冨岡義勇に炭治郎が土下座した「第1話」が描かれる『鬼滅の刃 兄妹の絆』キービジュアル (C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

【画像】炭治郎に「名言」を伝えた人物たち(5枚)

義勇が饒舌だった第1話で、炭治郎は「弱者」から「覚悟の男」へ

『鬼滅の刃』では、鬼に家族を殺され、たったひとり生き残った妹・禰豆子を鬼にされた少年・炭治郎が妹を人間に戻すため、そして、鬼のいない世界を実現するために、鬼との戦いに身を投じ、成長していきます。炭治郎の成長の過程には、人や鬼との出会いがあり、そして彼らが投げかけた言葉がありました。今回は、「遊郭編」までで、「炭治郎が大切なことに気付くきっかけ」となった言葉をご紹介します。

自分の「弱さ」を気付かせ、覚悟を与えた冨岡義勇の言葉

 家族を殺され、鬼化した妹に襲われ、しかしその妹にまだ人間の心が残っているのを感じ……と、炭治郎にとっては心が千々に乱れる最悪の状況に登場したのが、鬼殺隊の水柱・冨岡義勇でした。義勇といえば、「言葉が足りなすぎて誤解をまねく男」です。しかし、ここでは鬼化の理由や自分の使命を炭治郎に説明し、強い言葉を炭治郎にぶつけるなど、とても饒舌。

 そして、「やめてください。どうか、妹を殺さないでください。お願いします。お願いします。」と、泣きながら「みじめったらしく」土下座をするしかない炭治郎に対して怒り、怒鳴りつけたのです。「生殺与奪の権を他人に握らせるな!」と。

 ここでの炭治郎は、素直で優しく、家族思いな、「ただの炭焼きの少年」であり、義勇が言うように「弱者」です。鬼になった妹に力負けし、自分の身すら守れるかどうか……。そんな炭治郎が禰豆子を抑え、ましてや人間に戻すことなどできるはずもないでしょう。義勇の言葉によって炭治郎は、自分の「弱さ」と現実の厳しさに気づき、禰豆子を守るため、その厳しい現実に立ち向かう覚悟が彼のなかに生まれました。これが、炭治郎の戦いの原点と言える言葉と言えるでしょう。

禰豆子を生かすことの「責任」の重大さを気付かせた、鱗滝と義勇の言葉

 義勇の言葉に従って鱗滝左近次のもとを訪ねた炭治郎は、そこで鱗滝から「妹が人を喰った時、おまえはどうする?」と聞かれ、一瞬、言葉に詰まります。妹が鬼になったことを頭では理解していても、それが「禰豆子が人を食べるかもしれない」ということとは、まだつながっていなかったのでしょう。鱗滝は、「判断が遅い」と炭治郎の頬を平手打ちし、鬼である禰豆子を連れていることの「覚悟の甘さ」を指摘したのでした。

 いくら禰豆子が人を喰らっていないとはいえ、それは「現時点で、まだ人を喰らっていないだけ」かもしれません。鬼の存在は許されるものではなく、鬼殺隊に殺されて当然。それを曲げて認めてもらうには、妹の命はもとより自分の命もかける覚悟がなければダメだと炭治郎は、ここで初めて気付かされました。禰豆子を生かすことにかかってくる「責任」を気付かされた言葉です。

 さらに、柱合裁判で読み上げられた鱗滝の手紙の「もしも禰豆子が人に襲いかかった場合は竈門炭治郎及び、鱗滝左近次、冨岡義勇が腹を切ってお詫び致します」という一文に、炭治郎は涙を流します。禰豆子を生かすことについて、炭治郎は自分の命をかける覚悟はもう、できていたはずです。しかし、鱗滝と義勇は、それが禰豆子と炭治郎の命ですむ問題ではないと分かっており、ふたりを預かっている間も、ずっと自分たちの命もかける覚悟でいたのでしょう。自分が思っていた以上の、禰豆子を生かすことに対する責任の重大さ、そして、鱗滝と義勇の深い思いを炭治郎に気付かせた言葉でした。



数多くの名言を残し、炭治郎らを成長させた炎柱・煉獄杏寿郎(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

