フォウの前日譚が描かれた小説『機動戦士Zガンダム フォウ・ストーリー そして、戦士に…』(KADOKAWA)

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助けてもどこかで戦死の可能性も…

 フォウ・ムラサメはアニメ『機動戦士Zガンダム』のヒロインです。戦災孤児として、地球連邦軍「ムラサメ研究所」で4番目の被験者となったことから「フォウ・ムラサメ」と呼ばれています。

 日系人という設定もあるようですが、ムラサメ研究所で記憶も改変されており、自分の名前すら覚えていません。記憶を取り戻すために、心を通わせた主人公カミーユと戦い、最終的にカミーユをジェリドの攻撃から庇(かば)って戦死します(劇場版では、シャトル用ブースターの発射を止めようとした、ベン・ウッダーの銃撃で死亡します)。

 劇中でフォウは2回登場します。ホンコン・シティでカミーユと接触し、心の交流を持ったものの、記憶を取り戻すためにサイコガンダムで、カミーユと戦ったのが最初のエピソードです。この時は、カミーユを宇宙に戻すために、ガルダ級大型輸送機に搭載されていた、シャトル用ブースターを射出し、行方不明(劇場版では戦死)となります。

 2回目の登場は、エゥーゴとカラバによるキリマンジャロ作戦時です、強化人間として、さらに強化を受けており、カミーユを認識し、説得に応じようとしても、戦火を見ると豹変。サイコガンダムに乗り込みますが、カミーユの呼びかけで自我を取り戻します。

 しかし、ジェリドか搭乗するバイアランがカミーユのZガンダムを狙っていることを察知して、盾となって戦死するのです。

 劇中でフォウを助けられるとしたら、第19話「シンデレラ・フォウ」でカミーユと恋仲になった後でしょう。

 カミーユが「フォウ、アウドムラへ行こう! 君が連邦軍にいる理由なんてないんだ!」と自分に付いてくるように誘った時が最初のチャンスです。フォウは「記憶を取り戻したい」と反発し、「両親がいるカミーユには、理解できないでしょうね」と言います。

 カミーユが動揺している間に、フォウは駆け出していますが、例えばカミーユが「俺の両親はティターンズに殺されて、もういない。俺も、孤独なんだ」と言えば、あるいは引き留められたかもしれません。

 その後、フォウのサイコガンダムとカミーユのガンダムMk-IIが交戦しつつ、カミーユが「フォウ、宇宙へ行こう。エゥーゴの技術ならきっと君の記憶を取り戻せるよ」と呼びかけるも、フォウがカミーユを信じ切れずに拒絶する場面が入ります。

 アムロの「戦闘システムがパイロットに戦いを強制している」と発言し、リック・ディアスでサイコガンダムの戦闘システムを破壊しようとして、失敗していますが、これが成功していれば、フォウはサイコガンダムごと捕獲されていたかもしれません。

 この時点で、ティターンズ側の戦力は、サイコガンダム以外は、ガルダ級大型輸送機スードリとハイザックのみですから、フォウの奪還は不可能と言えます。

 いずれにせよ、フォウの身柄はカラバのガルダ級大型輸送機アウドムラに移されるでしょう。アウドムラには、スードリと同じくシャトル用のブースターが装備されており、第38話「レコアの気配」でカミーユとクワトロは宇宙に戻っていますから、カミーユのガンダムMk-IIにカミーユとフォウが乗り込み、宇宙に戻るという展開になるでしょう(フォウにアウドムラに残るよう命じても、従わないでしょうし、もしサイコガンダムを入手できても宇宙には打ち上げられないでしょうから)。

 劇中で宇宙に戻ったカミーユは、Zガンダムのパイロットとなります。そこは変わらないでしょう。変わっていくのは、後半の展開です。劇中でカミーユはフォウの死を無駄にしないために、ティターンズとの戦いを選びますが、それがフォウを守るために変わります。

 フォウが記憶を求め、精神不安定なことは変わらないでしょうし、強化人間のノウハウがないエゥーゴに、フォウの記憶修復や治療は不可能でしょう。

 結果、フォウはカミーユに依存する形となり、カミーユとファとの関係性は破綻していく可能性が高いです。恋敵のファがカミーユの役に立つために、パイロットになったことをフォウが知れば、フォウ自身もモビルスーツに搭乗した可能性もかなりあります(この場合、どこかでカミーユを庇って戦死しそうですが……)。

 ファはニュータイプ同士の共感性に割って入ることは難しいでしょうから、『機動戦士ガンダム』のフラウ・ボゥのような立ち位置となり、仲が良かったアポリー・ベイとの関係性を深めていくのかもしれません。

 アーガマに、同じ強化人間であるロザミア・バダムが、カミーユの妹としての記憶を与えられて潜入してきたエピソードは、フォウの自立の方向に影響するかもしれません。他にも「記憶をダシに操られている者がいる」ということは、地球連邦軍(あるいはティターンズ)が「記憶を利用して、戦わせようとしているだけ」と理解できるだろうからです。

 ただ、この前提条件だとドラマツルギーとしては「フォウがまともになり、ロザミアがそこに反発する」エピソードになりそうではあり、ロザミアを救うことは難しいかもしれません。

 劇中で、カミーユが戦いを産む意志であるシロッコとの戦いによって、精神崩壊を起こします。この展開だと戦力的にも、エマよりパイロットとしては上であろうフォウが、ガンダムMk-II(スーパーガンダム)に搭乗していた可能性もあります。この場合、エマやカツの戦死も避けられた可能性があり、そうなるとカミーユのストレスも限界に達しないので、劇場版Zのように正気を保ったまま、勝利しそうです。

 特にクワトロの百式が撃破されなければ、『ZZ』でのクワトロ離脱もなくなり、ストーリーは大きく変わったでしょう。

 ただ、フォウは強化人間であり、研究施設の関与なしで、長生きできるかはわかりません。勝利したエゥーゴがティターンズの研究施設を接収できれば、話が違うかもしれませんが、そこで戦死しなくても、悲しい展開が待っていたのかもしれません。