映画『聖闘士星矢 The Beginning』ポスタービジュアル (C)2023 TOEI ANIMATION CO., Ltd. All Rights Reserved

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同時期に公開された映画が最強すぎた?

 1985年に「週刊少年ジャンプ」で連載が始まった人気マンガ『聖闘士星矢』は、実写化映画『聖闘士星矢 The Beginning』(監督:トメック・バギンスキー)が2023年4月28日に公開されました。新田真剣佑さんが主演を務めた、製作費60億のハリウッド版(製作は東映アニメーション)の大作です。

 しかし日本での興行は振るわず、アメリカでも公開初週でトップ10入りを逃すなど、ネットでは「大コケ」と言われるようになってしまいました。『聖闘士星矢』の実写化は本当に失敗だったのでしょうか? ネット上の反応を紹介します。

※この記事では映画『聖闘士星矢 The Beginning』のネタバレを含みます。

 実際に映画を見た観客からは「改変はあるけど、原作の要素をしっかり描いていて満足度が高い」「アクションがめちゃくちゃカッコよかった!」「ちゃんとBGMで『ペガサス幻想』流れるし、『聖闘士星矢』ファンは見てほしい」と、意外にも好評の声が上がっています。「原作を知らないけど、アクション凄いし楽しめた」といった声もあり、「コケたけど内容は悪くない」といった意見も多く見られました。

 それでも映画がヒットしなかったのは、なぜでしょうか? ネット上では「『コナン』新作(『名探偵コナン 黒鉄の魚影』:4月14日公開)や、マリオ映画(『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』:4月28日公開)と、公開時期が被ったから仕方ない」「良作なのに、超特大ヒットがほぼ確定していたコナンやマリオと被る時期を選んだのは、戦略的にどうなの?」など、大人気作品と同時期の公開が原因だという声もあります。

 一方で「マリオやコナンと被ったと言っても、客層は被らないのでは?」という人もおり、「単純に宣伝が足りてなかったと思う」「地上波でアニメを再放送するとか、いろんなマンガアプリで原作を5巻くらいまで無料公開するとか、もっと後追い世代が『聖闘士星矢』そのものに興味を持つようにすればよかったのでは」「いわゆる『0巻』とか、描き下ろしイラストとか、特典付ければよかったのに」など、「そもそも宣伝が足りない」という厳しい指摘もあります。東映アニメーションの公式YouTubeでは、4月7日から1週間ごとに5話ずつで、アニメ『聖闘士星矢』15話までの無料配信が行われていましたが、それだけでは足りなかったのでしょうか。

 公開時期、宣伝だけでなく映画そのものへの指摘については、「『聖闘士星矢』といえば聖衣(クロス)なのに、聖衣がものすごくショボい」「原作では華やかな聖衣が、ただの鎧っぽくなったのはショック」と、聖衣のデザインに満足しない声が多数上がっていました。

 この聖衣のデザイン変更に関しては、「映画.com」のトメック・バギンスキー監督へのインタビューに、詳しい事情が書いてあります。当初のデザイン案を見た原作者の車田正美先生から、「原作の再現が大事なわけではない」「聖衣を最初に描いたとき古代ギリシャの鎧をベースに作っていた」などの意見を聞いた監督が、「実際に古代から受け継がれる聖衣が存在するならば、どうなる?」という観点で考えていったものだそうです。原作の聖衣と比べて「尖った部分」が減ったため、俳優がスタントで動きやすくなる、という利点もありました。

 ただ、「聖衣が全く違う時点で原作ファンは失望するよね」「正直聖衣のビジュアルさえ良ければヒットしたと思う」「変えるなら変えるで、メインのポスタービジュアルに原作と違う聖衣を被る星矢をデカデカと写すのは、やめるべきだった」との声もあり、『聖闘士星矢』実写化の成功は聖衣にかかっていたと考える人も多いようです。

 また「アクションへのこだわりはすごいけれど、原作で一番ワクワクする序盤の仲間集めが描かれていない」「星矢以外の青銅聖闘士がフェニックスしか出てこないのはもったいない」という声もありました。『The Beginning』と銘打っている通り、映画版では星矢が「ペガサスの聖闘士」として目覚めるまでをじっくり描いていましたが、原作では第1話ですでに星矢が「ペガサス流星拳」を放っていたことを考えると、もっとペースを速めた方が良かったという意見も出ています。

 しかし、「もっとみんなに見てほしい」と、実写版を支持する人が一定数いるのも確かです。製作費を回収するのも難しそうなのが現状ですが、DVD化や配信開始後に、ジワジワと人気になっていくかもしれません。