ロボットアニメながら、複雑な人間模様が描かれている名作「劇場版 機動戦士ガンダム Blu-ray トリロジーボックス プレミアムエディション」(バンダイビジュアル)

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子供の頃の印象が一変!

 子供の頃、夢中になって観たTVアニメ『機動戦士ガンダム』を大人になってから見返すと、いろいろな発見があります。例えば内向的な主人公だと思いこんでいたアムロは意外と熱血漢な面があり、かなりの努力家であることに気づいたりもしました。

 他にも、ずっと嫌なキャラだと記憶していた人物に、まったく逆の感想をいだくケースも。自分にとってその筆頭が、地球連邦軍のルナツー方面軍を指揮するワッケイン司令でした。

 彼は命からがらサイド7を脱出してきた避難民をルナツーに降ろすことを認めず、逆にホワイトベースやガンダムを没収、ブライトたちを軍事裁判にかけると言い放った人物です。初めてこのシーンを観た頃は小学生だったこともあって「本当にイヤな軍人」と短絡的に考えてしまいました。

軍規に則るということ

 ホワイトベースに乗り込み、サイド7を脱出した避難民たちは、度重なるジオン軍の追撃を受けながらルナツーへとたどり着きます。肉体的にも精神的にも限界を迎えていた避難民に、基地で休息をとらせようとしたブライトの判断は当然だと思いました

 しかし、ワッケインはこの申し出を却下。重症のパオロ艦長が「ホワイトベースの修理と子供たちを……」とワッケインに伝えますが、彼はこの老提督の言葉を黙殺したようにも感じました。

 彼の冷たい対応に、当時子供だった自分は納得いきませんでしたが、ワッケインは避難民を地球に移送せよという上の指示に従ったに過ぎません。彼が軍人である以上、軍規に則って行動するのは当然だったのです。

ワッケインが犯した失敗

 ブライトは、ルナツーにシャアの攻撃がある可能性を示唆しますが、ワッケインはそれをまともに受けとめませんでした。その上、最高戦力であるガンダムに拘束具を施して封印し、ホワイトベースのクルーを軟禁します。

 結果、基地はシャアの奇襲を受けて大混乱に。ワッケインは自らマゼラン級の戦艦に乗って出撃しますが、港の出口に仕掛けられていた爆発物のトラップにまんまと引っかかってしまいます。

 そんな判断ミスもあって、基地に危機が訪れますが、アムロたちがワッケインの命令を無視。ガンダムを独断で動かしたことでルナツーは窮地から脱します。当時はワッケインが犯した失敗に「それ見たことか!」と思った記憶があります(その後のワッケインの行動はよく覚えておらず……)。



ルナツー司令ワッケインが乗艦した宇宙戦艦「1/1200 マゼラン」(バンダイ)

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有能かつ人間的にも素晴らしい名将

自らのミスをリカバリーする柔軟な対応力

 ブライトが伝えたシャアの情報を軽視したのはマズかったですが、今になって思えば軍規を重んじたワッケインの判断も間違いではないと思います。それに、シャアの襲撃後はパオロ艦長の助言を素直に受け入れ、ホワイトベースを動かした決断は見事でした。

 もしワッケインが自分のミスを認めたくない意固地な軍人だったら、司令という立場を盾にして助言を受け入れない可能性も十分にありえました。

 さらに動けなくなったマゼランが港の出口を塞ぎ、艦隊が出撃不能な状況で、ワッケインは自らの乗艦をホワイトベースの主砲で吹き飛ばすという豪快な策を採ります。これにより、ガンダムと交戦中だったザクIIを砲撃に巻き込んで撃破。あわやシャアの母艦であるムサイまで撃墜しかねないところでした。これにはさすがのシャアも驚きの声を上げ、撤退を余儀なくされます。

 戦況は一刻を争っていただけに、ワッケインの大胆かつ柔軟な判断が光ったシーンと言えるでしょう。当時はワッケインが失敗した記憶しかありませんでしたが、その後のリカバリー能力を見ると相当優秀な軍人であることが伺えます。

人情味あふれる指揮官

 ルナツーを巡る一連の戦いが終わった時、負傷していたパオロ艦長が息を引き取ります。そのパオロの進言を重く受けとめたワッケインは、ホワイトベースやガンダムを「彼らに任せたほうが良かろう」とつぶやき、最初の考えを改めました。

 そして地球に向かったホワイトベースを見送りながら、ワッケインは「ジオンとの戦いがまだまだ困難を極めるという時、我々は学ぶべき人を次々と失っていく。寒い時代と思わんか」とパオロ艦長の死を悼みます。そこに子供の頃に感じた冷酷さは微塵もなく、人情味あふれる好人物に感じられたシーンです。

 その後のエピソードでもワッケイン司令は時々登場しますが、アムロの才能を高く評価したり、ホワイトベース隊の活躍に「逞しくなったものだ」と称賛したりしています。

 そしてテキサスコロニー周辺での戦いで、ワッケイン司令が乗ったマゼランはザンジバルと壮絶な激闘を繰り広げた末に敗北。ワッケイン司令の死を知ったブライトは涙を流し、アムロやカイ、セイラまで大きなショックを受けていました。

何度見ても新しい発見がある!

 ちなみに劇場版『機動戦士ガンダム』の1作目にもワッケイン司令が登場します。やはり上からの命令でホワイトベースの避難民を受け入れることはありませんでしたが、終始申し訳無さそうな表情を浮かべていたのが印象的です。

 そしてTVアニメ版と大きく違うのは、ワッケインは地球に向かうホワイトベースにサラミス1隻を護衛につけたこと。さらにワッケインは「彼らに幸運を……」とつぶやき、ジャブローが前線のことを何も考えていないことに涙を流すシーンがあります。

 またTVアニメ版では亡くなったパオロ艦長に向けて送ったメッセージが、「我々は素人まで動員していく。寒い時代とは思わんか」と、ホワイトベース隊に向けた言葉に変わっていたのも興味深い点です。

 そんなワッケイン司令のことを、ずっと「嫌な軍人」だと思いこんでいた浅はかさはお恥ずかしい限りです。TV放映から40年以上が経過した作品ではありますが、大人になってから改めて見直してみると、自分のような発見があるかもしれません。