アニメ『SLAM DUNK』DVD16巻(東映)

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バスケをしていなくても見習うべき言葉

 大人気バスケマンガ『スラムダンク』の湘北高校バスケ部の監督である安西先生は、数々の名言を残しています。なかでも、代表的なのが中学時代の三井寿に言った、「あきらめたらそこで試合終了だよ」ではないでしょうか。バスケのみならず、仕事や日常での困難な場面でも励みになるセリフです。

 その後の山王戦でも、安西先生は桜木花道に向けて「 あきらめたらそこで試合終了ですよ…?」と言いました。映画『THE FIRST SLAM DUNK』でも描かれた山王戦では、安西先生は数々のグッとくる言葉を残しています。今回は、映画ではカットされてしまった、山王戦の安西先生の名言を振り返ります。

 まずひとつ目の名言は、桜木花道と流川楓のプレーを見た際に出た、「おい…見てるか谷沢(以下略)」です。谷沢は安西先生の大学監督時代の教え子で、恵まれた体格と抜群の身体能力を持つ、将来有望な選手でした。

「白髪鬼」と呼ばれるほど厳しい人物だった安西先生は彼を最高の選手に育てるべく、基礎を徹底的に叩き込もうとします。しかし、自由にプレイしたい谷沢の気持ちは、安西先生の考えとは乖離していきました。そして耐えきれなくなった谷沢は、ついに誰にも言わず渡米してしまうのです。当然のごとく、安西先生はひどく落胆しました。

 アメリカに行った谷沢は現地の大学バスケ部に入部したものの、自分が期待していたような飛躍はなく、思い通りに活躍できない日々を送ります。そして谷沢はバスケから遠ざかり、薬物に手を染め、事故を起こして他界してしまいました。その後、安西先生は大学バスケ界から去り、湘北高校では別人のように穏やかになっています。

 安西先生は谷沢の件を引きずりながらも、花道の才能にいち早く気付いて指導しており、急成長を続けた花道は、山王戦で目を見張るほどの輝きを見せていました。花道をマークした山王の「日本一のセンター」河田も、彼の身体能力のすごさを見抜くなか、安西先生は震えながら、「おい…見てるか谷沢…お前を超える逸材がここにいるのだ…」と心のなかで呟きます。そして、花道がシュートだけ失敗した時、流川がそのままダンクでぶち込むという超絶プレーを見せ、安西先生は「それも…2人も同時にだ…谷沢…」としみじみコートを見つめるのでした。

 谷沢の死を乗り越えられずにいた安西先生の絞り出すようなモノローグは、読者も震えるような名シーンとして支持されています。山王戦の開始から始まる映画版で上記のセリフを入れようとすると、まず「谷沢とは誰なのか」の説明から始めなければいけないので、カットは致し方ありません。ただ、大スクリーンでこのセリフを聞きたかった、というネットの意見も多く、人気の高さがうかがえます。

 もうひとつ、カットされて残念だったと言われているのが、安西先生が三井に向けた言葉今の君は十分、あの頃を超えているよ」です。山王戦は序盤で湘北が先制点を決めるも、あっけなく返された後に、三井が連続スリーポイントを決めて、周囲を騒然とさせる一幕がありました。

 かつての中学MVP・三井は、怪我をきっかけにバスケから離れ、不良になっていた2年のブランクがあります。そのことから後悔の念が強く、今の自分が信じられなくなっていました。そんな三井の気持ちを察していた安西先生は、「(試合で)ブランクの重さを実感するたびに自分を信じられなくなっていったんじゃないかな……」と前置きしつつ、「…だがそろそろ自分を信じていい頃だ… 今の君はもう十分 あの頃を越えているよ」とつぶやきます。

 そして、見事スリーポイントを決めた三井に対して、安西先生が無言のガッツポーズをし、三井もガッツポーズで返す……なんとも印象的なシーンでした。

 映画『THE FIRST SLAM DUNK』は宮城リョータがメインとなる映画で、124分の上映時間に試合と宮城を掘り下げた物語を盛り込むためもあってか、上記の場面を含む山王戦の前半は大幅にカットされています。こちらも仕方ない部分ではありますが、三井が山王戦の後半、終盤で値千金の活躍をすること自体は変わりないので、安西先生の名言も盛り込んでもよかったかもしれません。

 その他、山王との試合前日に「断固たる決意が必要なんだ!!」と湘北メンバーに語る名言、花道に「聞こえんのか あ?」と「白髪鬼」時代の圧を見せるシーンなどもカットされ、残念がる声もありました。それも映画のクオリティ、また旧アニメ版の西村知道さんから安西先生役を引き継いだ宝亀克寿さんの演技力が高いからこそでしょう。『THE FIRST SLAM DUNK』はまだまだ大ヒット上映中で、DVDやBlu-rayの発売も発表されていませんが、ぜひ上記の名言を入れたバージョンも見てみたいものです。