1986年9月18日発売『キングスナイト』。4人の勇者を揃えてエンディングを目指す「フォーメーションRPG」をうたった作品。完全クリアを目指すには、反復プレイに基づく攻略パターンの確立を要した(スクウェア)
【画像】平成でまさかの復活! スクウェア産ファミコンソフト(4枚)
ヒットに恵まれず…辛酸を舐めた80年代のスクウェア
人気RPG作品「ファイナルファンタジー(FF)」シリーズを生み出し、今や世界的なゲーム企業へと大成した「スクウェア」(現:スクウェア・エニックス)。創業当初のスクウェアは主にパソコン向け作品を手掛け、1985年前後からは次第にファミリーコピュータ向けソフトを開発するようになります。
しかし、1980年代のスクウェアは、一貫してヒット作品に恵まれていたわけではありません。むしろ飛躍の契機となったのは「FF」が大ヒットしたからであり、それまでは売上に恵まれない作品もいくつか見受けられました。もちろん、一部のファンからは愛されているものの、セールス面や評価面で「失敗」と言える結果となってしまった「ファミコン向けスクウェア産ソフト」を3本ご紹介します。
『キングスナイト』(1986年9月18日発売)
選ばれし勇者一行が、悲劇に見舞われた姫を助け出す。1986年秋に発売された『キングスナイト』はRPGの王道を往くストーリーラインをなぞりつつ、「フォーメーションRPG」と呼ばれる独自システムを採用。プレイヤーは下から上へ画面がスクロールするステージを進み、アイテムを拾って、キャラクターを育てながら最深部を目指すことになります。
フォーメーションRPGと銘打たれていますが、実際のゲーム画面は縦スクロールシューティングゲームとほぼ同じ。例えるならば、シューティングゲームに登場する戦闘機が、騎士や魔法使いなどの人間キャラクターへ置き換わったイメージです。ゲームをクリアするためには4人の勇者を全員生存させ、適切なアイテムを大量に集め続ける必要がありました。つまり、ゲーム開始時からラスボス戦まで目立ったミス(キャラクターの死亡)は一切許されなかったのです。
ゲームバランスが破綻しているわけではありませんが、難易度の高さからプレイヤーを選ぶ作品だった『キングスナイト』。発売から30年経った2016年、スマートフォン向けアプリ『キングスナイト -Wrath of the Dark Dragon-』が発表されると、突然のシリーズ進展に驚きの声が数多く寄せられました。
『テグザー』(1985年12月19日発売)
戦闘機から人型へのモードチェンジ機能を備えたロボットを操作する『テグザー』。同作品はゲームアーツが開発し、1985年に「PC-8001mkIISR」向けに発売されたアクションゲームです。変形時の滑らかなアニメーションや攻略しがいのあるゲームバランスが話題となり、リリースから約1年間でさまざまな機種へ移植。そして数ある移植先のなかには、家庭用ゲーム機のファミコンも含まれていました。
移植にともなってオリジナル版の機能が変更(場合によっては削除)されることは、当時のゲーム市場では日常茶飯事です。ハードスペックの制約を背負いつつ、オリジナル版のプレイフィールを損なわずにゲーム性の再現を試みる。ここは開発陣の腕の見せどころと言えるかもしれません。
しかしファミコン版『テグザー』では、主な攻撃手段であるレーザーが2点式の光弾へと変更されました。「変形を駆使してステージ内の敵を倒す」というコンセプトは変わらないものの、スラッと伸びるレーザー光線で敵を撃ち抜く爽快感は欠けてしまったように思われます。移植元よりも地味な印象がどうしても拭えず、魅力がいくらか半減してしまいました。
1985年12月19日発売『テグザー』。PC版からの移植に際して自機の攻撃モーションが変更に。弾着までの時間が増え、PC版よりも難易度が相対的に上昇した(スクウェア)
(広告の後にも続きます)
全体を通して調整不足だった3DダンジョンRPG
『ディープダンジョンIII勇士への旅』(1988年5月13日発売)
スクウェア並びにDOG(ゲーム開発ブランド)が立ち上げた3DダンジョンRPG「ディープダンジョン」シリーズ。その3作目である『ディープダンジョンIII勇士への旅』は、調整不足と言わざるをえないクオリティも相まってか、前2作の好評価に続くことができませんでした。
理由はいくつも考えられますが、とりわけ原因として挙げられるのは「自由度の低いパーティー編成」と「安定しない戦闘バランス」。前者はプレイヤー側で職業(キャラクター)を自由に組み替えられるのにもかかわらず、進行面を考慮するとパーティー編成の固定化がほぼ避けられません。後者は文字通り、戦闘で発生するダメージが敵味方ともに安定せず、ゲーム開始からプレイヤーの頭を常に悩ませます。くわえて演出を司るグラフィックやBGMもどこか淡白で、ゲームプレイをうながす動機としては不十分と言わざるをえません。
突出したクソゲー要素で作品そのものが壊れていると言うより、全体的に駄作感がただよう『ディープダンジョンIII』。同シリーズは1990年4月の『ディープダンジョンIV 黒の妖術師』を最後に、実質の休止状態となりました。