『彼岸島』5巻(講談社)

【画像】マンガ史上最悪の「NTR」? 『ベルセルク』ヒロイン、キャスカの「蝕」前後の姿を見る(5枚)

NTRで病んだ? もはや読み続けられないのではと思う読者の意見も

 人気マンガのなかには、まさかの「NTR(寝取られ)展開」が描かれることもあります。「きつ過ぎ」「この後からさらに面白くなった」など、賛否の意見が噴出した人気マンガのNTR展開とはどのようなものだったのでしょうか。今回は特に容赦ない展開が可能な、青年誌のマンガ作品の「NTR」を振り返ります。

 吸血鬼との戦いを描いたサバイバルホラーマンガ『彼岸島』(週刊ヤングマガジン)の初期には、トラウマになってしまうような「NTR描写」がありました。『彼岸島』は行方不明の兄を探すために、吸血鬼が支配する孤島へ足を踏み入れた主人公・宮本明と仲間たちの戦いがメインの物語で、今も続編のシリーズが連載中(舞台は彼岸島ではなくなりましたが)です。

 問題の場面は、第5巻の主人公の兄・篤の地獄のような回想で描かれました。2年前、婚約者・涼子の故郷である彼岸島を訪れた篤は、60年間神社の奥に封印されていた吸血鬼・雅に騙され、彼を解放してしまいます。そして、篤に病院に運び込まれた雅は、その後病院の人間たちを殺し、涼子を騙して病院に呼び出しました。

 その後、篤が心配して病院を訪れると、そこには多数の死体のなかで雅に押し倒されている涼子の姿があったのです。雅は死体の山に自分の血をかけて彼らを吸血鬼として蘇らせ、篤が吸血鬼たちと戦っている間に、涼子と消えてしまいます。その後篤が彼らを見つけると、涼子は雅に血を吸われて失禁(唾液に麻酔効果があり、吸われると全身がしびれる設定)しているところでした。

 篤に「逃げて」という涼子でしたが、彼は泣きながら雅に襲い掛かります。しかし、相手にならず雅に血を吸われた篤は、動けない状態のまま雅が婚約者を犯すところを見続けることとなりました。そして、血を吸われると「尋常でない快楽をともなう」という雅の言葉通り、涼子は「見ないで」と言いながら、はっきり「気持ちいい」と発言しています。その後、雅は去り涼子は息絶えました。

 余りにも衝撃的な事実が明かされたこの場面は、今でもネット上でさまざまな意見が寄せられています。「『彼岸島』5巻胸くそすぎ」「描写が何段階もあって執拗すぎる」「この場面描くために、吸血鬼の唾液の麻酔効果の設定考えてたんじゃ」など、「見るに耐えない」との意見もありますが、「萎えるけど続きが気になる」「こんなシーンの後に篤と雅の『再戦』が描かれたら、途中でやめられる人いないでしょ」と、「名場面」と褒める声も出ていました。

 2017年から「ビックコミックスピリッツ」で連載されていた『ジャガーン』にも、異色の「NTR展開」があり、連載終了後の今でもネットを賑わせています。『ジャガーン』は「キチガエル」と呼ばれる謎のカエルに突然襲われ、寄生されて「壊人」として欲望のままに破壊を繰り返す人びとと、「半壊人」となって特殊能力「蛇ヶ崎銃(ジャガーン)」を駆使する主人公・蛇ヶ崎晋太郎の戦いを描いた作品です。

『ジャガーン』ではいくつかの男女の恋愛も描かれていましたが、問題の「NTR」はコミックス第8巻の83話で描かれています。半壊人として女子大生・南沢愛理の身体を乗っ取っていたキャラ・宿億人(やどり・おくと)は、彼氏である三島淳平や友人と遊びに出掛けたところ、淳平と喧嘩になりました。その後、友人のひとりの古坂亜星に悩みを打ち明けた愛理(壊人)は、言い寄られるまま彼とシャワールームで行為に及びます。

