「もはや修行のよう」声優陣タジタジのアニメ

 さまざまな役を演じる声優たちの演技に、「楽しそう」「うらやましい」と感じたことはありませんか? しかしその裏では、何かと不幸な役が続いたり、無茶ぶりともいえるアフレコで悪戦苦闘したりと、声優陣が気の毒に思えてしまうような作品もあります。この記事では、「声優が不憫になる」アニメを3作品ご紹介します。SNSでも「また雑に死んだ」「喋る量すごいな」と評判です。

【画像】扱いひどっ! 不憫すぎるキャラたち(6枚)

『機動戦士ガンダムSEED』桑島法子



続編『機動戦士ガンダムSEED』でもヒロイン、ステラ・ルーシェが悲劇的な死を迎える… 画像は『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』DVD8(バンダイビジュアル)

 時はC.E.(コズミック・イラ)70年。ザフトのプラントへの核攻撃「血のバレンタイン」をきっかけに、ザフト軍と地球連合軍は、本格的な戦争に突入していました。長引く戦争のなか、中立国・オーブの衛星ヘリオポリスでは、地球軍の機動兵器を開発。それを聞きつけたザフト軍は、兵器を奪うためオーブに侵攻を開始しました。

 オーブの工業カレッジに通う学生、キラ・ヤマト(CV:保志総一朗)は、居合わせた少女のカガリ・ユラ・アスハ(CV:進藤尚美)を避難させたものの、自分は逃げ遅れてしまいます。そんなキラにナイフで襲いかかってきたザフト兵は、なんとキラの幼なじみであるアスラン・ザラ(CV:石田彰)でーー?

『機動戦士ガンダムSEED』は、21世紀に入って初めて制作された「ガンダム」シリーズの作品です。大河ドラマや少女マンガの影響を受けたというドラマチックなシナリオが、多くの視聴者の支持を得ています。主人公・キラの友人であるフレイ・アルスター役を演じた桑島法子さんは、『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』も合わせると計5役ものキャラを担当。しかし、その全てのキャラが作中で死亡しています。

 フレイはメインキャラのひとりですが、最終話でラウ・ル・クルーゼ(CV:関俊彦)の襲撃にあい、死亡してしまいます。他にも、地球軍のナタル・バジルールや、キラの実の母親であるヴィア・ヒビキも桑島さんが担当するものの、あえなく死亡しました。

 次のシリーズ『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』では、地球軍の特殊部隊に所属するステラ・ルーシェや、ザフト軍のレイ・ザ・バレル(幼少期)を担当するものの、いずれも死亡してしまいます。SNSでは、「桑島法子だからなのか……」「桑島法子キャラの呪縛……!」という声まであがりました。

「CV:桑島法子=死亡フラグ」と言われることもあるほど、担当キャラの死亡率が高い桑島さん。その演技力の高さゆえの配役とも考えられますが、他作品でも担当キャラの死亡率が高いことを考えると、桑島さんの心中やいかに……。

 なお、フレイとナタルは作中で何度も会話を交わしています。戦争に巻き込まれた少女であるフレイと、もともと軍人のナタルという、属性の全く違うふたりのキャラながら桑島さんはそのシーンを分割せず、通しで撮ることもあったのだとか。その演じ分けの素晴らしさにも注目です。この作品は、「U-NEXT」「バンダイチャンネル」「Amazonプライム・ビデオ」などで見ることができます。

『斉木楠雄のΨ難』神谷浩史



『斉木楠雄のΨ難』 (C)麻生周一/集英社・PK学園

 高校生男子・斉木楠雄(さいき・くすお/CV:神谷浩史)は、小さな頃から超能力を持っていました。生後14日で声を出さずに会話をする、生後1か月で空中を歩くなど、非凡な才能を発揮してきた楠雄。

 高校生になった楠雄は、超能力のおかげで怒りや悲しみがない代わりに、喜びや楽しみもない毎日を送っていました。そんな平穏な毎日を「悪くない」と受け入れていた楠雄でしたが、ひとつだけ平穏ではないことがあったのです。それは、ラブラブだったはずの両親の夫婦仲で――?

