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【動画】ウルトラの「別れの言葉」が胸をうつ! 『帰ってきたウルトラマン」最終話

Aが残した最後の言葉が持つ大きな意味

 本日2023年3月30日は、半世紀前の1973年に『ウルトラマンA』最終回「明日のエースは君だ!」が放送された日です。後々、ウルトラシリーズの名セリフのひとつといわれるウルトラマンAの最後のセリフがあったエピソードでした。

※この記事には『ウルトラマンA』最終回のネタバレとなる記述が多く含まれています。閲覧にはご注意ください。

「やさしさを失わないでくれ。どこの国の人たちとも友だちになろうとする気持ちを失わないでくれ……」というAのセリフは、ウルトラシリーズ屈指の名セリフと前述しましたが、一般的に広く知れわたったきっかけは、後年にAがゲスト出演した『ウルトラマンメビウス』第44話「エースの願い」で引用されてからでしょうか。

 もちろん筆者をはじめとする一部の層には放送当時から印象深いものでしたが、『メビウス』で引用されることで若い世代にも知られるようになり、今日では『A』で外せない要素のひとつという認識になっていったと思います。

 このセリフには当然、深い意味があります。そのストーリーを説明していくと……地球に流れ着いたサイモン星人の子供を引き渡すよう要求するヤプール。しかしこれはヤプールの自作自演で、サイモン星人こそヤプールだったのです。それを知った北斗星司でしたが、それを伝えることは自分がAだと明かすことでした。

 結果的に北斗はサイモン星人を倒し、自分がAであることを明かして変身、最後の超獣「最強超獣 ジャンボキング」に戦いを挑み勝利します。そして、前述の言葉を地球の子供たちに残して、故郷のM78星雲へと去っていきました。

 このセリフのとらえ方は、これまでにも多くの識者やファンの間で多くの考察がされています。それゆえに、受け取り方でさまざまな考えを導き出せるでしょう。筆者も見るたびにいまだに違う考え方に至ることがあります。

 実はこの最終回は『A』のメインライターだった市川森一さんによるものでした。しかし市川さんは1クール終了後から一時期、作品から離れ、終盤のヤプールがらみのエピソードのみを担当しています。

 これに関して、いくつかの批判的な意見があり、途中で番組を降板させられた市川さんの皮肉が込められたのが最終回とも言われていました。しかし、それが本当だとしても最終回に込められたテーマには人の心を動かすだけの力があると感じます。そうでなければ、現在まで語り継がれるほどの最終回にはなっていないでしょう。

 前述したように作品から発信されたメッセージを受け取るのは視聴者です。そして、受け取り方は人それぞれ。『A』の最終回を見たみなさんは、Aが残した言葉をどう受け止めましたか?



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第2期ウルトラシリーズの「奇妙な共通点」

 第2期ウルトラシリーズを振り返った時、その最終回にまったく同じ展開が用意されていたことに気づく人が多いと思います。それは、ウルトラマンから子供たちに向けたメッセージがあること。作品ごとに違っていましたが、子供たちに向けたウルトラマンの別れの言葉でした。

『帰ってきたウルトラマン』では郷秀樹が坂田次郎に「ウルトラ5つの誓い」を残し去っていき、『ウルトラマンタロウ』では東光太郎が生身で星人と戦うことで白鳥健一に勇気を示し、『ウルトラマンレオ』ではおゝとりゲンが梅田トオルの自立を促します。みんな1年過ごした兄と呼べる存在との別れを描いていました。

 ここまでで気づいた人も多いことでしょうが、本作『A』では個人的な付き合いのあった少年との別れはありません。あえて言うならば、『A』第29話「ウルトラ6番目の弟」から登場した梅津ダンという少年と北斗の兄弟のような関係は描かれていましたが、ダンは第43話を最後に登場しなくなりました。これにはダンの「ウルトラ6番目の弟」という設定が次回作である『タロウ』とかぶるからと言われています。

 しかし、ここで偶然にも大きな意味ができたと筆者は考えていました。それはAが残した言葉は特定の個人へではなく、すべての子供たちに残した言葉となるからです。それは放送当時の子供たちだけでなく、その後に生まれてきた子供たちにも向けられた言葉。……そう考えると、とてつもなく大きな意味に聞こえてきます。

 前述した『メビウス』で引用された際は、心ない言葉に傷つくヒビノ・ミライ/ウルトラマンメビウスにこの言葉は向けられていました。つまり偶然からでしょうが、Aの言葉は個人に向けられたものでなかったことから、すべての子供たちに贈られた言葉だと解釈できます。もちろん今は大人になっている人も、Aから見たら年下ですから子供と大差ないでしょう。

 そのうえで、あらためてAが残した言葉を受け止めると、視聴者ひとりひとりに向けられたメッセージ。そう考えると、受け止め方も変わってくるかと思います。もちろん現実世界はそんなきれいごとで済まないことも多々ありますが、その理想を忘れることなく心に秘めて生きていきたい。少なくとも『A』最終回で心を動かされた人はそうあってほしいと思います。

※Aが残した最後の言葉を全文掲載するのは脚本引用にあたると判断し、一部分の引用のみであることをご理解ください。