メインターゲットである女児たちに、尋常でないショックを与えた第1期終盤。画像は『美少女戦士セーラームーン Vol.8』DVD(東映ビデオ)
【画像】武内直子先生が描く、美麗なセーラー戦士たちを見る(4枚)
「心が痛い……」「晩ご飯が喉を通らなかった」閲覧注意の衝撃回
元気でかわいい女の子たちが、恋に戦闘にと頑張る「セーラームーン」シリーズ。一見楽しげなアニメに見えますが、第1期である『セーラームーン』では、セーラー戦士が全員死亡したエピソードが有名です。1993年2月20日の第45話「セーラー戦士死す!悲壮なる最終戦」放送後は、メインの視聴者層であった女児たちが尋常でない衝撃を受けました。TV局に保護者から抗議の電話が殺到し、新聞の投書欄にも苦情が掲載されるという事態になりました。
さらに、続く別シリーズでも、見ていてつらくなるようなシリアス回が存在します。この記事では、実は闇深い「セーラームーン」シリーズの衝撃回を、3選ご紹介します。SNSでも「正座して見た」「我が目を疑った……」と評判です。
ネプチューン死す!? ウラヌスも後を追い……
『美少女戦士セーラームーンS』で初登場した、セーラーウラヌスこと天王はるか(CV:緒方恵美)と、セーラーネプチューンこと海王みちる(CV:勝生真沙子)。ピュアな心のなかに封印されているという「タリスマン」を集め、世界を沈黙(破滅の時)から救う使命を持つふたりですが、敵のワナにはまり戦闘不能となってしまいます。
第21話「ウラヌス達の死?タリスマン出現」では、「使命のため必ずタリスマンを手に入れる」というふたりの決意と、そんなふたりと戦わねばならないうさぎたちの葛藤が描かれます。タリスマンを集めれば聖杯が現れ、それを使えるメシアだけが、世界を破滅から救ってくれるというのです。
タリスマンの気配を感じたはるかとみちるは、建設中の教会「マリン・カテドラル」へ乗り込もうとします。危険な戦いだと分かっていたネプチューンは「ここから先は互いの危険を無視して、ひとりで先に進むのよ」と、ウラヌスに念を押します。
そして、教会に乗り込んだふたりですが、そこには敵である魔女・ユージアル(CV:川村万梨阿)のワナが仕掛けられていたのです。ウラヌスをワナからかばい、はりつけにされてしまうネプチューン。そして、ユージアルはウラヌスとネプチューンこそが、タリスマンの持ち主だと言うのです。
しかしタリスマンを抜かれた者は、死んでしまうと言われています。ウラヌスに銃を向け、タリスマンを抜こうとするユージアル。ネプチューンは彼女を助けようとはりつけから脱出しますが、「神の罰」と称される砲撃を体中に浴びてしまいます。
「はるか……死なせないわ……」とさらに砲撃を受けながら、ユージアルに近づくネプチューン。しかしユージアルに直接胸を撃たれ、ネプチューンはタリスマンを抜き取られてしまいます。呆然としたウラヌスは「ずるいじゃないか、みちる……自分だけの世界に行くなんて」とつぶやき、自分の胸を撃って、タリスマンを抜き出してしまうのでした。
突入前に、「お互いの危険は無視する」と約束していたふたり。しかし、それを言い出したみちるの方がはるかの危険を見逃せず、先にタリスマンを抜かれてしまいます。そして、同じく約束を無視し、みちるの後を追ったはるか。皮肉にも「タリスマンを集める」という使命は果たされたものの、ふたりがその命を差し出す、壮絶なエピソードです。
「お前とは終わりってことだ!」衛からうさぎへ、突然の別れ話
『美少女戦士セーラームーンR』の第15話「うさぎ大ショック 衛の絶交宣言」では、うさぎと衛がいつものラブラブっぷりを見せます。しかしとある出来事がきっかけで、衛はうさぎへ急に別れ話を切り出すのでした。
衛にまとわりつくちびうさを気にしながらも、彼女として衛と会い、幸せそうな顔を見せるうさぎ。そのラブラブっぷりは、道でたまたま会ったときに、その場でキスしようとするほどです。しかし最近の衛の脳裏には、うさぎが悲惨な未来を迎える不穏な光景が、たびたび浮かぶようになっていました。
「そういうことか……このままじゃうさこは……」。うさぎの近くにいると彼女を破滅に追い込むと悟った衛は、うさぎを守るために急に別れを告げます。「お前には、愛情が感じられなくなったってことだ」「お前とは終わりってことだ!」と重ねて伝えられ、大ショックを受けるうさぎ。