『斉木楠雄のΨ難(さいきくすおのさいなん)』は、同名マンガ(著:麻生周一/集英社)を原作としたアニメです。原作は2018年2月時点で累計販売数600万部を超え、山崎賢人さん主演の実写映画化、小説化もされました。楠雄を演じる神谷さんは、「最終話と第1話でスピードが全く違ってビックリしますよ」と、セリフの速さを嘆きました。

 第1期・第2期・完結編・Ψ始動編と、かなりの話数を重ねている本作。第1期の第1話からすでにセリフの速さを感じますが、Ψ始動編を見るとさらにそのスピードが加速していることが分かります。その違いは、神谷さんも「別のアニメみたい」と評するほどです。

 等速で見ているはずなのに、1.5倍速で見ているかのようなその速さに加え、楠雄のセリフの量は他のキャラをはるかにしのぎます。「(自分だけこんなに大変なのが)猛烈に悔しい」とぼやく神谷さんに、海藤瞬役の島崎信長さんが「神谷さんは修行をしているようで」と笑う一幕も。

 アニメ第1話に対し、連載5本分の内容を凝縮しているという本作。セリフが多く、速くなってしまうのもうなずけますが、神谷さんをはじめとした声優陣は、視聴者の想像以上に大変なのかもしれません。

 神谷さんいわく「スピードラーニングみたいになっている」という本作、未見の方はぜひ一度ご覧下さい。この作品は、「Netflix」「バンダイチャンネル」「ニコニコチャンネル」などで見ることができます。

『BLOOD-C』水樹奈々



『劇場版 BLOOD-C The Last Dark』画像はDVD(アニプレックス) (C)2012 Production I.G, CLAMP/Project BLOOD-C Movie

 美しい田舎町にある浮島神社で、巫女を務めている更衣小夜(きさらぎ・さや/CV:水樹奈々)。小夜は、通っている私立三荊学園で、友人の網埜優花(あみの・ゆうか/CV:浅野真澄)、鞆総逸樹(ともふさ・いつき/CV:阿部敦)たちと、楽しく学園生活を送っていました。

 しかし家に帰ると、小夜は父・更衣唯芳(きさらぎ・ただよし/CV:藤原啓治)から、「お務め」があると告げられます。「お務め」とは、人を喰らう「古きもの」を、浮島神社に伝わる御神刀で討つことで――?

『BLOOD-C』は、アニメ制作会社「Production I.G」と、女性創作集団「CLAMP」が原作を手がけたオリジナルアニメです。整った作画でありながら、そのグロテスク度の高さで知られている本作。ストーリー展開もかなり衝撃的なものですが、声優陣には先の展開が知らされておらず、小夜役の水樹さんは「毎回、限られた情報から立ち位置を探った」とコメントしています。

 序盤では、和気あいあいとした学園生活が描かれる本作ですが、不気味な「古きもの」や、「お務め」における小夜の豹変など、どこか不穏な雰囲気が漂っています。そしてシリーズ中盤からは、何の前触れもなく人が殺されるなど、怒涛の展開が押し寄せます。

 その展開についていくため、水樹さんは「台本をもらうたびに、自分の立ち位置を懸命に探った」のだとか。脚本を担当した藤咲淳一さんが、声優陣には先の展開を話さなかった理由は「話したらそんな演技しそうだったから」なのだとか。本作の急な展開や壮絶な各シーンを知っていると、水樹さんの苦労がしのばれます。

 さらに、小夜が登校シーンでよく歌う鼻歌の歌詞は、水樹さんのアドリブなのだそう。第1話だけで、3曲もアドリブ歌詞の鼻歌を披露しています。それ以降の回も毎回アドリブだったとすると、水樹さんも苦戦されたのではないでしょうか。この作品は、「dアニメストア」「U-NEXT」「Netflix」などで見ることができます。

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 声優の仕事に憧れがあったとしても、「この作品はやりたくない……」と思ってしまうアニメもありますよね。声優たちの苦労がしのばれる3作品、ぜひアフレコ現場を想像しながらご覧ください。

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