ひとり取り残されて途方に暮れる捨て猫(吉本ユータヌキさん提供)

【マンガ】「生きている意味ない」と絶望する捨て猫 存在意義を与えてくれた出会いに「泣いた」 本編を読む

いつの間にか自分の存在が誰かのためになっていて?

 道端のダンボールのなかに取り残されてしまった捨て猫。引き取り先がみつからず、自分には「生きる意味ない」と嘆く日々を送っています。しかし、さまざまな出会いを重ねるうちに、捨て猫の存在に大切な「意味」が芽生えていって……。

 吉本ユータヌキさん(@horahareta13)による創作マンガ『ただそこにいただけで』がTwitter(現:X)上で公開されました。いいね数は6.3万を超えており、読者からは「号泣した」「うちの猫を思い出しました」「心にしみました」などの声があがっています。

 作者の吉本ユータヌキさんにお話を聞きました。

ーー今作『ただそこにいただけで』が生まれたきっかけや、理由を教えてください。

 ぼくはもともと、他人の期待に応えたいとか、人の役に立って何か貢献できたらいいなと思ってマンガを作ってきたんですが、今年初旬ごろからマンガを描くのが楽しくなくなってきたんです。

 それは貢献したいと思って描いたものへの反響が以前より減ったこととか、ウケを狙いにいくが故に自分の描きたいことからズレていってしまうことなどが理由でした。

 そんなことから「自分の気質的にマンガを作るのは向いていないのかも」と考えるようになり、一度は思い切って自分の描きたいことは捨てて、役に立つものだけを作る作家になろうと決めたんです。でも、ちょっとだけ未練があって、最後に1作だけ、自分のためだけに全力で描いてみようと思い『あした死のうと思ったのに』というマンガを作りました。SNSにアップするまでは、テーマは暗いし、誰がこんな話を求めてくれるんだろうと思っていました。

 でも、アップしてみると、すごい数の感想が届いたんです。その瞬間に、人の役に立ちたいと思って作るよりも、自分の思ったことを素直に曝(さら)け出して作る方が自分にとってはいいものが作れるのかもと思い、また、それは人の在り方そのものにもつながっているかもと思ったんです。

 家にいる妻、子供たち、犬に対して、なにか役に立つことは求めていなくて、ただ一緒に暮らして、おはよう、おやすみと言葉を交わしてくれるだけでいいと思うんです。

 SNSを見ていると、なにか役に立とうとしている人やコンテンツがすごくたくさんあふれていて、時短で役に立つものが求められているように感じていたんです。なので、もう一度、人の在り方みたいなことをちょっとだけ考えられるようなものが作りたいと思いました。

 そして、自分にとって『いてくれるだけで、ありがとう』と思える存在を思い返していたときに、昔飼っていた猫のことを思い出しました。この猫はもともと公園でボロボロになっていた捨て猫で、妻(当時彼女)と一緒に拾って帰りました。最初は病気もありましたが、7年近く一緒に過ごすことができて、すごく幸せな時間だったんです。

 そんな思い出と今感じているメッセージを掛け合わせて描けるものをと考えた結果、生まれたのが『ただそこにいただけで』でした。

ーーとても心が温まる作品でした。今作を描くうえでこだわったポイントや、お気に入りのシーンなどはありますか?

 捨て猫のププに言葉を話させないというところはこだわりました。最初は話せる設定で考えていたんですけど、実際に動物を飼っている方に頭のなかで気持ちを補足して読んでもらいたいと思ったんです。

 呼んでも全然寄ってきてくれなくて好かれてないのかなと思ったら、ふと寄ってきてお腹の上で寝るような、言葉にはしないけど伝わってくる愛情みたいなものがあると思うんです。それをマンガでも感じてもらえたらいいなと思いました。

 お気に入りのシーンは、ププが脱走するシーンです。そこのププの気持ちを皆さんが読んだのか知りたいぐらいです。



心温まる捨て猫のエピソードが収録された『あした死のうと思ってたのに』著:吉本ユータヌキ(扶桑社)

ーーたくさんの感想が寄せられています。特にうれしかった感想の声、印象に残った読者のコメントはありましたか?

 亡くなってしまったペットを思い出しましたって感想はうれしかったです。ぼくは作品を作るときに、自分ごとにして読んでもらいたいと思っているので、誰かを想いながら読んでもらえるのは本望ですし、マンガを通して亡くなってしまった命が蘇ってくるのは、読んでくださる方の力ですが、描いて良かったなーと思わせてもらえます。

ーー短編集『あした死のうと思ってたのに』(扶桑社)が2023年12月2日に発売されますね。あらすじや、見どころを教えて下さい。

 やっぱりメインの『あした死のうと思ってたのに』が見どころというか、読んでもらいたい作品です。それに今回『あした死のうと思ってたのに』の別エピソードも描き下ろししたので、それが1番読んでもらいたいです。今ぼくが描けること全部載せて描いたので、良かったら読んでみてください。

ーー吉本ユータヌキさんを応援しているファンの方へひと言お願いします!

 全編通して背中を押せるようなパワーも、つらい気持ちを消化できるパワーもないですが、ひざ掛けみたいなあったかさを持てればいいなと思いながら作った作品ばかりなので、疲れたとき、寂しいときに開いてもらえるとうれしいです。

 また、これからはマンガだけじゃなく、思っていることをもっとたくさんの人に届けるために「ドラマ化」を目指して頑張りたいと思っています。まだまだ未熟者なので長い道のりになるかと思いますが、応援してもらえるとうれしいです。よろしくお願いいたします。