マンガ内ではジャリの悪路も走るミニ四駆。画像は『ダッシュ!四駆郎』第1巻 (小学館)

【画像】何が違う? ミニ四駆の「ホットショットJr.」と「ホーネットJr.」(4枚)

洗練されたマシンのデザインに豊富なパーツで子供を夢中にさせた「ミニ四駆」

 1980年代後半に爆発的にヒットした「ミニ四駆」は、操作はできないものの、ラジコンカーをミニュチュア化したレースカーのホビーで、当時の子供を熱狂させました。カスタムパーツも豊富で、お小遣いをやりくりし、夢中で改造したものです。今回は楽しい思い出がある一方で、切ない思い出もあるミニ四駆の思い出を振り返ります。

マンガ『ダッシュ!四駆郎』で人気爆発! 最初に買ったのは「ホットショットJr.」

 1980年前後の生まれの世代のミニ四駆といえば、「月刊コロコロコミック」で1987年に連載がスタートしたマンガ『ダッシュ!四駆郎』がきっかけで、ハマった人が多いのではないでしょうか。ミニ四駆は、小さいうえ比較的安価、見た目も少年心に刺さるかっこいいデザインで、マンガにハマったこともあり、筆者もマシンを購入しました。

 初めて購入したのは「ホットショットJr.」です。赤い車体にオフロードタイプの、いかつい見た目が気に入りました。プラモデルを作る感覚で、ランナーからパーツを爪切りで切り離し(ニッパーなどの工具は持っていなかった)やすりで整え、シールを貼り完成。組み立てが簡単なのも、子供にとって熱中できる要素でした。遊び方といえば、家の廊下を走らせては壁にぶつけ、自動で止まるわけではないので乱舞するマシンを取りに行くの繰り返しです。外で走らせる友達もいましたが、私は汚れたり破損したりする可能性を考え、屋内で遊んでいました。

 その後、友達から「ホットショットJr.は車体重量が重いから遅い」という真偽不明な情報を得たため、マンガの主人公が使用する「ブーメランJr.」を購入したのを憶えています。

子供のお小遣いでやりくり購入したカスタムパーツ

 ミニ四駆は他にも、タイヤ、モーター、ギアなどの別売りパーツも多くあり、自分好みにカスタムできるのも魅力でした。パーツはミニ四駆本体よりも高価なものもあり、子供には慎重に選ばざるを得ない代物です。ブームが過熱すると、「パチモン」のパーツが販売されるようになり、安易に購入すると痛い目にあうこともありました。

 また、タミヤ公式の電池やモーターのなかでも、タミヤ主催のレース大会では使用禁止のものもあり、いつか出場することに憧れて「ルール厨」になっっていた私は、決められたパーツをガチガチに守りカスタムしていたのです。

 そんななか、『ダッシュ!四駆郎』の主人公が愛機として「ダッシュ1号・ エンペラー」を使用し出すと、そのフォルムに魅せられ、私も購入しました。そして、新たなチャレンジも始めます。



オードリーの若林さんも大人になり再びハマったそう。「1/32 『ダッシュ1号・皇帝(エンペラー)』」(C)TAMIYA,INC.ALL RIGHTS RESERVED.

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自前のカッターでシャシーの「肉抜き」に挑戦

超危険! カッターでシャシーを「肉抜き」

 よりスピードと継戦を求めた結果、私はプラスチック製のシャシーを切ったり削ったりして軽量化する「肉抜き」と、走行中に電池やモーターの熱を逃がす「空冷式」に挑戦することにしました。本来はハンダゴテを使用するのでしょうが、我が家にはなく、思いついたのは文房具のカッターをライターやコンロで熱し、シャシーを切ったり削ったりするという、今考えると「超危険な行為」だったのです。

 空冷式は、肉抜きしたシャシーやボディに空気を送り込む専用パーツを接着させるというもので、正直、両方とも効果があったかは分かりませんが、子供ながらに危険行為に手を染めたため達成感はありました。

ミニ四駆の切ない思い出

 自分なりに完璧な改造を施したのはいいのですが、走らせるのは室内で、「いまいちたぎるものがないな」と、子供の私は悶々とします。そんな時、ついにタミヤ公式の「ミニ四駆大会」が開催されることになったのです。

 最強と信じてやまない自機の「エンペラー」を携え、母に頼んで大会が開かれるデパートの屋上に連れて行ってもらいました。多くの少年少女がおり、大人もちらほらいます。公式の大会ということで、緊張感も漂う会場と、けたたましいモーター音でコースを滑る爆走ミニ四駆に私は完全に「ブルって」しまい、エントリーすることなく「帰る……」と言い出し、困惑する母とともに帰宅しました。「せっかく来たのに」と、少し怒っている母の顔を鮮明に憶えています。

マイブームの終焉 子供を熱狂させた「アバンテJr.」

 そしてミニ四駆は「アバンテJr.」という、とんでもないマシンをリリースしました。洗練されたブルーのボディ、タイヤも「イボイボ」ではなく「ツルツル」。バンパーに付属するローラーも標準装備、そしてなんといってもすでに「肉抜き」されているという優れものでした。

 私はすぐに飛びつき、発売日に何軒もおもちゃ店を巡りましたが、売り切れです。日を置いても売り切れになっていました。それでもあきらめず店巡りをしていると、ふと気付いてしまいます。これまで危険を顧みず肉抜きしたことや、お小遣いを全部使ったパーツが「不要」になるのではないか、と。そんなことが頭をよぎると、突然、熱が冷め、自分のなかの「ミニ四駆ブーム」が終焉に向かっていきました。

 現在でもミニ四駆専門店や走らせて遊ぶカフェ、公式の大会も開催されるなど人気は衰えていないようです。大人になり、子供のころのお小遣いでは買えなかったあのマシンやパーツを揃え、贅沢カスタムをしてみるのも楽しいかもしれませんね。