画像は劇場版『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』筆者所有のレーザーディスク

【画像】絶対どちらか負ける…可愛い『マクロス』ヒロインたち(5枚)

そもそも恋愛感情がなかった?

 主人公に恋しながらもその想いが叶うことはない「負けヒロイン」。1980年代のロボットアニメでも印象的なヒロインたちがしばしば恋愛に敗れ、涙しています。40年続くシリーズや、富野由悠季監督作品などから、代表的な負けヒロイン3人を紹介します。

リン・ミンメイ『超時空要塞マクロス』

『超時空要塞マクロス』(1982年~)に登場したリン・ミンメイは、主人公・一条輝を恋のライバルである早瀬未沙と奪い合い、序盤は大幅にリードしながらも最終的には敗北しました。しかし声優を務めた飯島真理さんが歌い上げた名曲の数々が残した印象は極めて強く、今なお歌姫として語り継がれている伝説のヒロインでもあります。

 TVアニメ版では、「マクロス」の進宙式を見学するために南アタリア島を訪れた際に敵となる異星人・ゼントラーディとの交戦に巻き込まれ、輝に救助されたことからストーリーにからむようになります。2話「カウント・ダウン」で展開される救助のシーンは空中で輝の操縦するバルキリーとミンメイがからみ合う見事なもので、「このアニメは今までの物とは違う」ことをひと目で分からせるハイレベルな仕上がりでした。

 その後は遊覧飛行中に「フォールド」に巻き込まれ、輝とミンメイはふたりきりでマクロス艦内でのサバイバル生活を送ることになります。そこでは、ミンメイの夢である結婚式を挙げようとするなど、緊急事態のなかで関係性を深め合っていきます。

 状況が大きく変化したのは9話「ミス・マクロス」でした。ミス・マクロス・コンテストに優勝し、伝説の歌姫としての第一歩を踏み出したミンメイと輝が直接会うのはどんどん難しくなっていきました。さらにミンメイの従兄でありマネージャーを務めるリン・カイフンが登場したことにより、輝との関係は徐々に希薄なものとなっていったのです。

 特にミンメイは27話「愛は流れる」で輝から「好きだった」と告白された際に「お友達としか思ってなかったから……」と語っており、ここまで輝への恋愛感情を自覚していなかったことが示唆されています。

 ミンメイ側に恋愛感情が描写されるのは、実は28話以降となります。崩壊した地球でカイフンをマネージャーとして巡業を行なっていたミンメイですが、人気は凋落。カイフンとも破局し、輝の元に身を寄せます。このとき初めて輝のことを好きだと気付くのですが、すでに輝は未沙との関係を深めており、最後は「君には歌があるじゃないか」という衝撃的な言葉で輝とミンメイの恋愛関係は終わりを迎えます。

 しかし輝と未沙、ミンメイの関係はこれでは終わらず、人類存続を目的とした第1次超長距離移民船団の旗艦「メガロード-01」へ共に乗り込み、銀河系中心付近で行方不明となりました。「マクロス」シリーズの最新作『劇場版マクロスΔ 絶対LIVE!!!!!!』では未沙とミンメイではないかと物議をかもした人物のシルエットが一瞬だけ登場していますが、その正体はいまだ謎に包まれています。



『戦闘メカ ザブングル』DVD-BOX PART-1(フライングドッグ)

(広告の後にも続きます)

戦果をあげるも、恋には勝てず…

ファンネリア・アム『重戦機エルガイム』

 富野由悠季監督作品『重戦機エルガイム』(1984年~)に登場したファンネリア・アムは主人公ダバ・マイロードに寄り添おうとしてできなかったヒロインです。元々は盗賊のリーリン一家で働いていた元・舞台女優志望の少女だったのですが、ダバの一行を襲撃した際に惚れてしまい、なし崩し的に仲間になります。その後はガウ・ハ・レッシィとダバを争い激しい競争を繰り広げ、掃除や洗濯をするだけでは飽き足らずHM(ヘビーメタル)に搭乗してダバをサポートするに至ります。

 ダバがエルガイムMK-IIに乗り換えた後はエルガイムを託されるなど人格・技量共に信頼されていたようですが、ダバの義妹クワサン・オリビーの登場により、徐々に風向きが変化。十三人衆のひとりであるリィリィ・ハッシーを撃破する戦果をあげるなど戦闘面でも活躍しますが恋愛面での動きは影を潜め、最終的には精神崩壊を起こしたオリビーを介護するため隠棲することになったダバを涙ながらに見送ることとなりました。

ラグ・ウラロ『戦闘メカ ザブングル』

 富野由悠季監督作品『戦闘メカ ザブングル』(1982年~)に登場したラグ・ウラロは少年少女で構成された盗賊集団サンドラットのリーダーで、ピンチを主人公のジロン・アモスに助けられたことから好意を抱くようになります。

 ジロンが敵討ちのためにウォーカーマシンを手に入れたがっていることを知ったラグは協力を約束します。そして新型のウォーカーマシン「ザブングル」を持つカーゴ一家を襲撃、家の方針に反感を持つエルチ・カーゴの手助けもあり、無事にザブングルの奪取に成功しました。

 その後はエルチに雇われる形で雇われブローカーとなりますが、ジロンを巡ってエルチと争いを繰り返すようになります。エルチが洗脳されて敵となった後はアイアンギアーの指揮を執るなど姉御肌のキャラクターとして活躍しますが、ジロンとの関係性にそれほど変化はありませんでした。

 最終的には戦いが終わり、洗脳されていた頃の言動への自責の念から飛び出したエルチをジロンが追いかけたときに背中を見送りながら涙していたことから、ジロンへの想いを諦めたことが示唆されています。しかしラグほどのタフな女傑なら、すぐに立ち直り新たな恋めがけて走り出したのではないでしょうか。