 彼氏や友人が目の前を通り過ぎるなか行われたNTR描写で、亜星は単なる「身体目当て」でしかなく、さらに愛理の中身が男で「好きでもない男との行為で身体が気持ちよくなっている」ことに戸惑う、という異様な場面には、さまざまな意見が飛び交っています。

 ネット上では「設定の活かし方が上手いけどどうかしてる」「複雑な気持ちにさせられた」「面白いけど他人に勧められない」などと、この場面だけでなく同作の作風への「モヤモヤした気持ち」が隠しきれないコメントも多々ありました。とはいえ、『ジャガーン』に関しては「人間の生の実感を描くのが上手い」「細かい心理描写まで描く演出が凄い」と、絶賛する意見も多いです。現在は異色の人気サッカーマンガ『ブルーロック』を連載中の金城宗幸先生(原作担当)の作品でもあるため、最近また注目を集めています。



その後の悲劇を予感させるガッツ、キャスカ、グリフィスの並びが描かれた『ベルセルク 黄金時代篇II ドルドレイ攻略』ポスタービジュアル (C)三浦建太郎(スタジオ我画)・白泉社/BERSERK FILM PARTNERS

(広告の後にも続きます)

マンガ史に残る伝説の「NTR」

 ダークファンタジーマンガ『ベルセルク』は、重厚で容赦のない設定や物語と、迫力ある作画が人気の作品です。1989年から「ヤングアニマル」(前身の「月刊アニマルハウス」時代含む)で連載されている同作は、残酷描写だけでなく、性的な場面の生々しさも有名でした。そんな『ベルセルク』の主人公・ガッツは、過去編に当たる「黄金時代篇」のなかで、傭兵団「鷹の団」の女騎士のキャスカと、時間をかけて結ばれていきます。

 そして、数々の「トラウマ描写」で知られる『ベルセルク』のなかでも、特に「キツい」と言われる「NTR描写」は、有名な「蝕」の場面のなかで描かれました。ガッツと愛憎入り乱れる関係だった「鷹の団」の団長・グリフィスは、紆余曲折を経て再起不能の身体となった後、絶望の余り傭兵団の仲間たちを生贄に捧げる形で、人を怪物「使徒」に変える降魔の儀「蝕」を引き起こしてしまいます。

 異空間に連れていかれた鷹の団の面々は次々と魔物に食われ、グリフィスは使徒のなかでも特別な「ゴッド・ハンド」の5人目・フェムトとして転生、その後は長年深い絆で結ばれていたはずのキャスカをガッツの目の前で犯しました。ガッツは怒り狂い、怪物に食われかけていた自身の腕を引きちぎってまで助けに向かいますが再度押さえつけられ、キャスカも絶望しながらもグリフィスとの行為で快感を得てしまいます。その後、ガッツとキャスカは「髑髏の騎士」に助けられ命拾いしますが、キャスカはあまりの出来事に精神が崩壊して幼児退行し、会話もできなくなってしまいました。

 あまりにも救いのない展開ゆえに、ネット上では「伝説の鬱展開」として今でもたびたび話題になっています。「物語も作画も凄まじすぎてトラウマ中のトラウマ」「この後が気になるけど怖くて読めないでいる」「かつてはキャスカがグリフィスに好意を寄せていたことを考えると、よりエグい」など、衝撃の場面に心がついていけなかった人もいたようです。ちなみに「黄金時代篇」の物語は2012年から3部作でアニメ映画化されましたが、「蝕」の場面がある3作目の『ベルセルク 黄金時代篇III 降臨』だけR15指定となりました。

 グリフィスがキャスカを犯した理由に関しては、ファンの間でさまざまな考察がされており、「ガッツへの当てつけじゃないか」「グリフィスはキャスカが自分からガッツを奪ったという認識で、復讐だったのでは」と、そもそも「蝕」の前から「別のNTR」が起きていたと考える人もいるようです。