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やっぱり熱い! 炭治郎の「あと一歩の踏ん張り」を後押しする言葉

自分たちへの「期待と信頼」に気付かせた、煉獄さんの言葉

 炭治郎にとって、大きなターニングポイントとなったのが、「無限列車編」での戦いです。これは、伊之助とともに下弦の壱・魘夢を倒したことよりも、上弦の参・猗窩座との戦いによって炎柱・煉獄杏寿郎を失ったことによる変貌でした。

 猗窩座は、炭治郎を「邪魔な弱者」として排除しようとしますし、炭治郎自身も煉獄さんと猗窩座の戦いを見て、自分の「弱さ」や「ふがいなさ」に打ちのめされます。しかし、煉獄さんは、「この少年は弱くない。侮辱するな」と、猗窩座にきっぱり言うのです。煉獄さんのこの言葉に驚き、顔を上げる炭治郎。もちろん、煉獄さんは、ただの同情や優しさから、このようなことを言ったのではありません。

 たしかにこの時点の炭治郎の心技体の「技」と「体」は、まだまだ弱く、頼りないものです。しかし、魘夢との過酷な戦いを制した炭治郎の「心」は、けっして「弱くない」と煉獄さんは知っています。そして、「技」と「体」についても、この先の成長を信じているのです。

 その気持ちは、煉獄さんの最期の「君たちを信じる」という言葉にも表れています。「この少年は弱くない。侮辱するな」という言葉は、自分たちへの「期待と信頼」を気付かせた言葉でした。命に限りがある人間だからこそ、思いをつなげ、次の世代に託す……。それは、本気で次の世代を「期待」し、「信頼」しているからこそできること。炭治郎は、その思いを煉獄さんの言葉から受け取ったのです。

 さらに、煉獄さんの「心を燃やせ」という言葉は、炭治郎の心に宿り、その後の戦いのなかでも、ここぞという時に炭治郎の背中を押します。炭治郎の「あと一歩の踏ん張り」を支えるのは、自分たちを信じ、未来を託して逝った煉獄さんの言葉です。

「おごり」に気付かせ、“今”のために戦う心を奮い立たせた禰豆子の言葉

「遊郭編」では、ついに上弦の鬼と対峙した炭治郎たち。上弦の陸・妓夫太郎と堕鬼の壮絶な戦いのなかで音柱・宇髄天元も大けがを負い、倒れます。その姿に一瞬、気をとられた炭治郎に堕鬼の帯が襲いかかり、かばおうとした善逸も巻き込まれて……。意識を失いながら、「みんな、ごめん……禰豆子……」と謝る炭治郎は、夢の中で禰豆子に問い詰められます。「謝らないで。お兄ちゃん。どうしていつも謝るの?」と。

 禰豆子が鬼になる前から、炭治郎は禰豆子に苦労をかけ、我慢を強いていると、しばしば謝っていたと思われます。新しい着物をねだることもなく、自分のことは後回しにして、弟や妹の世話を見、家事を手伝っている禰豆子を不憫に思い、申し訳なく思っていたのでしょう。しかし、夢の中の禰豆子は、「人間なんだから誰でも……何でも思い通りにはいかないわ」と言い、「幸せかどうかは自分で決める」とハッキリ言ったのです。

 生真面目な炭治郎は、自分がもっと頑張れば、自分がもっとしっかりしていればと、何か良くないことがあるたびに自分のせいにしがちだったのでしょう。しかし、禰豆子は、人生とは、思い通りにならないものだと諭したのです。そして、自分の幸せや不幸は、炭治郎が与えてくれたものではなく、自分で決めて選んだものであると。

 この「幸せかどうかは自分で決める」という言葉は、禰豆子の人生が不幸だと勝手に決めつけ、それが自分の手で何とかしてやれるものだと思っていた炭治郎の「おごり」に気付かせ、大切な “今”のために「戦う心」を奮い立たせました。夢から覚めた炭治郎は再び、上弦の陸との戦いに挑みます。大切な“今”のために。

「刀鍛冶の里編」では、炭治郎はどんな気付きを得、さらなる成長を遂げるのでしょう?

※禰豆子の「禰」は「ネ」+「爾」が正しい表記
※煉獄の「煉」は「火+東」が正しい表記