混乱したうさぎはレイたちに相談し、衛のマンションまで謝りに行くことに。しかし衛は「何度も言わせるな! お前とはもう終わりにしたいんだよ」と、取り付く島もありません。うさぎは、「ごめんねまもちゃん、今まであたしに付き合わせちゃって……」と、走ってマンションを出ていくのでした。
いつもはすぐ泣くくせに、衛の前では泣くまいと、笑顔のまま目に大粒の涙をためるうさぎ。その健気さが、なんとも悲しいシーンです。衛のマンションを出た後、うさぎが思わず電話ボックスに駆け込んで泣き崩れるシーンを、覚えている方もいるのではないでしょうか。
そしてこの後、敵のドロイド・アツゲッショが現れセーラームーンを追い詰めますが、タキシード仮面が助けに現れます。「あたしのこと嫌いになったって嘘なんでしょ?」と涙ながらにたずねるセーラームーンに、「私は弱い女の子は嫌いだ、さらばだ」と背を向けるタキシード仮面。
別れるしかないとしても、その理由をなぜうさぎに言ってあげないのか……。とてももどかしく、やりきれないふたりの別れ。そして、嫌われた理由を必死に考えるうさぎの乙女心や、「もっと強くなってあなたの心を取り戻す!」と決意する健気さが、見ていて胸に迫るエピソードです。
「カタツムリ女」敵同士の壮絶ないじめ
『美少女戦士セーラームーンS』では、うさぎたちの敵として6人組の魔女集団「ウィッチーズ5」が登場します。しかし、彼女たちは各自が幹部の座を狙っているため、お互いの足を引っ張り合うように。特に最年長であるユージアルは、他の5人にいじめられた結果、車で崖から転落します。
もともとは他の5人に仕事を教え、「先輩」と呼ばれていたユージアル。しかし失敗を重ねた結果、5人からなめられるようになり、第21話「ウラヌス達の死?タリスマン出現」では、あからさまないじめを受けています。
ユージアルが自分のスリッパを履くと、そこには画びょうが。裸足に画びょうが刺さり痛がるユージアルは、ロッカーのなかに実験用のカタツムリがばらまかれていることに気付きます。さらに、ロッカーのドアの裏には、「ワゴン車のカタツムリ女は事故って死ね!!」と貼り紙が。いつもワゴン車に乗るユージアルを、明らかに狙ったいじめなのです。
ロッカーの向こうでは、「ユージアル先輩、また失敗したんですってー!」「ほんと、おばんはもう引退してもらいたいわ」と、他の5人が陰口を楽しんでいます。ユージアルが裏にいると知りながら、本人にわざと陰口を聞かせているのでした。
しかしめげないユージアルは、第22話「聖杯の神秘な力!ムーン二段変身」でタリスマンの持ち主を特定。ウラヌスとネプチューンのタリスマンを手に入れ、最終的に聖杯も出現しますが、二段階変身したスーパーセーラームーンに競り負け、弾き飛ばされてしまいます。
外のワゴン車に乗り込み逃げ出すユージアルでしたが、車のラジオからはいじめの主犯格・ミメット(CV:かないみか)の声が。「ウィッチーズ5の名が汚れるわ、死んで反省してね?」。なぜかブレーキがきかなくなり、急カーブを曲がり切れなくなったワゴン車は、崖から海へと落ちてしまったのでした。
同志であるはずなのに、あまりに陰湿ないじめを見せたウィッチーズ5。ユージアルを海へ落とした後も、反省するどころか、彼女の机の上にしおれた花を飾る始末。大人でも血の気が引くような、昼ドラ並のドロドロ展開です。
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今回ご紹介した回は、「dアニメストア」「U-NEXT」「Amazonプライム・ビデオ」などで見ることができます。視聴者に夢と希望を与えてくれるはずの女児向けアニメですが、本シリーズには、女児視聴者を闇に突き落とすかのような衝撃回が存在します。その描写は妙にリアルで、大人になった今だからこそ、より胸に刺さるかもしれません。子供時代に見たことがある方も、ぜひもう一度見返してみて下さい。
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