アニメ『マジンガーZ』DVD Vol.6(東映ビデオ)

【画像】若い世代に見てほしい! 「マジンガーZ」のカッコいい超合金フィギュア(5枚)

男の子の「夢」が詰まったニューヒーローだった

 本日12月3日は、1972年にTVアニメ『マジンガーZ』が放送開始した日。今から半世紀前の出来事になります。その人気は国内だけにとどまらず世界中に広がり、ロボットアニメの金字塔とまで言われました。

『マジンガーZ』は、漫画家の永井豪先生と東映動画(現在の東映アニメーション)が制作したアニメ『デビルマン』の打ち合わせのさいに、新企画として生まれました。その後、永井先生はひと足早く「週刊少年ジャンプ」でマンガ連載を開始、東映動画はTVアニメ企画として、『デビルマン』同様にアニメとマンガの同時進行というスタイルで動き出します。

『マジンガーZ』以前にも、ロボットアニメの始祖とも言える『鉄腕アトム』と『鉄人28号』という大ヒット作がありました。しかし、日本のTVアニメ界をけん引したこれらの作品にはなかった画期的な発想が『マジンガーZ』にはあります。それが、「操縦者が乗り込んでロボットとひとつになって戦う」という点。この部分が目新しい部分だと言われています。

 当時は怪獣ブームから変身ブームへとTVの注目作品が変わっていきますが、男の子には依然として実写ヒーローが興味の中心にいました。しかし、これらのヒーローは誰もがなれるものではなく、ヒーローになれる「特別な人」が変身するというものです。ところが、マジンガーZは操縦席であるホバーパイルダーに乗り込めば自分にも操縦できるかもしれない。……そう思わせるロマンがありました。

 また、もともと男の子は特別なメカが好きなもの。実際ヒーローもののほとんどに、主要キャラたちが乗り込む特殊メカがありました。男の子の好きなものを組み合わせて、より新しいものを作った『マジンガーZ』の化学変化が、当時の筆者を含む子供たちにはたまらなく魅力的に映ったわけです。

 主役であるマジンガーZを魅力的に引き立てたのが、敵役である「機械獣」でした。毎週、まったく違うデザインの機械獣の登場に、興奮しなかった男の子はいなかったと思います。実写作品との大きな違いは、人が入るということを想定しないでいい自由度の高いデザインにつきるでしょう。そして、1話で2体、3体と複数の敵が現れることが多いのも魅力でした。

 現在では作画の手間という問題もあって量産型の敵役が当たり前となりましたが、やはり毎回違った敵が現れて戦うという、一期一会のバトルは男の子にはたまらなかったと思います。

 ちなみに20年以上前のこと、『スーパーロボット大戦』シリーズでしか『マジンガーZ』を知らない世代の人が本作を見て、「ガラダK7やダブラスM2は一度しか出ないのですか?」と驚いていました。どうやらオープニングにも出ているので何度も登場する量産型だと思ったそうです。確かに現在の常識では考えづらいことかもしれませんね。



ボスロボットがジャケットに大きく描かれる、マジンガーZ VOL.5 DVD(東映ビデオ)

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「超合金」も、玩具会社のアニメ進出も『マジンガーZ』から

 その高い人気ゆえ『マジンガーZ』が影響を与えて、後続作品では常識となったことは少なくありません。筆者がもっとも注目したのが、目に瞳のないマシン然とした顔でした。瞳があると人間のような表情が出てしまいます。それを省いてマシンに徹したのがマジンガーZの魅力ではないでしょうか?

 この部分がそれ以前のアトムや鉄人28号などと一線を画す部分で、以降の巨大ロボットアニメのほとんどに影響を与えた部分です。これが常識化したことで、逆にエルガイムMK-IIや真ゲッターロボのように、瞳があるロボットが魅力的に見えるようになったのでしょう。

 他にも、ロボットにいくつもの武器を内蔵させる、空を飛べないという弱点を克服させるために開発した「ジェットスクランダー」など作品中盤でのパワーアップ、コメディリリーフであるボスボロットの登場など、後のロボットアニメに影響を与えた部分はいくつもありました。

 特にボスボロットを代表とするマスコットロボットの存在は大きなものです。70年代のロボットアニメでは不可欠な存在で、時にはやられ役、そしてギャグ担当といった箸休めとして重宝されました。『機動戦士ガンダム』のハロもこの系列だと考えると、現在でも引き継がれた伝統的な立ち位置ではないでしょうか?

 こういったマジンガーZの偉業を語る時に忘れてはいけないのが、オモチャの存在です。強固なボディをモチーフにした「超合金」と、巨大な存在であることをイメージさせる「ジャンボマシンダー」、このふたつのオモチャのヒットはロボットアニメのその後だけでなく、日本のTVアニメのその後、オモチャ会社のその後にとてつもない影響を与えました。

 それまでのTVアニメのスポンサーはお菓子会社が中心で、現在のようにオモチャ会社の影響力はあまり強くありません。むしろ巨大ロボは売れないと敬遠されていたそうです。そのため、『マジンガーZ』の高視聴率がわかってから、スポンサーだったポピー(現在のバンダイ)は、ようやくマジンガーZの商品を販売しました。それが超合金であり、ジャンボマシンダーです。

 これらの商品はそれまでになかったコンセプトの商品で、作品の人気と合わせて大ヒットとなりました。そしてポピーの主力商品となっていきます。この大ヒットから各オモチャ会社がアニメのスポンサーに名乗り出るようになりました。

 当時のスタッフからの証言によると、この時期は実写ヒーロー番組に押されてTVアニメが死滅するんじゃないか? とまで危惧されるほどスポンサー不足だったそうです。その危機を回避したのが『マジンガーZ』の大ヒットでした。

 当時のポピーは『仮面ライダー』の変身ベルトで注目を集めていたバンダイの子会社でしたが、この『マジンガーZ』の大ヒットでさらなる躍進を遂げ、後に合併されるまでオモチャ会社の先頭を走る活躍を見せます。

 もしも『マジンガーZ』がなかったら、現在のようにアニメ業界、玩具業界が日本の誇る産業となっていたかわかりません。そう考えると『マジンガーZ』の果たした功績が、日本にとってどれだけ大きなものだったかわかります。

 もちろん、「テレビマガジン」といった児童雑誌の躍進、水木一郎さんによる主題歌、オマージュされた作品など、『マジンガーZ』が残した功績はほかにも数多くあるでしょう。まだ見たことがない若い人たちにも一度は見ていただきたい、1970年代の名作だと筆者は思います。