校條拳太朗「五感を駆使して体感してもらえたら」 舞台『珈琲いかがでしょう』開幕

舞台『珈琲いかがでしょう』が5月17日(水)に開幕し、囲み取材に校條拳太朗、太田奈緒、久下恭平、新谷姫加、花陽みく、進藤学、芹沢尚哉、斉藤レイが登壇した。

開幕に向けて、校條は「まずはキャスト、スタッフ全員で無事にここまで来れたことをうれしく思います。とても心に沁みる作品ができたと思うので、お客さんに癒しを届けていけたら」と意気込む。

太田の「皆さん個性が強くて、座組の一体感もすごい。舞台ならではの作品を届けられるよう精一杯頑張ります」、久下の「早くやりたいし、早く見てほしい気持ちでいっぱいです!」、新谷の「とにかく楽しんで、皆さんにほっこりした気持ちで帰ってもらえるよう頑張ります!」、花陽の「本当に早くやりたいです。そして座組は皆さん素敵な方ばかり。芝居の中で生き抜くのが楽しくて、お客さまにも観て、感じていただきたいという気持ちでいっぱいです」というコメントからも、カンパニーの熱意が伝わってくる。

今回は劇場近隣の喫茶店とのコラボも行っていることから、進藤が「これまで1カ月ほど、千住とずぶずぶでやってまいりました(笑)。残り5日しかずぶずぶになれないのを噛み締めて、スタッフ・キャスト一同、お客さま一同、足立区とずぶずぶになっていきたいです!」と話してキャストや取材陣を笑わせる。

芹沢は「この舞台に関わる全員が一体になってできた作品だと思います。観る方によって感じ方も変わると思いますから、そこも楽しんでほしいです。個人的には、舞台版オリジナルキャラクターの役を与えていただけて感謝しています。お客さまが何かを感じ取っていただけたら幸いです」と語り、斉藤は「早くお披露目したいけど、すでに終わりが寂しくなっています。ひとひねりもふたひねりもあるおもしろい作品に、舞台ならではの工夫が加わったものを、いかに皆さまに届けるかに集中して演技をしたいと思います」と頷いた。

見どころを尋ねられた校條は、「原作の漫画、アニメ、ドラマがありましたが、今回は舞台ならではのものになっています。目で見て楽しむのはもちろん、いろいろな音、そして香りと、五感を駆使して体感してもらえたら。それぞれ沁みる部分、好みの部分を探してほしいです」と話す。作中では実際に珈琲を淹れるシーンもあり、太田は「稽古中も珈琲豆の香りがしていたり、休憩中に校條さんやみくさんが豆を挽いていたり、1日中珈琲の香りで癒される特別な時間でした」と振り返る。

役作りでの苦労を聞かれると、進藤が「信念を1つ持っていればそのままできるので、今回は1度も迷いませんでした」と堂々宣言。新谷は「私自身青森から上京してきたので、そこは演じやすかったです。でも雅ちゃんはキラキラしていてテンションの高い陽キャなので、ちょっと大変でした」と語る。

本作では、足立区、足立区観光交流協会の協力のもと、千住の喫茶店やカフェとのコラボ企画も行っている。店舗を巡ってInstagramで紹介した花陽は、「17店舗を巡りましたが、どこもオーナーさんの愛が詰まった素敵なお店。若い方からご高齢の方まで幅広い年代の方に愛されています。公演を観た後にぜひ行ってもらって、珈琲を飲みながらお店の歴史に思いを馳せて楽しんでほしいです」とアピールした。

最後に、校條が「公演期間は5日間で、あっという間。焙煎してからおいしく飲める期間が短い珈琲豆と同じなので、フレッシュなうちにお越しください。とてもおいしく素敵な物語をお届けします。迷っているならぜひ来てほしいですし、珈琲好きな方にも来てほしいです」と締め括った。

物語は、一際目を引く、タコのマークの移動珈琲屋さん。気ままな店主が一杯一杯、丁寧に淹れた珈琲は、なんだか心がほぐれるそんな味……。日々のしがらみで疲れた人々にやすらぎを与え、時に苦しみから救うこともあるという。そんな店主と悩める人々が織り成す優しくもほろ苦い、人情珈琲群像劇。

ステージ上で目を引くのは、本物の軽トラを改造したキッチンカーのセット。囲みでも出た通り、豆を挽く音やお湯を注ぐ音、丁寧に珈琲を淹れる手順や漂ってくる香りなどを五感で楽しみ、心地よい空気に癒されることができる。物語を通して意外と知らない珈琲の知識を学べるのも楽しい。

校條は穏やかだがどこか不思議な雰囲気の店主・青山を魅力的に演じるとともに、珈琲のおいしさやおもしろさを伝えてくれる。 OL・垣根志麻を演じる太田は、今どき珍しいほど丁寧で不器用な彼女の葛藤、青山の珈琲に対する感動をまっすぐに表現する。同じく彼の珈琲をきっかけに新たな一歩を踏み出すのが、都会に憧れる女子高生の大門雅(演:新谷姫加)と東京に住む礼(演:花陽みく)だ。新谷はまだ若く世間知らずな少女の夢と現実を赤裸々に見せ、花陽は夢に敗れて自堕落な日々を過ごす女性の苦しさを繊細に描き出していた。

ひょんなことから青山を店に泊めることになるアケミを演じる進藤は、パワフルでキュートな「ママ」として、ここまでとは少し毛色の違う物語を好演。 元バリスタチャンピオンで珈琲界の重鎮・モタエを演じる斉藤は、珈琲に関するさまざまな知識をイキイキと語り、珈琲への愛情を感じさせる。

そして、青山を探すヤクザ・杉三平(演:久下恭平)や舞台のオリジナルキャラクターである小比類巻(絵:芹沢尚哉)は、怪しい動きで不穏な空気を作り出したり、かと思うとお茶目な一面を見せたり、存在感を発揮していた。

物語は原作をベースにオムニバス形式で進む。各話がぎゅっとまとまっているものの、キャスト陣はキャラクターたちの個性やチャームポイントをしっかり見せ、愛すべき人々を描き出していた。舞台オリジナルのキャラクターもいるため、原作やドラマのファンも、新鮮な気持ちで楽しめるのではないだろうか。

珈琲によってもたらされる変化や珈琲を通して繋がる人と人の関係、優しくほろ苦い物語を、ぜひ劇場で体感してほしい。

公演は5月21日(日)まで東京・シアター1010で行われる。

(C)コナリミサト/マッグガーデン