『ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース』ビジュアル (C)荒木飛呂彦&LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社・ジョジョの奇妙な冒険THE ANIMATION PROJECT

【画像】小物は相手にならない? 『ジョジョ』の最強女子キャラたち(7枚)

本来「無敵」のはずが……小物ゆえに敗北

『ジョジョの奇妙な冒険』(著:荒木飛呂彦)で、第3部より導入された「スタンド」は、その能力を生かすも殺すも、それを操る本体次第です。場合によっては「なんで、こいつにこんな最強チート能力が?」と、思わず小首を傾げてしまいそうになるキャラも登場しました。そんな本体と能力の「強さ」が見合っていなかった、小物な敵たちを振り返ります。

 まず第3部に登場した「イエローテンパランス」です。不定形のゲル状のスタンドであり、接触した生物を捕食しエネルギーに変えたり、柔軟に形状を変えることで物理攻撃をほぼ無効化したり、また身にまとうことで変装したりと、こと戦闘においてその使い勝手の良さは群を抜いています。ファンの間でも、いまだ「最強説」が存在するほどの強さを誇っていました。

 ただ、いかんせん「本体」のラバーソールが、能力に対して小物でした。花京院典明に変装して、チェリーを「レロレロレロ」と舌で弄ぶシーンが有名ですが、変装中にも関わらずやたらと挑発的。彼の自信過剰ぶりがうかがえます。その後、彼は空条承太郎を追い詰めはするものの、頭脳でも精神力でも及ばず、ボコボコにされてしまいました。なお、単に報酬目当てで行動しており、自分が不利になると迷わず仲間の情報を売って逃れようとするという点も、小物感たっぷりです。

 同じく第3部では、車と一体化した物質型スタンド「ホウィール・オブ・フォーチュン」も、使い方次第では最強の敵になり得た能力でした。序盤こそ「敵なのか一般人なのかわからない」ギリギリの線を攻めることで、承太郎たちを追い詰めることに成功しましたが、なぜか自分から「敵スタンド」であることを暴露していきます。

 ただ、このスタンド能力は車を自在に操ることができるので、確かに厄介でした。戦車並みの馬力を発揮した上に、地面を掘り進むことも可能で、さらに車体を鋭利に変形させて突進してきたり、ガソリン弾を発射したりと「なんでもあり」。

 ただ、やはり「小物」ぶりが災いしてか、途中で勝ちを確信し「勝ったッ!第3部完!」」と有名なセリフを吐いて油断したところで、承太郎から「オラオラ」ラッシュを喰らいました。なお、本体の名前はズィー・ズィーと言います。覚えてあげてくださいね。

 第4部は、地方都市・杜王町が舞台となり、市井の魅力的な「小物」がしょっちゅう登場します。なかでも、チート能力を持った「小物」でいうと、小林玉美が代表的です。

 彼のスタンド能力「ザ・ロック」は、相手の「罪悪感」に錠前をかけることで、重圧で身動きできなくさせるというもの。一見すると地味に思えますが、この「錠前」を破壊することはパワー系スタンドでも不可能であり、解放するには「罪悪感」を取り除くか、玉美自身に取り除かせるかしかないという、非常に厄介な能力でした。

 この「ザ・ロック」を利用して、玉美は広瀬康一とその家族から、金を巻き上げようとします。康一の悪事を捏造し、姉と母に罪悪感を与える作戦だったのですが、最終的に「家族の信頼」が広瀬家に勝利をもたらしました。玉美は、自分にはない真っすぐな精神を見せつけられ、惨めに敗北。もっと大それた悪事にも使えそうな能力ですが、ただ「ゆすり行為」に使うのですから、彼の「小物」感はより際立ちました。

 最後に第8部に登場した、岩人間・大年寺山愛唱を紹介しましょう。彼の「ドゥービー・ワゥ!」は竜巻のスタンドであり、相手の「呼吸」に反応して自動追尾し、攻撃してくる末恐ろしい能力でした。さらに、射程距離は無限。つまり、本体である愛唱を倒さない限り、その攻撃から逃げられないという、チートにもほどがあるスタンドだったのです。

 こんな恐ろしいスタンドの本体は、どれだけの極悪人なのか? と思いきや、愛唱本人は比較的普通の青年で、落ち着くために「救心」を飲むような人物でした。おまけに、広瀬康穂たちとのスタンドバトル中にも関わらず、かつての恋人からうけたひどい仕打ちを思い出して取り乱すという、気の毒な場面も。最終的には、東方つるぎのスタンド「ペーパー・ムーン・キング」によって、バスと東方常敏の見分けがつかなくなり、「バスに轢かれて死亡」というあっけない最期を迎えます。

 彼らのような小物キャラは一見すると「スタンドの持ち腐れ」のように思えますが、その点も含めて「精神の具現化」と言えるのかもしれません。敵のみっともない人間臭さも、『ジョジョ』の魅力です。