死の病に侵される原因となった場面に読者からツッコミが入ったトキが表紙の『北斗の拳 究極版』7巻(徳間書店)

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大らかな時代だったからこそのガバガバ設定?

「週刊少年ジャンプ」で1983年から1988年まで連載されていた『北斗の拳』は、TVアニメも話題を集めて社会現象にまでなった大ヒット作品です。そんな同作は公式サイトのインタビューで、原作者の武論尊先生や作画の原哲夫先生が勢いで描いている週刊連載のなかで「後付け」がたくさん出ていたことを認めており、ファンもそれに付随する「ツッコミどころ」をむしろ楽しんでいるマンガでもあります。一部で有名な「ツッコミどころ」をいくつか振り返ります。

 まずは多くのツッコミが入った、有名な「核シェルターのシーン」です。『北斗の拳』の世界観の根幹に関わる「核戦争」が起きた際の過去回想で、「死の灰」から逃げるケンシロウ、ユリア、トキの3人は、何とか避難用シェルターまで到着しました。しかし、そこはすでに大勢の子供たちで埋め尽くされており、さらに一部で「シェルターの御夫人」と呼ばれているモブキャラから、「どうつめてもあとふたりまでです!!」と言われてしまいます。

 そこでトキは自分が犠牲になることを選び、ケンシロウとユリアをなかに押し込めて自ら扉を閉めました。ただシェルター内にいたのはほとんど子供のため、ネット上では今でも「子供を抱えたら入れるんじゃ……」「スペースはあったよね。つめるだけでいけてた」「満員電車よりよっぽどスカスカなんだが……」とのツッコミの意見が入っています。

 当時からツッコミが出ていたためか、TVアニメでは「シェルターの扉が故障していたため、トキが外から人力で閉め続けていた」という場面に変更されました。また、「もしも、北斗の拳が実写ドラマだったら」というもしもの設定で、撮影の苦労を描いたスピンオフ『北斗の拳 世紀末ドラマ撮影伝』では、問題の核シェルターの場面に関して、トキがシェルターに入れなかった「意外な裏話」を用意し、話題を呼びました。

 いくつかある『北斗の拳』の「後付け設定」に関しては、原哲夫先生も「マジかよ」と驚いたと語る「死んだと思ったユリアが生きていて、実は南斗六聖拳の『慈母星』だった」と分かる場面など、有名なものがいくつかあります。その他、有名な例は最序盤から登場するキャラクターで、ケンシロウの旅に同行する気丈な少女・リンの設定です。数年後を描いた第2部では、彼女は成長し立派な大人の女性となってケンシロウと再会しました。

 そして、物語が進むと、リンは実は拳王軍の後に台頭してきた天帝軍のトップである天帝・ルイの双子の妹で、天帝の血を引いていることが明らかになります。この設定に関しては、武論尊先生も、「ちょっと作りすぎた」「苦しかった」と、インタビューで振り返っていました。

 また、敵側にも、なかなか強引な設定がありました。自称・天才のアミバはトキに成りすましていましたが、言動は正反対の残虐非道な男です。見た目とトキを思わせる実力から、ケンシロウは本物だと思い込みます。

 しかし、後からやってきたレイのおかげで、偽者であることが発覚しました。また、いきなり弱体化したような印象もあるため、読者からは「後々の本物のトキと比べると全然似てないんだが」「途中まで本物のトキとして扱う予定だったのでは」「ケンシロウの天然ぶりが分かるいいエピソード」など、代表的な「ツッコミどころ」として語り継がれています。

 また拳王・ラオウには、少し種類の違うツッコミが入っていました。レイがラオウの前に立ちはだかった場面で、彼は一人称が1ページ内で、「おれ」「わし」「わたし」と「ブレて」います。また、一人称だけでなく二人称も「きさま」「おまえ」と変わっていました。「ラオウ多重人格説」「自己プロデュースに迷いが見えてかわいい」「当時の編集はなぜ気付かなかったのか」など、今もネットでツッコミが入る場面です。

 その他「山のフドウが改心する前に大暴れしてる過去の場面見て、『核戦争前なのに世紀末に見えるな』と思った」「ケンシロウは服弾き飛ばした後の着替えを持ってなさそうだったんだが、普通に元通りになってた」「ケンシロウがミスミのじいさんの墓に種モミ蒔いた場面は、みんな『ちゃんと植えろよ』と思ったよね」など、いろんなツッコミどころについて語られていました。

 しかし、「面白さや泣ける場面の前にはすべてが吹っ飛ぶ」「笑える部分が多いし、何度読んでもツッコミどころまで楽しめる」「こういう矛盾やらツッコミがあるから、『北斗の拳 イチゴ味』とか『ドラマ撮影伝』とかギャグスピンオフが作りやすい」と、ゆるい部分も「『北斗の拳』の魅力」として認識されているようです。