『未来少年コナン』のダイス船長のモデル

 東映動画を退職した高畑監督と宮崎監督の新しいボスとなったのは、「東京ムービー」の設立者・藤岡豊氏(1927年~1996年)です。高畑&宮崎コンビは『ルパン三世』(日本テレビ系)の第1シリーズの演出を途中から手がけ、伝説の存在となります。大きなスタジオを離れた高畑&宮崎コンビの自由気ままさとやさぐれ感が、『ルパン三世』には感じられます。

 高畑&宮崎コンビは、劇場アニメ『パンダコパンダ』(1972年)もヒットさせます。さらに藤岡氏は世界進出を目指して「テレコム・アニメーションフィルム」を立ち上げ、『ルパン三世 カリオストロの城』(1979年)で宮崎監督は劇場監督デビューを果たすことになります。

 藤岡氏は発言内容がコロコロと変わったそうです。宮崎監督のテレビアニメ『未来少年コナン』(NHK総合)のダイス船長は、藤岡氏がモデルだと言われています。日和見的なダイス船長ですが、彼なしではコナンはラナを救出することはできなかったでしょう。当時の宮崎監督にとっても、藤岡氏は重要な存在でした。

 製作費53億円を投じた、日米合作の大作アニメ『NEMO/ニモ』(1989年)に情熱を注いた藤岡氏でしたが、高畑監督や宮崎監督も関わったこの企画は失敗に終わり、藤岡氏はアニメ界からの引退を余儀なくされます。

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「濁濁併せ呑む」を公言した大物フィクサー

 職場を転々とした高畑監督と宮崎監督にとって、「理想郷」と言えるのがスタジオジブリでした。アニメ誌「アニメージュ」を発刊していた「徳間書店」が出資し、1985年にスタジオジブリが創設されます。徳間書店の創業者である徳間康快氏(1921年~2000年)がジブリの初代社長でした。

 徳間氏は、『コクリコ坂から』(2011年)の徳丸理事長のモデルになるなど、さまざまな逸話を持つ人物です。看板雑誌「週刊アサヒ芸能」はヤクザやギャンブル情報を満載し、大いに収益を上げました。「清濁併せ呑む」という言葉がありますが、徳間氏は「濁濁併せ呑む」を自認していました。政財界との繋がりを持つフィクサーとしての顔も持っていました。

 徳間氏は大映映画も傘下に収め、中国に長期ロケした『敦煌』(1988年)などのスケールの大きな大作映画をヒットさせています。日中合作映画『阿片戦争』(1997年)では、ダイアナ妃にヴィクトリア女王役をオファーしたことが知られています。

 宮崎監督の『もののけ姫』(1997年)や『千と千尋の神隠し』(2001年)のメガヒットも、徳間氏の存在なしでは語れません。その一方、徳間書店の経営事情にジブリも左右されるという側面がありました。

 宮崎監督が類まれなるイマジネーションの持ち主で、天才的アニメーターであることが誰もが知るところです。宮崎監督の才能を活かすには、スタジオ経営者もそれに匹敵するビジネスセンスと経営スキルが必要とされます。残念ながら、今のジブリにはその適任者が見つからなかったということです。

 統計的に、ひとつの企業の寿命は20年から30年程度だと言われています。その点、ジブリは創設からすでに38年が経っています。日本テレビの子会社となったジブリはアニメスタジオとして再生するのか、それとも版権ビジネス中心となるのか。アニメ界をリードする有名スタジオだけに、成り行きが注目されます。