破壊美学を貫き、組織にさえ逆らうハカイダー

 シリーズがクライマックスを迎えた第37話から、ハカイダーは登場しました。キカイダーを破壊することを目的に誕生したという、「ナチュラル・ボーン・キラー」なロボットです。ヤクザ映画で知られる、東映ならではの不良キャラだと言えるでしょう。

 全身黒ずくめのコワモテなビジュアルなのに、頭には光明寺博士の脳みそを丸ごと載っけて、ウイークポイントをさらけ出しています。強さと弱さの両面を抱えたハカイダーのアンバランスさも、忘れられません。

 打倒キカイダーを生きがいにしていたハカイダーは、他のダークロボットたちがキカイダーに手を出そうとするのを嫌いました。自分の破壊美学を貫くため、ギルにさえ逆らうようになります。わずか8話だけの登場でしたが、主人公のキカイダーを上回る人気キャラになったハカイダーでした。

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視聴者を唖然とさせた、ハカイダーの最期

 キカイダーとハカイダーとの対決は、どんな結末を迎えるのか? 視聴者は最終回をワクワクして待っていたのですが、なんとハカイダーは最終回直前の第42話で憤死を遂げるのでした。最後のダークロボットとして登場した白骨ムササビに、あっさりとハカイダーは倒されてしまいます。

「どうせやられるなら、お前にやられたかったぜ、キカイダー」が、ハカイダーの最後の言葉でした。

 ハカイダーのあっけない犬死にも、東映ならではのものかもしれません。宿命のライバルたちの決着戦が見たかった。そんな特撮ファンの想いは、1987年~88年に放映された『仮面ライダーBLACK』(TBS系)のブラックライダーとシャドームーン との対決に受け継がれることになります。

 ハカイダーの無念さを成仏させてやろうと、ハカイダーを主人公にした雨宮慶太監督の劇場映画『人造人間ハカイダー』(1995年)、キカイダーとハカイダーとの決着戦を描いた『キカイダーREBOOT』(2014年)も制作されています。クリエイターたちからも、ハカイダーは愛されたキャラでした。

 自身の不完全さにキカイダーは悩み、ハカイダーは何のために生まれてきたのかが分からなくなり、悶え苦しみます。『人造人間キカイダー』は、人間以上に人間くさいロボットたちの物語だったと言えるのではないでしょうか。