなリアクションでしょう。

 なかでも印象的だったのが、第4話で披露した絶叫シーンです。バンドメンバーである喜多郁代から「イソスタ」というSNSをすすめられたところ、拒絶反応で「バグ」が起きてしまったようで、まるで電子音のようなシャウトを発していました。

 当然多くの視聴者が何かしらのエフェクトがかけられているのだと思い込んでいましたが、実のところ加工や編集は一切しておらず、担当声優である青山吉能さんの声だけで成り立っていたようです。2022年11月に公開されたWEBラジオ『ぼっち・ざ・らじお!』でも電子音を生披露しており、多くのリスナーが度肝を抜かれました。

 ちなみに当該シーンはいろいろなパターンを試したそうですが、音響監督の藤田亜紀子さんから「もうちょっと電子音っぽくできる?」と提案されて今の形に至ったといいます。一見無茶ぶりのようにも見えますが、青山さんのポテンシャルを最大限に引き出したという意味では、絶妙のアシストだったのではないでしょうか。



咳だけのために江口拓也さんが出演した『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』キービジュアル第1弾 (C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

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声優界のレジェンドすら苦戦した「ポケモン」とは?

映画『ポケモン』皆勤賞の山寺宏一さんが最も苦戦させられたキャラ

 声優界のレジェンドとして知られる山寺宏一さんは、1998年に公開された『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』で幻のポケモン「ミュウ」を演じて以来、すべての劇場版シリーズに出演してきました。そんな山寺さんが長きにわたるキャリアにおいて、最も苦労させられたというのが、『劇場版ポケットモンスター キミにきめた!』で担当した幻のポケモン「マーシャドー」です。

 登場シーンこそ少ないものの、幾重もの音声を織り交ぜたかのような鳴き声は実に印象的でした。さすがに何かしらのエフェクトが施されているのかと思いきや、なんと無加工で表現されているというから驚きです。都内で行われた公開アフレコイベントでマーシャドーを実演した際には、ネット上でも「これが無加工なんてウソだろ……」「喉に変声機でも飼ってるのか?」「もはや声というより音の領域」などと話題になりました。

 とはいえ湯山邦彦監督から「普通の音じゃない、声じゃない音みたいなもの」とオーダーされた際には、七色の声を持つ山寺さんもさすがに困惑してしまったそうです。試行錯誤を重ねた結果、たまたま出た声に監督からOKが出たらしく、山寺さんは「20年間の中で一番セリフが少なかったけど、一番難しかったかもしれない」と振り返っていました。

『鬼滅の刃』咳のみで強烈なインパクトを残した江口拓也さん

 これまで紹介した声優と少し毛色が違いますが、ある意味、意外な演技によって話題をかっさらったのが江口拓也さんです。

 江口さんは、『SPY×FAMILY』のロイド・フォージャー役や『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』の比企谷八幡役といった有名キャラを多数演じている人気声優です。2020年に公開された大ヒット映画『「鬼滅の刃」無限列車編』では、「結核の青年」という脇役を演じていました。そして翌2021年10月に放送されたテレビアニメ版『鬼滅の刃 無限列車編』でも、同じ役を演じています。

 そしてテレビアニメ版の第1話は、劇場版にはなかった完全新作エピソードで、江口さんが演じる結核の青年も登場していました。しかしその役どころは、咳払いする1カットのみで、江口さんは咳の音を収録するためだけに、わざわざアフレコ現場を訪れたそうです。

 公式WEBラジオ『鬼滅ラヂヲ』で、竈門炭治郎役の花江夏樹さんがこのエピソードを語った際、我妻善逸役の下野紘さんは「別の誰かがやっても良かったんじゃないの?」と鋭いツッコミを入れていました。ただ、わざわざアフレコ現場に足を運んだ甲斐はあったようで、「無限列車編」第1話が放送された際には「江口拓也」がX(旧:Twitter)のトレンド入りを果たしました。今もなお、ネット上では「咳だけ収録しに来た男」として語り草となっています。

 キャラクターの咆哮や悲鳴の裏には数々のドラマが隠されていました。それを知っているだけで、物語がまた違った角度から見えてくるかもしれません。