吉良吉影が描かれた『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない Vol.8』(ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント)

【画像】サイコパス過ぎて「ゾッ」 ジャンプ悪役を見る(4枚)

恵まれた環境から生まれた悪人たち

 ヒーローがヒーローであるために魅力的な「悪役」は欠かせません。この記事では「悪の質」に注目し、最後まで改心しなかった3人を紹介します。彼らの特徴や共通点とは?

これで今夜も…くつろいで熟睡できるな

 まずは『ジョジョの奇妙な冒険』の4部に登場する吉良吉影です。

 吉良は生まれながらに殺人衝動を持ち、手の綺麗な女性を48人も殺してきたシリアルキラーです。

 彼もまた無惨と同じく大きな野望を持っておらず「植物の心のような生活」を信条にしています。極力目立たぬよう市井に紛れ、スタンド能力というチートで気まぐれに殺しを楽しみながら、平穏な生活を送りたいのです。

 吉良は自分自身の性癖について全く葛藤しておらず、衝動を抑える努力が見られません。被害者に対する自責の念がないという点で共感性の低さが目立ちます。

好きなんだ 生まれついて・・・そういうのが

 ふたり目は『魔人探偵脳噛ネウロ』からシックス。彼は7000年前の先祖から続く殺人手段の追及という業が凝り固まって、遺伝子レベルで突然変異を起こした「異常に悪意の強い人間」です。シックスは自分が「新しい血族」と見なした配下以外の人類を滅ぼすために人体実験やテロ行為を繰り返していました。吉良と違って「悪」をアイデンティティとしており、スケールも大きいですね。

 しかし目指すべき理想はなく思想に深みがありません。ネウロに敗北した後もあがいており、まったく自分の行為を顧みないという点は吉良と共通です。



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最後がダサ過ぎ?

 最後に紹介するのは『DEATH NOTE』から夜神月です。彼は偶然手に入れたデスノートを使って「犯罪者のいない優しい世界を作る」ために、自分自身が犯罪者と見なした人物を葬り続けていました。しかし最終的には今までの行いが露見し、自分が濫用してきたデスノートの力で命を奪われます。

 法律で裁けない悪を裁くという点において、彼の思想は一部の共感を集めましたが、死に際のみっともなさはジャンプ随一です。「うわーっ死にたくない!!逝きたくないー」と命乞いする夜神の顔からは、革命家気取りの化けの皮がはがれて、小人の素顔が露わになりました。

人間社会に発生したバグのような存在

 彼ら3人には共通点があります。中流以上の家庭で何不自由なく暮らしていたという点です。武士を先祖に持つ家庭で育った吉良、世界中に根を張る一族の御曹司シックス、警察官僚の息子の夜神。悪事を働かなくても十分に人生の勝ち組になれるような素性の持ち主ばかりです。

 つらさや苦しみを知らない彼らは他者への共感性が低く、人を傷つけても恥じたり後悔することがありません。悪をなしているという自覚が(シックス以外は)希薄なので、敗北して死の寸前に追い込まれても、自らを省みて改心するという発想自体がないのです。他者の生命には価値を見出さないのに、自分の命には最後の最後まで執着する点も共通しています。

 ナチュラルに倫理・道徳を逸脱している彼らが放つ違和感は強烈です。自分の信念に従った結果、悪に落ちざるを得なかったような人物とは一線を画しており、だからこそ読者の記憶に残る名悪役だといえるでしょう。