ファミコン版の初代『ドラクエ』から垣間見える、意外な衝撃の数々

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ファミコン版『ドラクエ』には、楽しい思い出と多彩な驚きが詰まっていた

 国内でRPGの知名度を向上させた作品といえば、『ドラゴンクエスト』シリーズを思い起こす人も多いはず。ファミコンに先駆けてPC向けに展開するRPG作品がいくつもありましたが、少年少女を含めた多くのユーザーにRPGを伝えた影響力は、立役者と呼ぶに相応しい活躍ぶりでした。

 主人公を育て、武具を揃えて強くする。RPGの基本的な楽しさを、鮮やかな見た目で彩ったシリーズ1作目のファミコンソフト『ドラゴンクエスト』(以下、ドラクエ)は、「初めてのRPG」に触れたプレイヤーたちに大きな衝撃を与え、かつてない刺激と感動を生み出しました。

 初代の『ドラクエ』が素晴らしい作品なのは間違いありません。しかし、その素晴らしさが強く印象に残り、思い出補正の裏に隠れて「ショックな出来事」は、意外と忘れがちです。なかには、以降のシリーズ作に受け継がれなかった初代だけの要素や、形が変わったため今振り返ると驚かされる仕様などがいくつもあります。

 素晴らしさや面白さ以外にも、さまざまな驚きとショックが潜むファミコン版の『ドラクエ』。そんな名シリーズの原点に、今一度立ち戻ってみましょう。

ガチで怖かった、暗闇に包まれたダンジョン

 ダンジョンといえば、手ごわい敵が潜み、奥にはボスがいて、道中には嬉しい宝箱が置かれている。一般的なRPGはもちろん『ドラクエ』シリーズ全般にも、こうした認識は共通しています。ですが初代に限っては、さらに「暗くて見通しがきかない」という要素がありました。

 初代のダンジョンは、主人公である勇者がいるマスしか見えず、画面のほぼ全てが暗転。TV画面の真ん中だけ色鮮やかですが、しかしそこ以外は暗闇に没しており、どちらに道が伸びているのかもロクに分かりません。

 文字通りの意味で、一寸先は闇。手探りで進んでも壁に阻まれ、行き止まりと分岐を右往左往する羽目に。そのうち出口も分からなくなり、暗闇の中でただひとり迷子に……。あの時の絶望感は、まさに衝撃的でした。

 アイテムの「松明」や呪文の「レミーラ」があれば、主人公の周囲が明るくなるので、かなり進めやすくなります。しかし、それでも明るくなる範囲は限定的。最初の「ほぼ暗闇」の衝撃が尾を引きずったまま、暗いダンジョンをびくびくしながら歩いたものです。

「ラリホー」で、なすすべもなく死亡

 他のシリーズ作と同様、初代『ドラクエ』のバトルもターン制ですが、大きく異なる点がひとつあります。それは、主人公ひとりだけで戦うこと。『ドラクエII』では3人パーティ、『ドラクエIII』だと最大4人でパーティを組み、それぞれの弱点をカバーしつつ戦うことが可能です。

 しかし、初代『ドラクエ』の場合、頼れる相手は自分だけ。攻撃も回復も、全てひとりで行います。幸い、1回の戦闘で1体の敵しか現れないので、「数の暴力でボコられる」といった理不尽な展開はありません。が、このタイマン形式のバトルにはひとつの悲劇が隠れていました。

 その発端は、「ラリホー」から幕を開けます。この呪文は相手を眠らせる効果があるので、主人公はたちまち眠りの世界に。早ければ次のターンに目覚めますが、起きるかどうかは運次第。その間、プレイヤーは何もできず、運が悪ければ延々と眠り続けるハメになります。

 寝ている間も敵からの攻撃を食らい続け、起きる気配のないままHPが減っていき……最悪の場合、そのままHPがゼロになることも。「ラリホー」を食らっただけなのに、気づけば王様から「しんでしまうとは なにごとだ!」と言われてしまう始末です。

 もし仲間がいれば、起こしたり回復するといったフォローができたはず。しかしひとりパーティゆえに、初代『ドラクエ』では「ラリホー」の恐ろしさが際立ちました。



セーブデータ方式に慣れた後に振り返ると、王様が教えてくれる「ふっかつのじゅもん」にも驚かされる

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他のシリーズ作に慣れた後に振り返ると、意外な落とし穴が

復路専門の魔法だった「ルーラ」

 当時プレイした中で衝撃を受けたものもあれば、改めて遊んだり、振り返ってみた時にショックを受ける要素もあります。そのなかでも、特に「ルーラ」の使い勝手には驚かされたものです。

「ルーラ」は、シリーズ作における移動系の呪文。一度立ち寄った町や村といった重要な地点にほんの一瞬で移動できる、大変便利な効果を発揮します。そして、初代『ドラクエ』にも「ルーラ」は存在します……が、多くのシリーズ作と同じ感覚で使うと、思わぬ落とし穴にハマります。

「ルーラ」を唱えると一瞬で移動できるものの、移動先はなんと「ラダトーム城のそば」のみ。この世界に点在する他の町や村を行き先には選べず、自動的かつ強制的にラダトーム城へと飛ばされます。移動するので「移動呪文」には違いありませんが、状況的には「帰還するための呪文」と言った方が正確でしょう。

「あの村で買い忘れたものがあった」「あそこの住民にもう一度話が聴きたい」と思っても、辿(たど)り着くには2本の足を使うしかなく、ラダトーム城に帰る時のみ「ルーラ」が輝きます。

 これは、セーブ的な役割(ふっかつのじゅもん)を教えてくれる王様の元にすぐ戻れるように、といった狙いがあったものと思われます。しかし納得できる理由があったとしても、行き先が選べる自由度を知った後では、初代「ルーラ」にはショックを受けざるを得ません。ちなみに、本作の「キメラのつばさ」も同じ効果を持ちます。

「メタルスライム」でがんがんレベルが上が……らない!?

 シリーズファンの多くが好むモンスターと言えば、「メタルスライム」を思い出す人もいるはず。「メタルスライム」は見た目の可愛さもさることながら、倒した時の経験値が多く、早くレベルアップしたいプレイヤーにとっても注目度の高い相手です。

 メインシリーズの多くでは、倒すと4桁もの経験値がもらえる「メタルスライム」。見合ったレベルであれば、効率的なレベルアップが狙えます……が、それは後続作品での話。初代『ドラクエ』でもらえる経験値は115ポイントだけ。かろうじて3桁に乗る程度の経験値しかもらえません。

 過去のシリーズ作で「メタルスライム」の旨味を知ってから初代を遊ぶと、あまりの落差に驚くこと必至。仮にレベル15から16に上げる場合、必要な経験値は3000なので、「メタルスライム」換算だと27匹も倒さなければなりません。「メタルスライム=経験値たっぷり」という認識のまま初代を遊ぶと、その落差に愕然とさせられます。

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 初めてプレイした時に驚かされたものから、後々振り返って驚いた要素まで、特に印象深いポイントを取り上げてみました。同じ初代『ドラクエ』でも、リメイク版で変更されたものもあるので、新旧の初代『ドラクエ』同士を比較してみるのも面白いかもしれません。